第32話
そして何事もなく朝になった。
「ん?」
セレーナが目を覚ますと膝に重みがない。辺りを見回してもユーマの姿は何処にも見えなかった。
「ユーマ?ユーマ!!」
「お姉ちゃん呼んだ?」
セレーナが呼ぶとすぐにユーマが現れた。そしてユーマの手には木の実が沢山抱えられていた。
「木の実採ってきたよ」
「ありがとう、でも一人で行っちゃ駄目でしょ?」
「大丈夫だよ~」
ユーマは大丈夫とアピールしたかったがセレーナは少し過保護があるためかユーマの行動を注意してしまった。
「アキナさん、起きて~。朝だよ~♪」
「朝か?ん~!!」
アキナは背筋を伸ばすと軽く体を動かした。
「朝ですか~」
アキナにつられてセリーも起き出した。
「木の実採ってきたから、はい」
ユーマはアキナとセリーに木の実を差し出した。
「私の分も?」
「うん♪」
ユーマは木の実を渡すとセレーナの横に座り木の実を美味しそうに食べ始めた。
「さて、これからどうするかね…」
「闇雲に歩いても迷うだけだぜ」
アキナの言い分は最もである。下手に歩けば迷い続け、余計に時間を無駄にする。するとさっきから黙っていたユーマがセレーナに声をかけた。
「お姉ちゃん、山から出れればいいの?」
「そうね、あと出来れば町の方角がわかればいいわね」
「わかった~」
そう言ってユーマはポケットの中からオールを出し折ると鳥に変化させた。
「う~ん、あ!あっち!!」
するとユーマはある方向を指差した。
「あっち?何かあるの?」
セレーナがユーマが指差した方を見るとアキナ、セリーもその方向を見た。
「山の頂上!」
「そうか!オチビ、ナイス!」
「何がよ?」
意味のわからないセレーナにアキナが説明を始めた。
「オチビはさっきの鳥で山を見てるんだよ」
「山を?どうやってよ?」
「あのねお姉ちゃん、魔導機が見てる景色をね僕も見れるんだ」
アキナの説明に続いてユーマも説明を始めた。
「景色を?」
「うん、だからあっち」
ユーマが歩き出すとセレーナ、アキナも後に続きセリーも行くあてが無いためその後を追いかけた。
「ふんふふーん♪」
ユーマは楽しそうに山道を登りセレーナ達を誘導した。
「着~いた着~いた、てっぺんに着いた~!」
「オチビは何であんなに元気なんだ?」
ユーマは何が楽しいのか異常にテンションが上がっていた。
「はいはい、てっぺんに着いたわね。ユーマ、町はどっち?」
「あっち~」
ユーマが指差した方に微かだか町が見えた。
「なら、行きましょう。乗ってユーマ」
「は~い♪」
ユーマはセレーナがしゃがむと器用に荷物を登っていき上に座った。
「貴女はどうする?」
「私もあの町に行ってみようと思います」
セレーナはセリーに今後の事を聞いたが行き先は同じだった。
「行き先は同じなんだし仲良く行こうぜ」
アキナも荷物を持ち歩きだしセレーナ達も続いた。
「ふんふふーん♪」
「ご機嫌だなオチビ」
「うん♪」
ユーマが楽しそうにしているとおかしな事に気付いた。
「あれ?」
「どうしたの?」
ユーマの異変に気付いたセレーナは足を止めた。
「お姉ちゃん、あの町何か変」
「変?どういう事?」
「あちこちで煙が上がってるよ」
セレーナ達はとっさにしゃがむとセレーナはユーマを荷物から下ろした。
「ユーマ、周囲に魔物がいないか探って」
「わかった~!」
ユーマは集中すると周囲の様子を探った。
「う~ん」
「どう?」
セレーナがユーマにたずねると最悪な答えが返ってきた。
「あっちに沢山の魔物がいるよ」
「どのくらいだオチビ」
「数えきれない」
ユーマが指差した方は町と反対の方向だった。
「どんどん離れていくよ」
「魔物の襲撃か?」
「その可能性が高いと思います」
アキナとセリーが話ながらセレーナを見た。
「どうする?このまま行くと危険よ?」
「ですけどこのままほっとくのも…」
「気分悪いよな」
セレーナ達は覚悟を決めると町に向かった。




