65話
「はい、沢山食べてくださいね」
「わゎ!?順番だよ~‼」
セレーナ達はお年寄りにごはんを配り、ユーマはネズミ達に食事を出すが我先にとネズミ達は詰め寄った。
『こら!おめえ達!ちゃんと順番に並びやがれ!』
ビシッ!
『チュウ!』
チュウ太の掛け声にネズミ達は綺麗に並んだ…無駄に綺麗に。
「ちゃんとみんなの分があるからね~」
『チュウ~♪』
ネズミ達は喜びを露にして鳴いた。
「すぅ…」
そして炊き出しが終わり夜も深まるとユーマは寝てしまい、セレーナ達が集まって話し始めた。
「どうすんだセレーナ?帰る気配がないけど」
セレーナ達は村の端の方に止まってる馬車を見ていた。
『姐さん、一応ネズミ達に警戒はさせておきやした』
「ありがとう。所でチュウ太?私の呼び方が変わったけど何かあるの?」
『いえ、クリエイトハンマーと呼び方がかぶるのでアッシが変える事にしやした』
「そう。まぁいいわ」
セレーナは納得して馬車に背を向けた。
「やはりまだ怒ってるのですか?」
「流石にね、ユーマを叩いたのは偶然でしょうけど本を取り上げようとしたのまでは許す訳にはいかないわ」
セリーの問いにセレーナははっきり答えた。
「ですが立ち去りそうにありませんわ」
「ほっときましょう。その内諦めるでしょう」
しかしセレーナの予想に反してイオナ達は居残り、四日ほどたった。
「まだ居ますね」
「…仕方ないか」
「セレーナさん?」
セレーナが諦めて馬車に向かっていくのでセリー達は後に続いた。
「……」
セレーナ達が近づいて来たのがわかったイオナは立って待っていた。
「いい加減諦めませんか?」
「無礼をはたらいたのは謝ります。ですが娘の為にどうしても引くことは出来ないのです」
「今のユーマを説得するのは私達でも無理です」
今回の一件でユーマはロリックに対してかなりの不信感を持ってしまった。
「それでも!それでも…娘を助けたいのです…」
「……」
「お願い…します」
イオナは涙を流し頭を下げて懇願した。
「…わかりました。もう一度だけユーマに頼みましょう」
「本当ですか!」
「ですがイオナさんだけ来てください。ロリックさんは信用出来ませんから」
「わかりました。お願いします」
イオナはロリックを置いてセレーナ達とともにユーマのもとに向かった。その頃ユーマは…
「釣れないね」
『そうっすね』
『チュウ』
チュウ太とネズミ達と一緒に釣りをしていた。
「ユーマ~」
「あ、お姉ちゃん」
ユーマは声をかけられた方に視線を向けた。幸いにも今の所イオナに拒否反応は示していなかった。
「ユーマ、お願い。もう一度お婆ちゃんの本を出してほしいの」
「む~…」
「旦那が失礼しました。ですがこの通り、お願いします‼」
イオナはユーマに対して頭を下げた。
「む~」
パラパラ
ユーマは本をめくると読み始めた。
「アルキ病。皮膚を固くしてしまう奇病の一つ。解毒薬の作り方は、カルの実、ラジドルの葉、タキの葉をゆっくり煎じて飲ませる」
「ありがとうございます!」
イオナはユーマの読み上げた事をメモして記録した。
「ありがとう、ユーマ」
「うん♪」
セレーナに頭を撫でてもらったユーマは嬉しそうにした。
チュンチュン
「本当にありがとうございました」
「バイバーイ!」
次の日の朝、イオナ達は朝一で娘の治療薬の元を探すため出立しようとしていた。
「…本当にすまなかった」
あれからロリックも反省してセレーナ達に何度も頭を下げ、旅立った。
「釣れないね~」
『そうっすね~』
『チュウ~』
あれから数日後、ユーマ達は元の生活に戻っており、ユーマはチュウ太とネズミ達と一緒に近くの川で釣りをしていた。
「晩ごはん釣れないね」
『大丈夫っすよ!釣れやすって!』
『チュウ!』
チュウ太とネズミ達が励ましていると…
ピク!グググ!
