第30話
「さぁ行くよ、ユーマ」
「は~い♪」
荷物を纏めたセレーナはユーマに出発の声を掛けた。ユーマも自分の定位置の荷物の上に乗った。
「落ちないでね」
「大丈夫だよ~」
セレーナは荷物を背負うと町の入口に向かった。
すると入口にアキナが立って待っていた。
「よっ」
「どうしたの?」
「アキナさん、見送りに来てくれたの?」
よく見るとアキナの足下に荷物が置かれていた。
「アキナ、まさかとは思うけど…」
「アタシも世界を知りたいと思ってな、一緒に着いていこうと待ってたんだ」
アキナが荷物を背負うとセレーナは強い眼差しでアキナを見つめた。
「それで?何で私達と一緒に行く事になるの?」
「理由か?今アタシが知ってる奴で強いのはセレーナだから」
さも当然のようにアキナは胸を張って答える。
「だから!着いてくる理由を聞いてるの!」
「セレーナ達はランクが高いだろ?一緒に居ればアタシも強くなれると思ってな」
脳筋の為かアキナ考え方が今一分からないセレーナだった。
「私達に着いて来ても強くなれる保証なんてないわよ」
「その位わかっているさ。アタシの努力次第って事も」
最早何を言っても駄目と思い、セレーナはユーマにも尋ねた。
「どうするユーマ?」
「う~ん、アキナさんなら大丈夫だと思うよ?自分の事も守れるし」
ユーマはハンターとしての最低限の事がアキナに出来ると思い着いてくる事に賛成した。
「わかった、ユーマも賛成だし行きましょ」
「そうこなくちゃ♪」
こうしてセレーナとユーマは、アキナを仲間に加えて旅をする事になった。
「ねぇお姉ちゃん」
「何、ユーマ?」
「ここどこ~?」
セレーナはユーマの問いに困った。
「……山の中」
「いや、その答えはどうなんだ?」
セレーナの答えにアキナは思わず突っ込んだ。だがセレーナの答え方にも一理ある。
現在山の中、世間一般では遭難とも言う。山の中歩き続けて早数時間、日も傾き足下が段々と悪くなりだした。
「ユーマ、今日は野宿になるけどいい?」
「大丈夫だよ~♪」
ユーマの返事を聞いたセレーナは荷物を置くとテントを建て始めた。
「お姉ちゃん、薪を探してくるね~」
「気をつけてね」
「セレーナ、アタシも手伝うよ」
アキナもセレーナと一緒にテント張りをして、ユーマは薪を探しに向かった。
「オチビは野宿慣れてるのか?嫌そうには見えなかったけど」
「旅を続けていればね、最初は怖がってたわよ。今は慣れて薪を探しに行く位なんともないわよ」
旅の苦労を少しだけ愚痴るセレーナ。
「何だかんだ言ってもオチビも子供って訳か」
「僕がどうかしたの?」
振り向くとユーマが薪を抱えて立っていた。
「何でもないよ、薪は拾えた?」
「うん♪ほらこんなに♪」
ユーマは拾った薪を見せた。見せ終わったユーマは薪を二つに分けて片方に火を点けた。
「火よ、彼の者を焼く火となれ!フ ァイヤー」
「オチビが居ると火に困らなくていいな」
魔法で火を点けたユーマを見てアキナは便利と思っていた。
「ご飯にしましょう、おいでユーマ」
「わ~い♪ご飯だ~♪」
ユーマはセレーナの横に座ると、セレーナからパンと干し肉を貰った。
「アキナも」
「サンキュー」
アキナもセレーナからパンと干し肉を貰いそれを見ていたユーマは…
「食べていい?」
「食べていいよ、ユーマ」
「いただきま~す♪」
セレーナの許可と一緒に皆で食事を始めた。




