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小さな僕は魔導機使い!?  作者: 猫丸
新たな旅立ち
66/120

66話





「らんらんらん♪」



「がぅ!」



「ご主人様、楽しそうですね♪」



森の中、ユーマが楽しそうにしているとファリーがユーマのまわりを回って訪ねた。



「うん♪いつもみんなと一緒に居られるから楽しいよ!」



『所で主様?』



「ん~?どうしたの、スピアウィップ?」



スピアウィップはユーマにちょっとしたおとぎ話を語り始めた。



『こんなおとぎ話をご存知ですか?魔導機に魅いられし者、天より魔導騎兵を授かる…というお話しですわ』



「ほぇ~。初めて聞いたよ~」



『天空の何処かには神殿があって、そこで魔導騎兵が守護しているらしいですわ。主様なら魔導騎兵を授けられるかも知れませんわね』



スピアウィップが暢気に言っていると…



「どうやって貰えるのかな!?」



ユーマがその気になった。



『申し訳ありませんわ、わたくしにもわかりませんわ』



「そっか~…」



「意外と呼んだらくるのでわ?」



ファリーが冗談半分に言うと…



「お~!試す~!」



ユーマが試す気になった。



「魔導騎兵~!」



ユーマは空に向かって叫んだ。



キラン



ズドン‼



「わゎ!?」



すると空から何か巨大な物がユーマの前に降ってきた。



『これは…』



「おっきい~!」



人型の巨大な物が立っていた。



「本当に降ってきました…」



二人と一機が驚いていた。



『これは…魔導騎兵!?おとぎ話の存在では…』



『スピアウィップよ。我々のような物が存在するのだ。おとぎ話が実在しても可笑しくはないだろ?』



『……』



スピアウィップもマジカルガンナーの言葉に納得してしまった。



「ファリー凄い‼言う通りにしたら本当にきた!」



「アハハ…来ちゃいましたね…」



今更冗談半分でしたとは言えないファリーだった。



「どうやって動かすのかな~」



ユーマが魔導騎兵の足を叩いていると魔導騎兵は膝まずいた。



『どうやら意志があるようですわね』



「お~?」



魔導騎兵はユーマに向かって手を伸ばすと乗れと促した。



「シャウ、待ってて」



「がぅ!」



ユーマが魔導騎兵の手の平に乗ると、魔導騎兵は手を動かし胸の位置まで手を動かした。



「おぉ!」



カシュっと音がすると胸が開き中に入れるようになっていた。



「中に入ればいいの~?」



コクッと魔導騎兵は頷いた。



「おぉ!椅子がある~。でも…おっきい」



ユーマが呟くと椅子がググっと縮みユーマが座りやすいサイズになった。



「おぉ!ありがとう!」



ユーマは魔導騎兵にお礼を言うと椅子に座った。



「それでどうすればいいの?」



ピカッと椅子に付いた水晶玉が二つ光った。



「これに触ればいいんだね」



ユーマは椅子に左右に付いた水晶に両手で触れた。



「おぉ!?外が見える!?」



ユーマが水晶に触れると胸が閉まり、コクピットの中は辺りの景色が映し出されていた。



「どうやって動かすのかな?」



『主様、多分ですが水晶に触れて主様が動いて欲しいと念じれば動くと思いますわ』



「わかった~。試してみる~、動いて~」



ユーマはスピアウィップに言われた通りにすると魔導騎兵は立ち上がった。



「動いた~!」



『主様、これからどうしますの?』



「う~ん、お姉ちゃんに相談する!魔導騎兵?降ろして~」



ユーマが魔導騎兵に頼むとコクピットが開きユーマを手に乗せてしゃがみ降ろした。



「みんな~、一度村に戻るよ~」



「がぅ!」



『チュウ!』



「はいです!」



ユーマがシャウに乗るとファリーもユーマの肩に座り、ネズミ達も後を追いかけてきたが…



ガシャン、ガシャン



魔導騎兵も追いかけてきた。













「あ!お姉ちゃんだ~。お姉ちゃ~ん!」



ユーマ達が森を抜けて村に戻るとセレーナ達が戦闘態勢で待っていた。



