53話
「ハッ!」
「シャウ~!進め~!」
「がぅ!」
セレーナとシャウはスピードを上げて森に一直線に向かった。
「ユーマ、森に着いたら二手に別れて探すよ?」
「うん!」
森に着いた時の行動を予めセレーナは決めると…
「お姉ちゃん!見付けたら教えてね~!」
森の入口に着きユーマと二手に別れて捜索を開始した。
「エピナ草…エピナ草…あ!あった!」
ユーマはエピナ草を見付けるとポーチにこれでもかとばかり詰めた。
「よし!お姉ちゃんに知らせよう」
カチャとマジカルガンナーを構えると…
ドン!ひゅー…パン!
ユーマは新しい弾、信号弾を打ち上げた。
「シャウ!」
「がぅ!」
駆け寄ったシャウに乗るとユーマは…
「シャウ、入口に戻って!」
セレーナと別れた場所に向かった。
「ユーマ!」
ユーマが暫し待っているとセレーナがやって来た。
「お姉ちゃん、一杯採れたよ」
「なら急ぎましょう」
セレーナが馬を走らせるとシャウも後を追いかけた。がしばらく走り続けると…
「グフグフ」
ゴブリンの群れに出会した。
「こんな時に…ユーマ!」
「うん!」
ユーマが杖を出そうとするが…
「先に行きなさい!」
「お姉ちゃん!?」
「アタシがここを引き受けるから薬草を届けなさい!」
セレーナは殿をつとめると言い出した。
「でも!」
「行きなさい!貴方のお姉ちゃんはゴブリンにやられるお姉ちゃんかしら?」
セレーナの笑顔を見たユーマは歯を噛みしめ…
「絶対帰って来てよ、お姉ちゃん!」
「はい♪」
「シャウ!」
シャウに走り出してもらい群れを抜け出した。
「さて、と…」
セレーナは剣を抜くと…
「カワイイ弟の為にも雑魚には退場してもらいましょうか?」
笑顔が消え去り真剣そのものだった。
「さぁ!行くわよ!」
セレーナが馬から飛び降りるとゴブリンに突っ込んで行き…
「グギャ~!?」
ゴブリンを次から次へと斬り倒していった。
「悪いけどアンタ達に付き合ってる暇はないのよ!」
「ギャァ~!?」
剣舞と言っても差し支えない程の動きでセレーナはゴブリンを倒し続けた。結果、瞬く間にゴブリンの群れを壊滅させた。
「さてと、ユーマを追い掛けないと、ハッ!」
セレーナは剣に付いた血を振り払い鞘にしまうと馬に乗り町に向かった。一方ユーマは…
「シャウがんばって!」
「がぅ!」
シャウは主のために全力で走り続けていた。
「あ!町の入口だ!シャウもう少し!」
「が、がぅ!」
シャウはスピードを落とさず町の入口までたどり着いたが…
ドサッ
「シャウ!?」
入口に入った瞬間、シャウは倒れこんだ。
「シャウ!しっかり!」
「がぅ~…」
シャウは体力の消耗でもう動けなかった。
「シャウ!よいしょっと!」
ユーマは杖を浮かばせるとシャウを担ぎ上げ…
「(ファリー!何処にいるの!)」
「(ご主人様!町の北西の位置です。今魔力を高めるのでたどってください!)」
「(わかった~!)」
ビュン!
ユーマは町中を飛び進んでいった。
「あ!アキナさん!」
「お~!オチビ!こっちだ!こっち!」
「アキナさん、シャウをお願い!」
アキナの前で停止するとユーマはシャウを預けた。
「おばあちゃん!」
「ユーマ君!」
「採ってきたよ!」
ユーマは家の中に飛び込むと近くにあったテーブルにエピナ草を取り出した。
「坊や、ホントに採ってきてくれたのかい!?」
「早く飲ませて上げて!シャウ!」
お婆さんにエピナ草を渡すとユーマはシャウに近寄り…
「疲れし者を癒せ、リフレッシュ!」
シャウに治癒魔法をかけた。
「がぅ…?がぅ!?がぅ!」
シャウは自分の体から疲労がとれると起き上がり…
「がぅ~♪」
スリスリ
ユーマに頬擦りして元気になった事をアピールした。
「ユーマ君、セレーナさんはどうしたんですの?」
「そだ!お姉ちゃん!」
ユーマが慌てて走り出そうと振り返ると…
ドン
「こら!ちゃんと前を見てから走らないと駄目でしょ?」
「お姉ちゃん!」
セレーナの足にぶつかり、顔を上げるとセレーナの笑顔が見えユーマはセレーナの足に抱き付いた。
「ほら、お姉ちゃんは大丈夫だから」
セレーナがユーマを抱っこするとユーマはセレーナに抱き付いた。
「よしよし♪頑張ったね」
「ホントにありがとう」
するとお婆さんが外に出てきた。
「これで娘も助かるよ」
「お礼ならこの子に言ってください。決めたのはこの子ですから」
セレーナはユーマを降ろすと頭を撫で、ユーマは目を細め気持ち良さそうにしていた。
「セレーナさん、これからどうしますか?」
セリーは日がくれてきた空を眺めてからセレーナにこの後をどうするか決めかねていた。
「お嬢ちゃん達、今から宿を取りなおすのは大変だろ?家で良ければ泊まっていきなさい」
「いえ、今から宿を…」
「気にしないでおくれ。あたしに出来る恩返しはこれ位なんだよ」
「セレーナさん、ここはお婆さんの顔を立ててあげませんか?」
エリシアはお婆さんの気持ちを汲み取り、泊まる事を提案していた。
「…わかりました。お世話になります」
セレーナが折れて泊まる事になった。




