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小さな僕は魔導機使い!?  作者: 猫丸
新たな旅立ち
60/120

60話



「今日もぽかぽか~」



「ご主人様、楽しそうですね?」



「うん!友達が増えてきたから~」



ユーマは順調に魔導機が集まっているのを喜んでいた。



「お!そうだ!ブレイドカノン」



『はーい、どうしましたマスター?』



「ボクを乗せて飛べる?」



ブレイドカノンが近付くとユーマは思い付いた事を訪ねた。



『マスター位なら余裕ですよ!乗ります?』



「お~!しゅっぱーつ!」



「あ~!ご主人様~!待つのですよ~!」



ユーマがブレイドカノンに乗って空に上がるとファリーも後を追いかけて飛んでいった。



「たかーい!」



『楽しいですか?』



「遠くまで見える~!」



ユーマは楽しそうに辺りを見回していた。



「お!村が見える~!ブレイドカノン、お姉ちゃんに教えよう」



『はーい、降りますよ~』



ブレイドカノンはゆっくり下降してセレーナ達の所に戻った。



「お帰り。楽しかった?」



「うん♪後ね、あっちに村が見えたよ」



ユーマは進行方向に村が見えた事を教えた。



「村?おかしいわね?地図には乗ってないわね?」



「もしかしたら廃村かも知れませんよ?」



「取り合えず行って見ましょうか。休める場所としてなら都合もいいし」



立ち寄る事を決めたセレーナ達はゆっくりと向かった。



「これは…また…」



セレーナ達が村に着くとそこは廃村になっていた。



「お姉ちゃん…」



「えぇ…」



しかし廃村の筈なのに人の気配が感じているユーマにセレーナも気付いていた。



「みんな、一応気を付けて。人の気配があるわ」



「別れてみますか?」



「いえ、その必要はないわよ。見て」



セレーナが前を見ると一人の老婆が杖をついてやって来た。



「迷い人かい?」



「いえ、旅の者です」



「そうかい、好きな所で休むといい。ここは廃村だからね」



老婆がそう言うと…



「そのわりには人の気配がありますけど…」



「聞かない方が身のためじゃよ…」



「お姉ちゃ~ん!」



するといつの間にか探検に出ていたユーマが老婆の後ろから戻って来た。



「いつの間に…勝手に行っちゃ駄目でしょ?」



「ごめんなさい…」



「それでどうしたの?慌ててたみたいだけど?」



軽く叱るとセレーナはユーマが慌ててた理由を訪ねた。



「そだ!お姉ちゃん、この村変だよ?お爺ちゃんお婆ちゃんしか居ないの!」



「!ユーマ、もう一度見てきてくれる?ゆっくりでいいから」



「わかった~!シャウ~」



ユーマはシャウと一緒に探検に戻った。



「お婆さん…」



「察しの通りじゃよ。ここは姨捨村じゃ…」



お婆さんの言葉にセレーナ達は息を飲んだ。



「そんな…」



「気にせんでええ。アタシ等も覚悟の上じゃ」



「でもよ…」



エリシアとアキナが何かを言おうとするが…



「何も言わんでええよ。アタシ等は永くないんだ、慰めはいらんよ…」



「お姉ちゃ~ん!」



するとユーマが涙目で帰って来た。



「どうしたの?」



「ここのお婆ちゃん達、家族に捨てられちゃったんだって!嘘だよね!?」



「チッ!誰か余計なことを!」



老婆が舌打ちしたのを聞いたユーマは…



「どうして!?こんなの酷いよ~」



泣き出してしまった。



「よしよし。泣かないでユーマ」



セレーナはユーマを落ち着かせていた。



「お姉ちゃん、助けてあげて!?」



「それは…」



「坊や、その気持ちだけでええよ」



ユーマの問いにセレーナが困っていると老婆が優しくユーマに言い聞かせた。



「ダメだもん!ボク、行ってくる!ブレイドカノン!」



『はーい!』



「ユーマ!?待ちなさい!」



セレーナが声を掛けるよりも早くユーマは何処かに飛び去って行った。



「オチビ!」



とっさにアキナは馬に乗り直ぐに追いかけた。



「ユーマ…」



セレーナはただ見つめる事しか出来なかった。



「いた!ブレイドカノン!剣になって!」



『マスター、ブレイドモードって叫んでください』



「ブレイドモード!」



ユーマはブレイドカノンを剣にするとそのまま落下して…



「えいや~!」



ズバン!



下にいた熊の魔物を一撃で沈めた。



「オチビ!」



「よいしょ!よいしょ!」



ユーマは倒した魔物を担ごうとするが無理だった。



「オチビ!」



「運ばなきゃ…運ばなきゃ!」



「オチビ‼」



アキナが怒鳴ると初めてユーマはアキナが付いてきた事に気付いた。



「アキナさん…」



「魔法で軽くしな。アタシも手伝うからさ」



「う、うん」



ユーマは自分でも魔法を使ってない事に気付いた。



「軽量化してもこれじゃあ運べないね、オチビ?これをどうしたいんだ?」



「皆で食べるの!ごはん食べたら元気になるよ!」



「オチビ…」



ユーマなりに考えての行動だった。



「取り合えずこのままじゃ運べないから切り分けてオチビのリュックにしまうぞ」



「うん!」



アキナはナイフで熊の魔物を解体していき、ユーマはその肉をリュックにしまった。



「ネズミさん!」



『チュウ!』



「野草や果物を探してきてくれる?」



ユーマの頼みにネズミ達は四方に散った。



「オチビ、これだけあれば足りるか?」



「ううん」



「わかった。次の獲物を探せるか?」



ユーマは直ぐに探知魔法を使うと次の獲物を探した。



「…あっち!」



「いくぞ、オチビ」



「うん!」



ユーマはブレイドカノンを担いでアキナの後を追いかけて行った。



「いくぜ~!インパクト!」



ズドン‼



「えいや~!」



ガン!



