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小さな僕は魔導機使い!?  作者: 猫丸
新たな厄介事
33/120

第33話


「酷い有り様ね…」



セレーナ達が町に着くと荒れ果てていた。



「お姉ちゃん」



「どうしたの?」



「変だよ?」



ユーマは町に違和感を感じていた。



「何が変なの?」



「結界の気配がないよ」



「結界がない?」



セリーが不安そうに聞いてきた。



「うん、この町に結界はないよ」



「結界って何だ?」



アキナは結界の事がわからないので質問をしてきた。



「ギルドがある町には魔法使いが結界を張って魔物が町に入ってこれないようにしてあるのよ」



「それが無くなっているって事は誰かが結界を解除した事になります」



セレーナとセリーはアキナに分かりやすく説明を始めた。



「でも何の為に?」



「それはわからないわ、ユーマ?魔物の気配を感じたら直ぐに教えて」



セレーナはユーマを抱き上げるとユーマに警戒を頼みギルドを探しに町の中を歩きだした。



「酷いですね」



あちこちに人や魔物の死体が転がっていた。



「どうやらここは無事みたいね」



セレーナ達がギルドに入ると中にはハンター達が揃って休んでおりセレーナ達はカウンターに向かうと現状を訪ねた。



「魔物の襲撃ですか?」



「はい、つい先程まで襲撃がありました。知らない間に結界を解除されていてそこに魔物の襲撃でこんな状態です」



「ギルドマスターに会わせてもらえますか?」



セリーが受付の女性にギルドマスターに面会を頼むが叶わなかった。



「申し訳ありません、ギルドマスターも先程の襲撃で戦闘を行い疲労されて今は休まれているので面会はご遠慮ください」



「かまわんよ、お通ししなさい」



すると受付の裏から少しガタイの良い老人が出てきた。



「何も出せなくてすまんのう」



「構いません。それより何があったのか教えて貰えますか?」



セレーナ達はギルドマスターの部屋に通されると向かいの椅子に座わり町の現状を聞いた。



「魔物の襲撃があったのは聞いておろう?何者かによって結界を無効にされての。おかけでこの有り様じゃ」



「この町に魔法使いはいないのですか?」



「この町にはおらんよ」



セリーの問いにギルドマスターは首を横に振って答えた。



「結界を張ろうにも魔法使いはおらん、だからといって結界を張れる魔法使いを呼ぼうにも時間がかかりすぎて町が持つかわからん」



「ギルドマスター、何故この町が狙われたのですか?」



「まぁ心当たりはあるが…」



ギルドマスターは苦虫を噛んだような表情をした。



「この町に何かあるのか?」



「すまんのう、おいそれと言える物じゃないのじゃ」



アキナの問いにギルドマスターは口を閉ざした。



「それは構いません。無理に聞くつもりはありません」



「助かるわい」



「それとは別の提案なんですが結界を直せる者に心当たりがあるのですが」



セレーナはギルドマスターに提案を持ちかけた。



「本当か!?」



「はい、ユーマ?結界を直せる?」



セレーナは自分の膝に座っているユーマに問いただした。



「う~ん…時間がかかるよ?」



「でも直せるんでしょ?」



「うん♪」



ユーマは元気に答えセレーナはギルドマスターに視線を戻した。



「どうでしょうか?」



「こんな子供に直せるほど簡単な結界じゃないぞ?」



「ユーマ、ライセンスを出して」



ユーマはごそごそとポーチをあさりライセンスを出した。



「なっ!?Aランクじゃと!?」



「Aランク!?」



ギルドマスターが驚くとセリーも驚いていた。



「そこいらの魔法使いより強いですよ?」



「そのようじゃな。見た目で判断するようじゃワシも隠居じゃな」



「ユーマは特殊ですから」



さりげなくフォローをするとギルドマスターは真剣な表情に戻った。



「では頼めるかの?勿論依頼として出させてもらう。他にも希望があれば聞くぞ」



「この子が直した事は伏せて貰えますか?」



「わかった。秘匿扱いにしよう」




ギルドマスターはセレーナの頼みを受け入れた。



「それでいつ直すんだ?」



「早ければ早い方がいいのう」



「元の結界を張った場所は?」



アキナの問いに早い方がいいと答えたギルドマスターにセレーナは最初の結界があった場所を聞いた。



「このギルドの地下じゃ」



「案内をお願いしても?」



「案内しよう」



全員が立ち上がると悪い報せがやって来た。



「お姉ちゃん、魔物が近付いてきてるよ」



「こんなときに!マスター、魔物が来ます。ハンター達に報せを!」



「わかった!おい!誰かおらぬか!」



ギルドマスターが叫ぶと職員が駆けつけて来た。



「魔物がくる。警鐘をならせ!」



「わかりました!」



職員は走り去った。



「こっちじゃ、急ぐぞ」



ギルドマスターに案内され結界の場所に向かった。


「ここじゃ」



ギルドの裏手にあった地下への階段を下りると床に魔法陣が書かれた場所に着いたがここでユーマが異変に気付いた。



「お姉ちゃん、あの魔法陣まだ動いてるよ」



「え!?でも町に結界はないわよね?」



「あれ、結界の魔法陣だけど使ってる魔法は違うよ」



ユーマの説明は今一わからなかった。

 