「ユーマ!?無事だったの!?」



「どうしたの?みんな慌ててるけど?」



「慌てるに決まってますわ!あんな巨大な物が降ってきたんですから!」



エリシアの言葉にユーマは…



「あ…」



今頃納得していた。



「まさか…ユーマ?また何かしたんじゃ…」



ブンブンとユーマは首を振って答えた。



「今回は不慮の事故です…」



「ファリー?」



『わたくしがご説明しますわ』



スピアウィップは事の顛末を語り始めた。



「なるほどね…おとぎ話を信じて呼んでみたら来ちゃったと」



「凄いでしょ!」



「そうですわね♪」



エリシアが褒めてしまうと…



「褒めてないからね?」



セレーナが釘を刺した。



「それで?どうすんだ、これ?」



「目立ちますよね?」



「う~ん、どっかに隠れてくれるとありがたいんだけど」



魔導騎兵は無反応だった。



『やはり、主様の言うことしか聞かないようですわね』



「お~?魔導騎兵、しゃがんでてくれる~?」



ユーマが頼むと魔導騎兵は膝をついてしゃがんだ。



「ありがとう~、しばらくじっとしててくれる~?」



魔導騎兵はコクッと頷いて了承した。



「厄介事にならなければいいけど…」



セレーナのこの呟きは後日、現実のものになった。









「う~ん、今日も平和だね~」



『そうですね~。マスターがご機嫌なので私達魔導機も幸せですよ♪』



「そっか~」



ユーマ達がブレイドカノン達と楽しそうに話していると…



「あれ?なんだろう?」



ユーマの視線を追うと砂塵が近づいて来ていた。



『どうやら騎士団か何かのようですぜ』



『こっちに向かって来てますね』



「お姉ちゃんに知らせよ~」



セレーナの所にユーマ達は向かった。







「騎士団が向かって来てる?」



『多分ですがそうだと思いやす、姐さん』



「目的は…やはり」



セリーが魔導騎兵を見上げるとセレーナ達も見上げた。



「どうする?誤魔化すか?」



「どうやってよ?こんな大きな物を誤魔化せると思う?」



「だよな~…」



アキナの提案にのりたい所だが、無理な話だった。



「仕方ない…か」



セレーナは覚悟を決めると村の入口に向かった。







「…来たわね」



セレーナ達が村の入口で待つこと暫し、騎士団らしき団体がやって来た。



「全体、止まれ!」



リーダーらしき人物が声をかけると団体は止まった。



「私達はアスガルド王国の騎士団だ。私は団長のコラールだ」



「私達は冒険者です。一応まとめ役のセレーナです」



お互い挨拶を交わすとコラールが本題に入ってきた。



「先日この先の森に何かが落ちたと近隣の村や町から報告がきていてな、この村に巨人がいると報告もきている」



「…確証があってこられたのですよね?」



「一応確認の為だ」



セレーナは第一印象は真面目な人と判断した。



「とりあえず巨人の所に案内してもらえるかな?」



「…わかりました」



セレーナは魔導騎兵の所というより、既に見えている魔導騎兵の足下に向かった。







「あ!お姉ちゃん♪」



魔導騎兵の足下にいたユーマはセレーナがやって来ると近づいて足に抱きついた。



「これが噂の巨人か」



「このおじちゃん誰~?」



「おじちゃん!?まだ二十なんだけどな…」



突然ユーマにおじちゃん呼ばわりされたコラールはちょっとへこんだ。



「ユーマ、ちょっとこの人たちに魔導騎兵を見せてくれる?」



「いいよ~」



「…この巨人はあの子の物かね?」



不思議そうにコラールが訊ねた。



「はい。もし勝手に持っていこうとしたりすると暴れますよ?…魔導騎兵が」



「私達は盗賊ではないよ」



騎士団は魔導騎兵を色々な所から見て危険などないか確認していた。



「さて、安全が確認出来たので本題に入っていいかな?」



「…何でしょう?」



セレーナは自分の予感が当たったと確信した。



「この巨人をアスガルド王国に渡して貰いたい。ちゃんと見返りも用意する」



