偶然はあるか1
頭の中のメモ通りの予定を全てこなして、夕焼けの時間に僕はミカエラ・ボッシュの部屋の前にいた。
倉庫の上の仮設の事務所が原型だろう。
下の倉庫は、ほとんど使われた形跡が残っていない。
どう考えても賃貸の契約とか無視して住んでると踏んだ。
良く考えれば、借りたくても借主を見つけるほうが難しいのかもしれない。
ジンの指摘通り、魔法使いの専門課程の最初に習う、極簡単な砂の結界がしてある。
しかも風で飛ばされて、結界の役目を果たしていない。
ジンに促されて入口の反対側のほうに行くと、男性用のシャークソールみたいなつま先の足跡がついていた。
誰かがきて、ここに立ち、窓から部屋を伺っていたんだろう。
頭をかきむしたくなりそうなのを、我慢してノックした。
「あ、やっぱりみつかっちゃった。」
簡単にドアを開けるなと言いたかったけど、それもグッと我慢した。
「こんばんは、お邪魔してよろしいでしょうか。」
「土足おっけーどぞどぞぉ」
きっと僕の常識はミカエラ・ボッシュのとは違うんだ。
人生には、さっさと諦めたほうがいい事があるよね。
部屋はワンルームで外の朽ちた感じからすると綺麗にしてあった。
しかも空間を広げる魔法が明らかに使ってある。
部屋を離れても継続していられるって、どんだけ使ってるんだ。
「あ、ソファーにどぞ、これはクラブのママがお店のを買い替える時にくれたものなの。」
聞いてもいないのに説明してくれた。
この調子でグラスから部屋の調度品に至るまで説明が続くと永遠に終わらなさそうなので、
「まずは、これを受け取ってくれるかな。」
西のゲートのシャウマンをギューギュー言わせて返させた350万シルトを封筒から少し出して手渡した。
「日本円じゃないのは理由がある。」
「ありがとうございます。」
胸ポケットから、リングを出して
「それから、これは杖の代りのリングだ。見た事ないでしょ?」
指にあたる内側は水牛の角で作られていて外側は合金でできている。
「大きく見えるけど、はめて回すと締まる。」
気づかないうちにシルフィアが肩に乗っていた。
たまに使い魔達はどこかに行ってしまうんだけど、何かあれば来てくれる。
女の子の部屋には大抵あるキャンドルをテーブルに持ってくると
「指輪についてる石の周りにメモリが刻んであるでしょ。それを最小のほうに回して。」
ここまで上手くいっている。
「このキャンドルに火をつけてくれ。」
新章に入りました。
始まり全部でアニメなら30分で詰め込めると思って書いているのですが、文章だと長くなってしまいますね。
まだまだ続きます。
よろしくお願いします。