第37話
「ん?お姉ちゃん、ストップ」
「どうしたの、ユーマ?」
「シャウ、下ろして」
シャウがしゃがむとユーマは徐に床を調べ始めた。
「どうしたオチビ?」
「もしかしたらワシ等には分からん何かを感じたのやも知れん」
ユーマがぽかぽかと床を叩いていると…
ガコン!
床が開いて階段が現れた。
「凄い…どうしてわかったの?」
セリーは不思議そうにユーマに尋ねた。
「何かここだけ魔法の力を感じたの~」
「ギルドキラーも気になるが、奴より先に魔導機を手に入れれば少しは安心じゃな」
「何でこの先に魔導機が有るってわかるのですか?」
セリーは確信を持ってるギルドマスターに疑問を持った。
「簡単な事じゃよ。魔法で隠された抜け道なぞ普通はわからん。じゃが坊主は魔法を感じ取った、それに魔法を使ってまで隠したい物など魔導機以外に何がある?」
「しかしトラップという可能性も…」
「確かに入って見なければ分からんがこっちは後手にまわっておるのじゃ。先手を取れるならここで取りたいしの」
セリーの言い分も分かるのか、ギルドマスターはセリーを説得し始めた。
「ギルドマスター、余り時間を費やすと…」
セレーナは時間が惜しい事を伝えてきた。
「ふむ、弱ったのう…そうじゃ!坊主、ギルドキラーの位置は分かるか?」
「うんとね、ちょっと下かな?」
「なるほど。この階段は深そうですから…」
セレーナはユーマの答えに先回り出来る可能性に気付いた。
「どうせ近道をしても回り道しても罠が有るのに変わりはないのじゃ。なら近道を行った方がよかろう」
「そうですね、わかりました」
「じゃあ、急ごうぜ!」
セレーナ達は地下へ続く階段を降りて行った。
「シャウ~!ゴオゴオー!」
「ご主人様~!先に行かれたら危ないですよ~!」
「ユーマ!スピードを落としなさい!」
シャウに乗ってるユーマはどんどん先に進み他の者が付いてこれていなかった。
「シャウ~!ススメ~!」
「がぅ!」
「調子に…乗らない!」
ゴチン!!
セレーナは近くに落ちていた石を蹴り飛ばしユーマの頭に当てた。
「イッターイ!お姉ちゃん!?ひどいよ~!」
「なら言うこと聞きなさい!」
「ハーイ。シャウ、スピード落として」
シャウはユーマに言われた通りスピードを落とした。
「それにしても変ですね」
「何がだ?」
セリーの呟きにアキナが問う。
「さっきから罠が何もありません」
「ワシとしては当たりじゃな」
「どうしてですか?」
ギルドマスターの言葉にセリーは聞き返した。
「普通、罠が有るとそこに宝が有ると思うじゃろ?所が隠された入口、階段。ワシはこちらの方が確信を持てるの」
「なるほど」
セリーはギルドマスターの言葉に説得力を感じた。
「あ!行き止まりだ」
先を進んでいたユーマの声と同時にセレーナ達も行き止まりに着いた。
「行き止まりか?」
「坊主、また調べて見てくれるか?魔法に反応するかもしれん」
「はーい」
ユーマがぽかぽかと壁を叩くと…
ガコン!ガラガラガラガラ
壁が扉のように開いた。
「やはりな」
開いた扉を潜り、ギルドマスターを先頭に部屋に入った。
「あれは…祭壇かしら?」
部屋を見回すと部屋の奥に祭壇があった。
「坊主、何か感じるか?」
「何にもないよ?」
ユーマの言葉に皆は一安心し祭壇に近寄った。
「これは何でしょうか?」
「どうやら魔導機のようじゃな」
ギルドマスターが触ろうとすると…
バチッ!
「ぬぉ!?」
『素質と資格を持たぬ者よ。私に触れるな』
「魔導機が喋った!?」
電気が走り、拒絶され言葉でも拒否された。
「素質と資格?何の事でしょう?」
『私に触れられる者は素質と資格が有る者だけだ』
「何これ~?」
そこに恐れを知らないユーマが魔導機に触れた。
「駄目!」
セレーナは先程のギルドマスターの様になると心配したが…
『これは驚いた。こんな幼子に素質と資格があるとは』
「素質~?資格~?何それ~」
ユーマは拒絶されなかった。
「どういう事?」
セレーナは不思議そうにユーマと魔導機を見た。
「意思があるなら会話が出来るじゃろう?お主は何なのじゃ?」
『私はマジカルガンナー。二千年の時をここで過ごし主を求めていた』
「主を求めていた?あなたは何なの?」
セレーナは疑問に思ったことを伝えた。
『私は魔法の銃だ』
「銃?何ですかそれは?」
『魔法を撃ち出す道具だ』
セリーの質問に淡々と答えた。
「なら素質と資格とは何じゃ?」
『素質、私を使いこなせる者。資格、無垢な心の持ち主』
「なるほど。坊主はその二つを満たしていたのじゃな」
要点だけを聞いて話を進めた。
「って事はオチビ以外は触れないって事か?」
「そのようじゃな」
「どうしますか?置いていきますか?」
セレーナの発言にギルドマスターは…
「取り合えず、坊主。お主が預かっておれ」
「はーい!」
『主よ。祭壇に私を入れるベルトがある』
ユーマが祭壇に近付くと祭壇にベルトがあった。
「どうすればいいの?」
『主の腰に巻くといい。私はホルダー…袋のような所に入れてくれ』
「わかった~」
ユーマはベルトを巻くとホルダーを右側にやりマジカルガンナーを入れた。
「これでいい~?」
『あぁ。問題ない。私の使い方は後で説明しよう』
マジカルガンナーはユーマを主と認めてしまったようだ。
「これからどうしますか?」
「そうじゃな…ギルドキラーの目的は恐らく魔導機じゃろう。無いと分かれば引き下がるかもしれん」
「なら、その魔導機を渡して貰おうか?」
バッと振り返るとフード被った者がいた。
「ギルドキラーじゃな?」
「世間ではそう呼ばれているな」
「なら、お主を捕縛させてもらおう」
ギルドマスターが大剣を構えると…
「ギルドマスター直々か…」
「おっと!アタシ等を忘れてもらうのは勘弁だね?」
セレーナ達も武器を構えた。
「チッ。どうやら分が悪いようだ、ここは引かせてもらう」
「ワシ等がそれを許すとでも?」
「許す、さ!」
ボフンと煙が立ち込めるとギルドキラーは逃げ出した。
「けほけほ!煙いよ~!」
「しまった!坊主!魔導機は無事か!」
『私なら主の腰に居る』
ギルドマスターの問いにマジカルガンナーが答えた。
「どうやら逃げたみたいね」
「意外じゃな。無理にでも奪っていくと思っていたんじゃがな」
「引き際を分かっている分厄介ですね」
セレーナは警戒を解き、ギルドマスターとセリーはギルドキラーの引き際に感心してしまった。
「取り合えずどうする?もうここに用はないんだろ?」
「そうじゃな、一度町に戻るか」
アキナの提案にギルドマスターは町へ戻る事にした。




