3 訓練という名の遊び
いわゆる一つの体育会系。
今、俺が居座っている国の名前は、ええと、まぁいいか。
とにかく陥落した国で転送陣を張っている間は、防衛のためにも待機している必要があるらしい。
翌日には突撃したかったのだが、あの三つ目の指揮官が物理的に雷を落としてくるので仕方がない。
暇だ。
「よし、訓練をしよう」
俺は伝令を呼び、外に部隊を集めるよう指示をした。
「これから君たちには、演習訓練をしてもらいます」
100名を集めた後、半分に分けてからどつき合いを開始させた。
獲物は棍棒。
普段使っている武器だ。
オーガの力で頭を殴れば同族でも死ぬ。
なのにこいつらと来れば、殺される前に殺すというか、案の定ノーガード戦法で殴り合いを始めやがった。
「全員、止まれ」
一応一声かける。
やっぱり止まらないので、全員殴り倒した。
全員起きた後、俺は違う指示を出す。
「全員、かかってこい。殺す気で来ないと、だるまだからな」
俺の言葉を聞いて部下たちが若干引いた気がした。
気のせいだろう。
オーガに臆病なやつらはいない。
ちなみにだるまとは、両肩と腰を砕いてから、サンドバッグの様に適度に蹴ったり投げたりを半日続ける『お仕置き』だ。
まる2日もあれば歩ける程度には治るから、多少無茶をしても問題ない。
ホント、馬鹿げた身体能力だよな。
ヤクザ顔負けのごつい顔に二本の角、力士が脂肪全て筋肉になったようなごつい体格。
身長は3m近く。
まともに喧嘩できる相手がいないくらい、生まれながらに強い連中だ。
遊び甲斐がある。
「いいか。これが訓練における手加減だ。仮にも仲間なんだ。殺しちゃだめだろう」
4度目の訓練が終わった。
全員ちゃんと生きている。
目が死んでいる気がするけど気のせいだ。
寝て起きればすぐ直るさ。
「よし。腹減った。飯にするぞ」
全員起き上がった。
飢えた虎みたいに涎を垂らしている。
「お? 元気だな。じゃ、もっかい行くぞ」
俺は嬉々として部下たちの訓練を再開した。
「よく食べますよね」
「昼飯だからな」
食堂には食用の魔獣の丸焼きが大量に置いてある。
オーガはよく食べるから、これくらい無いと腹が減って暴れてしまう。
今までの村では村の備蓄を片っ端から食い荒らして何とかしていたが、足りない分は村人を食って済ませていた。
俺の場合は多少は我慢ができるからそれなりに食べていた。
「貴方の部下たちは?」
「訓練疲れで寝ている。直に目を覚ますだろうから飯だけ先に用意してもらっている」
転送陣があれば本土から大量の食糧が輸送される。
そのためにも早く転送陣を設置してほしいのだが、どうやら無茶な行軍のため予定より大幅に遅れるらしい。
人界で取れる獣は魔界では魔獣に変化する。
魔獣は巨大で凶暴で肉も旨い、ことがある。
オーガには獣では熊だろうと牛だろうと物足りない。
オーガ一人で熊一頭では、森のくまさんが絶滅するわけだ。
魔獣の猪や牛は大きいものだとだと全高9mという、もはや建造物かロボットの領域に到達している。
転送陣が設置されたら全員で魔界に帰って、また狩りでもするか。
思い出したら腹が減ってきた。
「飯は食ったな? よし、午後の訓練だ」
こうして俺は部下たち相手に、転送陣が設置されるまでの間中ずっと。
訓練と称して暇つぶしをして過ごした。
部下たちも喜んでいたようで、訓練以外の時間はおとなしくなっていた。
うん、明日はもっと訓練をしよう。