始まり6
注意:犯罪現場の描写があります。
現場の近くで自転車を止めて鍵をかけてると、制服の巡査に確実に怒られる。
毎回の事なので、腹も立たなくなっちゃった。
ポケットを探ると逆に大騒ぎするので、上着のボタンを外してすぐバッチを見せられるようにしてる。
「おはようございます」と「お疲れ様です」を交互に言いながら、鑑識の人に手袋と靴にかぶせる袋と髪の毛にもビニール袋をつけて部屋に近づく。
篠崎本部長補佐がいた。
人より頭一つ大きいので、すぐ見つかる。
おいでおいでされる。甥っ子扱いに近いと思う。
挨拶をすませると、
「悪かったな、こんな時間に呼び出して、ん?」
「いや、かまいません。被害者はこらちの女性ですかね?」
亡くなった方に手を合わせていると、
「また、寝てないだろう?大丈夫なのか?」
小声で聞かれた。
なんでバレるんだろう。
昨日と服が同じだからか、そんなにニオウのか。
さっさと仕事をして、帰って寝たいのが本音だけどね。
深呼吸して絵の構図を決めるみたいに両手で四角をつくると、少しずつ時間を遡り始める画像が見える。
当然、自分しか見えない。
周りにいた刑事さんや鑑識の人が物珍しそうに見てくる。
「これが例の霊能者か?」
スピリチュアリストとかサイキックとか言い方いろいろあるけど、そういう人という事になっている。
2時間くらい前に、亡くなってる女性が、部屋に逃げ込んできた。
追ってきたのは、ヘルメットした男だ、残念ながら顔までは見えない。
「死亡時刻は午前2時30分ですかね、30cmくらいの包丁で背中から一カ所、倒れこむ所に上から首に二カ所目。」
話はじめると、全員の耳がこちらに向くのがヒシヒシとわかる。
すごく緊張する。
「おそらく体格から男性。身長が175センチやや細身、バイク用のヘルメット着用、黒っぽいジャンパー、ジーンズに土足のままです。」
ヒューと口笛が聞こえた。
篠崎本部長補佐がニヤニヤしながら頷く。
みんなに使える奴だろうと言いたげだ。
「実はな、目撃者がいるんだ。ほぼ一致してるな。」
無精ひげをガリガリこすりながら、近づいてくる。
こういう仕草は、もう少し情報が欲しい時だ。
「このヘルメット、珍しい色柄ですね、特注かな。」
ほぅと嬉しそうな顔をしている。
ついでに凶器の包丁のゆくえも探して差し上げるとするか。
当然、魔力の使われた痕跡など、カケラも無い。
再投稿が完了しました。
R18からR15へお引っ越しです。
まだまだ続きますので、最後までどうかお付き合いください。
広げた風呂敷がコツッとまとまればいいのですが。