54話
「さぁ坊や。沢山お食べ」
「いただきま~す♪」
「がぅ♪」
日がくれて夜になり、夕食が出来ると一番にユーマに食事が出されシャウと一緒に食べ始めた。
「すぅ~…」
「がぅ」
そして夕食が終わるとユーマはシャウに寄りかかり眠っていた。
「しょうがないな」
「ほら、これを掛けてやんなさい」
お婆さんは奥の部屋から毛布を取り出してきてセレーナに毛布を渡し、セレーナはユーマに毛布をかけた。
「さて、オチビが眠った事だし…」
「何?」
「セレーナ、聞かせてくれるかい?オチビがあんなに必死になった理由を」
テーブルを囲んでいるアキナ、セリー、エリシア、お婆さんがセレーナを見詰めていた。
「…そうね。今回は私達のわがままに付き合わせたのだし当然知る権利があるわね、良いわ。話すわ」
セレーナは席に着くとお茶を少し飲み語り始めた。
「五、六年前かしらね…私とユーマが旅に出たのは。それまではユーマはおばあちゃんに育てられてたのよ。あの子の両親はユーマが産まれて直ぐに亡くなってね…ずっとおばあちゃんに育てられてたのよ」
「オチビにそんな過去があったのか…」
「ユーマのおばあちゃんは魔法使いでそれなりに有名人だったのよ。ユーマはそんなおばあちゃんに憧れて魔法を覚えたの。でもそんな幸せな日々も終わりを告げたの…おばあちゃんの死で」
「亡くなられたのですか?」
セレーナは頷き話を続けた。
「老衰でね…おばあちゃんは亡くなる直前までユーマを気にかけていたわ。一人ぼっちにするのが辛くてね。でもねユーマにとって辛いのはここからなの…あの事件がね」
「事件ですの?」
「おばあちゃんが亡くなって数日してから町の人達はおばあちゃんの家の財産を…魔法書とかを売り払い、町の肥やしにしようとしたの。でもユーマは必死に魔法書と杖を守ろうとしたわ…でも大人に勝てず奪われそうになったわ。でもユーマは魔導機のポーチに魔法書とか杖を隠したの。大人達はユーマを締め上げて魔法書とかを出させようとしたわ…でもユーマは頑なに守り続けたわ。結果、大人達は暴力でユーマから奪おうとしたわ。それでもユーマはボロボロになっても守ったわ。でもね、痺れを切らした大人達とうとうユーマとおばあちゃんの家に火を放ったの…自分達の物にならないなら焼いてしまおうと」
セレーナは悔しそうに拳を握った。
「私が気付いた時にはもう遅かったの…それでもユーマだけは助けたわ。でもユーマにとっておばあちゃんの思い出が詰まった家を焼かれたのには凄くショックだったの…そして事件は起きたわ。ユーマは火を放った町の人達に魔法で復讐しようとしたの…私が町を少し離れている間に町は半壊よ。それでもユーマは町を滅ぼそうとしたわ。でも私は必死に止めたわ。ユーマに人殺しをさせたくなかったから…ユーマは泣きじゃくっていたわ…悔しくて辛くて…悲しくて」
「それからどうなったんだ?」
「簡単な話よ。町の人達はユーマを危険視して町から追い出す事にしたわ。私は必死に大人達を説得したわ…でも誰も耳を貸さなかったわ。だから私は決意したの。この子は私が守ろうと、私は荷物を纏めるとユーマを連れて町を出て旅に出たわ」
セレーナは遠い目をしていた。
「どうしてセレーナさんはそこまでユーマ君を?」
「罪滅ぼしよ…」
「罪滅ぼし?」
セレーナの呟きにセリーが聞き返した。
「…だってユーマの家を焼いたのは私の両親なんだから」
誰もが息を飲んだ。
「その…ユーマ君はご存知なんです…の?」
「えぇ、知ってるわ。それでもユーマは私をお姉ちゃんと慕ってくれているわ」
セレーナが語り終えると…
「うにゅ…お姉ちゃん…」
「ユーマ?」
ユーマが寝惚けてセレーナに近付いて来て、セレーナはユーマを抱っこすると抱き締めた。
「すぅ…」
「つまらない話をしたわね」
「いえ…私達も気軽に聞いてはいけないことを聞いてしまいすいません」
セリー達は申し訳なさそうにしていた。
「さっ、暗い話はここまでにして休みましょ」
「空いてる部屋を好きに使っておくれ」
セレーナ達は各々部屋に向かい眠りについた。