少し走ると猪型の魔物が休んでおりアキナが強襲し、ユーマも後に続いた。



「ピギ…」



「でいや~!」



アキナとユーマの連撃に魔物がふらつき、アキナが頭を殴り魔物を倒した。



「オチビ、早く解体するぞ」



「うん!」



アキナが手早く解体していると…



『チュウ~!』



ネズミ達が野草や果物を抱えて戻って来た。



「ありがとう!」



ユーマはネズミ達に礼を言うと運ばれて来たものをせっせとしまった。



「よし、オチビ。長居は無用だ、他の魔物が来る前に行くよ」



「うん!バードモード!」



『はーい!』



ユーマはブレイドカノンをバードモードにすると飛び乗り、アキナも馬に乗り村に向かった。



「あ!お姉ちゃん…」



村が見えて来るとセレーナ達が村の入り口で立って待っていた。



「お姉ちゃん…」



「良かった…無事で…」



セレーナは降りてきたユーマを怒る事なく優しく抱きしめて出迎えた。



「どうしたいの?」



「ごはんを作るの!お腹一杯になれば元気になれるよ!」



「でしたら準備しましょうか」



エリシアが笑顔で近付いて来た。



「準備しましょうか?」



「お~!」



ユーマは魔導機のポーチから大きな鍋を取り出した。



「…なぁ?あれってどうやって入ってたんだ?」



「言わないで。私も不思議に思ってるんだから」



「て言うかさ、オチビのポーチには何が入ってたんだ?」



ここに来てユーマのポーチの中身が気になった。



「…多分家財道具一式、魔法の関係の物が一式じゃないかしら」



「…凄いな」



「…そうね」



魔導機の不思議さがまた一つここに増えた。



「お姉ちゃ~ん!ごはん作ってよ~!」



「はーい!仕方ない、行きましょう」



「そうだな」



セレーナとアキナも手伝いに向かった。



「皆食べて~」



ユーマは料理が出来ると村を走り回り、炊き出しを知らせた。ユーマの声かけに反応したお年寄り達は半信半疑で訪れ炊き出しがやってると分かると列になり並んだ。



「さぁ、どうぞ」



「ありがとうね~」



「まだこんな人が残ってたんじゃな…」



お年寄り達は代わる代わる礼を言い、椀のスープを食した。



「ざっと二十人弱ね」



「少ないと見たいですね…」



「でもこれからどうする?」



一度炊き出しをしてしまった以上放置はしずらくなってしまう。



「そうね…クリエイトハンマー?貴方が知ってる魔導機まで後どれくらい?」



『半日位で着くはずだぜ』



「…半日なら戻って来れるわね」



「おい、セレーナ?いいのか?」



また戻って来ると言うことはまた炊き出しすると言う事になる。



「じゃあアキナ?今のユーマを止められる?」



セレーナとアキナは、エリシアと一緒に炊き出しの手伝いを一生懸命にやっているユーマを見た。



「でもよ、魔導機探しはどうするんだ?」



「それを含めて後でユーマと話して見るわ」



「…酷じゃないか?」



アキナはユーマにここの人達を見捨てる事は出来ないと思っていた。



「避けては通れない道よ…酷だけどユーマは選ばなければいけないの…」



「オチビ…」



アキナはただ見詰めるしか出来なかった。



「ユーマ、ちょっとお話があるの」



「どうしたのお姉ちゃん?難しいお顔してるよ?」



「ちょっと座ってくれる?」



ユーマは廃村から見付けた椅子に座るとセレーナと並んで座った。



「あのね、ユーマ?これからどうする?ここのお婆ちゃん達を助けるなら魔導機探しは出来ないよ?」



「どうして?」



「私達が居なかったら炊き出しが出来る人が居ないからだよ」



セレーナは優しく、それでいて悲しそうに問いかけた。



「……」



ユーマはセレーナの言いたい事が分かったようでただ黙って下を見詰め、セレーナもユーマの答えを待った。



「ぐす…」



しかしまだ幼いと言ってもいいユーマには酷な選択だった。賢いユーマは自分にどちらも一緒に出来ないと分かると選べず泣くことしか出来ず、セレーナもユーマの判断に任せていると…



「アタシ等の事は気にせんでええ」



「お婆ちゃん?」



村の入り口で会った老婆がやって来た。



「すまないね。立ち聞きするつもりはなかったんだけどね?でもね、アタシ等の為に自分のしたい事を犠牲にする必要はないよ。坊やのやりたい事をやりなさい」



「でも!」



「アタシ等は満足だよ。最後の最後でこんなに優しくしてもらえたのだから」



泣きそうなユーマの頭を老婆は撫でて優しく笑顔で安心させようとしていた。



「ぐす…」



「泣かんでおくれ。坊やには笑顔でいて欲しいんじゃ」



「ぐす…うん」



ユーマは老婆に笑って見せた。例え涙がこぼれようと…最後まで笑顔で会話を続けた。




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