「ちょっと待っててね」



ガシャンと音がするとユーマは杖を出して魔法陣を調べ始めた。



「う~ん…変なの」



「ユーマ、何が変なの?」



「結界魔法に似てるけど違うんだ。何か逆の魔法みたいな感じ」



そこまで言われて気付いたのはセリーだった。



「それってもしかして魔物を引き寄せているの?」



「そう!何でこんな魔法を使ったんだろ?」



「ユーマ!その魔法止められる!?」



とにかく止めるのが先決と考え、セレーナはユーマに魔法停止を頼んでみた。



「出来るよ~」



「じゃあお願い」



「わかった~!」



するとユーマは杖をかざし魔法の停止を始めた。



「もしかしたらこれで魔物の襲撃が止まるかもしれないですね」



「迂闊じゃったな。まさか結界の破壊だけならず魔物を引き寄せる魔法までかけられるとは」



「けどそんな事出来る魔法使いが来たならわかるんじゃないのか?」



セリーとアキナがギルドマスターと話していたがセレーナは浮かない表情をしていた。



「どうしたんですか?」



「ちょっと気になってね」



「何か気になるのかの?」



セリーとギルドマスターがセレーナに問いかけようとするとユーマが声をかけてきた。


「お姉ちゃ~ん、止めたよ~」



「まだ大丈夫?」



「大丈夫~」



セレーナはユーマの体が大丈夫かどうか確認すると結界の発動を頼んだ。



「じゃあそのまま結界もお願い」



「わかった~!」



ユーマは返事を返すとそのまま新しい結界を張り出した。



「ギルドマスター、この町に何があるんですか?いくら何でも魔物を引き寄せる魔法まで使ってこの町を襲撃するなんて普通とは思えません」



「うむ…」



ギルドマスターは少し悩んだがやがて口を開いた。



「最近、この町の地下に遺跡がある事がわかったのじゃ」



「遺跡?」



「そうじゃ。恐らく古代文明の物じゃな」



セレーナはやはりと思うと更に問いただした。



「しかも未探索の…ですね?」



「その通りじゃ。いずれギルド本部が探索するはずじゃった」



「じゃった?」



過去形にセリーは疑問に思った。



「ここに向かっていたギルド本部のハンターが全滅したのじゃ」



「全滅!?ギルドのハンターって精鋭揃いだろ!?」



「お前さんらも聞いた事があるじゃろ…ギルドキラーの事は」



その名前にセレーナは心当たりがあった。



「確かギルドのハンターばかり襲っている者ですよね?」



「そうじゃ。しかもこの町に向かったという情報もある」



「じゃあこの一件…」



ギルドマスターは目を瞑った。



「おそらくギルドキラーの仕業じゃろ…」



「そいつ正気か!?無関係の町の人まで巻き込むなんて!!」



「正気の沙汰じゃないでしょうね」



セレーナ達も目を伏せた。



「お姉ちゃん、終わったよ!」



「お疲れさま、大丈夫?」



「うん♪」



ユーマはセレーナの足に抱き着くと頭を撫でて貰い頑張りを評価してもらった。



「ご苦労じゃったな、宿はワシが手配しよう」



「いいんですか?」



「町の為に働いてくれたんじゃ、これ位せんとな」



ギルドマスターは外に向かいセレーナ達も一緒に向かった。





「あむ♪あむあむあむ♪」



「ゆっくり食べなさい」



夜になりユーマは魔法を使った為、魔力補充もかねて大量の料理を食べていた。



「凄いですね」



「アタシは一度見てるから慣れてるけど初めて見た時は驚いたさ」



セリーが驚いているのにアキナが賛同していた。



「すいませ~ん!後二皿追加くださ~い!」



「まだ頼むんですか!?」



「ハァ…路銀が減ってくわ」



セレーナは溜め息を吐くと少し諦めがはいっていた。



「それでこれからどうするよ?」



「今のこの町では依頼も少ないでしょう」



「とは言っても次の町に行くには路銀が…」



皆がユーマを見ると皿の山が増えていたがユーマが食べるのをやめていた。



「もういいの?」



「うん!お腹いっ…」



そこでユーマのお腹が鳴った。



「まだ足りてないでしょ?」



「大丈夫だよ!僕もう…」



再びお腹が鳴った。



「ほら何か頼んでおいで?」



「でも…」



ユーマは口ごもった所でセリーが気付いた。



「先ほどの会話を聞いていたのでは?」



「そうなの?ユーマは気にしないでいいんだよ」 



「でも依頼少ないんだよね?」



ユーマの問いにセレーナは返答に困った。



「後は寝て回復させるよ!」



「でも…」



「おやすみなさ~い!」



言うなりユーマは部屋に戻って行った。



「ハァ…気を使わせちゃったね」



「小さいのにしっかりしてますよね」



「それなりに賢いからね」



セリーはユーマの気遣いに感心していた。



「とりあえず今日は休もうぜ」



「そうですね」



「また明日」



各々で精算を済ませて宿に戻って行った。


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