「持っていこうとしないのではなかったのでわ?」



「それは【勝手に】はだよ」



なんとも喰えない男だった。



「だめ~‼魔導騎兵は僕のお友達だもん!」



「子供が話に割り込むな!下がっていろ!」



「よさないか副長」



コラールとは別の男性がユーマの前に立ちはだかった。



「これはアスガルド王国に必要な物だ。お前のような子供に必要ない」



「関係ないもん!僕のお友達だもん!」



「うるさい!失せろ!」



バシン!と音がすると副長はユーマの頬を叩き、ユーマは倒れこんだ。



「てめぇ!」



倒れたユーマを抱き抱えたアキナが怒ると魔導騎兵に異変が起きた。



「な!?なんだ!?ギャー!」



魔導騎兵はユーマが殴られたのを見て副長を握り捕まえると締めた。



「いけない!ユーマ!魔導騎兵を止めて!」



「…魔導騎兵!やめてあげて!」



魔導騎兵はユーマの声で握り締めるのをやめた。



「だ、団長!これは危険な物です!取り上げてください!」



「よさないか!今のは自業自得だろ!お前が子供を殴ったのがいけないのだろ!」



「うっ…」



副長は言い返せずにいた。



「すまない。大丈夫かね?」



「ふん!」



先ほどの副長のせいでユーマは騎士団に不信感をもってしまった。



「残念ですがその子はヘソを曲げると中々梃子でも動かないですよ」



「ユーマ君、頬を冷やしましょうか」



「うん」



エリシアに手を引かれてユーマは井戸に向かった。



「とりあえず私達に協力出来る事はないので、失礼します」



セレーナもユーマ達の後を追いかけていった。







「気持ちいい~」



ユーマは頬にあてがわれたタオルで頬を冷やしており、気持ち良さそうにしていた。



「ユーマ、大丈夫?」



「だいじょうぶ~」



「ちょっと腫れてるね」



セレーナはユーマの頬を見て囁いた。



「偉かったね。よく魔導騎兵を止めてくれたね」



「う、うん♪」



セレーナに誉められたユーマは嬉しそうにしていた。



「これからどうしますか?」



セリーは村の入口の方を見てからセレーナに訊ねた。



「これで帰ってくれるほど諦めの悪い人じゃなさそうだしね…」



セレーナが呟くとコラールが副長と共にやって来た。



「そちらの子は大丈夫かい?」



「ぷん!」



ユーマは副長を見るとふてくされた。



「いやはや、大分嫌われてしまったらしいね…」



「それで?まだ何か?」



わかっているものの、セレーナはもう一度訊ねた。



「何とかあの巨人を譲って貰えないだろうか?」



「生憎、私達でも動かせないので…唯一動かせるのはこの子ですし…」



全員の視線がユーマに集まった。



「やだもん!」



「なら、せめてアスガルドの城まで来てもらえないか?



「すいません、私達はこの村を離れる事が出来ません」



セリーがやんわりと断った。



「なぜ?と聞いてもいいかな?」



「もうすでに気づいておられると思いますがこの村は廃村でそして姨捨村です。私達がここを離れてしまってはお婆さん達が死んでしまいます」



「…ふむ、確かにその通りだな」



団長が悩んでいると…



「団長、この子供だけ連れて行けば済む話では?」



「副長?我々は賊ではないのだよ?」



「しかし…」



副長の意見は却下された。



「どうしたら来てもらえるかな?」



「お婆さん達を見殺しにしろと?」



「手痛い返しだな」



しかし任務の為に団長は諦めきれなかった。



「なら、こういうのはどうだい?騎士団の何人かを残す。代わりに君達に来てもらうというのはどうだろうか?」




「そこまでして連れて行きたいのですか?」



「それはそうだよ。これほどの物を他国に奪われてはたまらないからね」



セリーの言葉に団長はキッパリと言った。



「相談させてもらえますか?」



「色好い返事を期待してるよ」



セレーナ達から団長と副長は離れていった。




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