「きた!」
竿がしなった。
「お、重い~‼」
『旦那!』
『チュウ~‼』
チュウ太とネズミ達はユーマの足につかまり踏ん張った。
「みんな~‼いくよ~‼」
『ガッテン!』
『チュウ~‼』
ユーマはおもいっきり竿を上げて魚をザバァっと釣り上げた。
「お~♪大きい!」
『確かに…デカイっすね』
ユーマが釣り上げた魚は自分より大きかった。
『チュウ‼』
ネズミ達は魚を持ち上げると…
「お姉ちゃんに見せよう!」
ユーマと一緒に村に戻った。
「お姉ちゃ~ん‼」
「どうし…何それ?」
「わぁ~♪大きな魚ですね~♪」
セレーナとセリーはネズミ達が持ってきた魚に驚いていた。
「お~♪みんなにも見せる~!」
ユーマはネズミ達と一緒に村の人達に魚を見せてまわり夜に美味しく頂いた。
『チュウ!』
『チュチュウ』
「お~!みんな上手~!」
晩ごはんも終わりユーマはネズミ達とじゃれていると、ネズミ達は玉乗りや輪くぐりなど様々な芸を見せてユーマを楽しませていた。
「ジャンプ~」
『チュウ!』
ユーマがテーブルの上に手を伸ばすとネズミ達はハードルを越えるようにジャンプしていった。
「ユーマ君?何をしてますの?」
「えっとね!ネズミさん達が芸を見せてくれたの!」
「まぁ♪そうなんですの?」
嬉しそうに答えたユーマにエリシアも嬉しそうに答えた。
「そうだ!」
「どうしました?」
「ネズミさん達の芸をお姉ちゃん達にも見せよう!」
ユーマはセレーナ達にも見せる事を思いついた。
「では、行きましょうか?」
ユーマはエリシアと一緒にセレーナ達の所に向かった。
「お姉ちゃ~ん」
「ん?どうしたの?」
セレーナは自分の足に引っ付いてきたユーマの頭を撫でて訪ねた。
「えっとね!見てて!」
ユーマがネズミ達に指示をするとネズミ達は芸を見せ始めた。
「へぇ~。上手いもんだな」
「上手ですよ、ユーマ君」
セリーとアキナに誉められたユーマとネズミ達は…
「えへへ」
『チュウ~』
揃って照れていた。
「よいしょ♪よいしょ♪」
『チュウ!』
ある日、ユーマはネズミ達と一緒に木の実や野草を採りに来ていた。畑の作物がもう少しで採れるため繋ぎとして野菜の代わりに野草など集めており、日課になっていた。
「うん♪これくらいかな?」
ユーマがリュックに野草を積めていると…
『チュウ~!?』
「ブモ~!」
ネズミ達が牛のような魔物に追われて帰ってきた…採った野草を持ちながら二足歩行で。
「大変!」
ユーマは杖を構えると…
「雷よ!彼の者を貫く矢となれ!サンダーアロー!」
魔法を放ち牛のような魔物を倒した。
「大丈夫~?」
『チュ…チュウ』
ネズミ達は安心するとへたりこんだ。
「積めとくね~」
ユーマはネズミ達が置いた野草をリュックに積めていった。
『チュ!?チュウ~!』
ネズミ達はユーマにそんな事はさせられないと急いで復活した。
「休んでていいよ~?」
『チュウ!』
それは出来ないと首を振って答えた。
「じゃあ一緒にやろ~」
ユーマとネズミ達は野草をリュックに積めていった。
『チュウ?』
「ん?あ~…どうしようか?」
一匹のネズミが牛の魔物を指してどうするか訪ねた。
「どうやってもって帰ろう…」
ユーマの中では持って帰るのが前提になっていた。
『チュウ!チュウ~‼』
一匹のネズミが任せろとばかりに胸を叩き、思いっきり鳴いた。すると…
ドドドドドドドド‼
『チュウ~‼』
少しして村で待機していたネズミ達が津波のように迫ってきた。
「お~!ネズミさん達、来てくれたの!?」
『チュウ!』
やって来たネズミ達は揃って頷いた。
『チュウ、チュウチュウ!』
『チュウ~!』
一匹のネズミが何やらやって来たネズミ達と話しこんで鳴くと牛の魔物に近付いた。
『チュチュウ!チュ!チュウ~‼』
ネズミ達は一斉にかけ声をすると牛の魔物を持ち上げて村に向かい始めた。
「お~!?ネズミさん凄い!」
ユーマも後を追いかけて村に戻った。
「お姉ちゃ~ん♪ただいま~♪」
「おかえり、ユー…マ?」
セレーナは後ろから声をかけられ、振り向くとユーマとネズミ達が牛の魔物を持ち上げているシュールな光景を目にして思わず疑問系になってしまった。
「おみやげ~」
『チュウ!』
ユーマは野草を、ネズミ達は牛の魔物を自分達の前に置いた。
「へぇ、オチビ?よく運べたな」
「ネズミさん達が頑張ってくれた~」
『チュウ~♪』
誉められたネズミ達は辺りを駆けて回った。
「野草も一杯集めた~」
ユーマはリュックから野草を取り出して見せた。
「沢山採れましたね♪今日はお肉入りのスープにしましょうね」
「わーい♪」
セリーが献立を決めるとユーマが喜び…
『チュウ~♪』
ネズミ達も喜んだ。




