第26話
「どうしよ~!!」
只今ユーマが混乱中である。
セレーナに怒られる事が確定に近いこの状況。逃げる事も出来ない為に落ち着いていられない。
「落ち着けって」
「どうしよ~!!どうしよ~!!お姉ちゃんに怒られる~」
余程怖いらしい…
セレーナを見ている人間には怖そうに見えないが今のユーマにとっては恐怖の存在らしい。
「アキナさん!!」
「お、おう!?」
ユーマの鬼気迫る勢いにアキナも弱冠引いていた。
「アキナさん!!僕がライセンス出したの見てないよね!!」
何とも無理な言い訳である。
子供だから仕方ないがユーマの言い訳を助ける為にアキナも協力しようと思うが…
「あ、あ~…」
「見てないよね!?」
ユーマに協力をしようと思ったが万が一セレーナにバレた時、自分が無事で済むか考えると何故か即答出来なかった。
「諦めな」
「やだ~!!」
アキナの無慈悲な宣告にユーマは駄々をこねるが無駄な足掻きである。
何故なら恐怖はすぐそこにあるのだから。
「ユ~マ~…」
「ピィ!?お、お姉ちゃん…」
「何をしてるのかな~?」
モンスターも逃げ出しそうな声で呼ばれた為にユーマは怯えた。
「な、何でいるの!?」
「帰りが遅いから迎えに来たの…でも良かったよ。ユーマが入れ違いにならなくて♪」
笑顔である。物凄く綺麗な笑顔でユーマを見ている。
ユーマもセレーナの笑顔を見るが笑顔が綺麗過ぎて余計に怖さが倍増していた。
「お、お姉ちゃん…」
「ん?なぁに?ユーマ?」
「ごめんなさい、ライセンスを出しました」
素直にユーマは謝った。これ以上セレーナに刺激を与えても自分の身の安全がないのである。
なら多少怒られる事になっても無事に済む方を選んだ方が自分の為になるのである。
「出しちゃ駄目って言ったでしょ?」
「ごめんなさい」
「もう…」
素直に謝られたらセレーナもこれ以上怒る事は出来なかった。
ユーマがちゃんと反省しているのにこれ以上怒る事は逆効果になりかねない。
「じゃあお会計して帰ろ?」
「うん♪」
「話は終わったようじゃな。ならその品の金額じゃが、銀貨1枚じゃ」
店主から言われた金額はそれなりにする金額を提示された。
「それでユーマ、魔導機は使えそう?」
骨董屋から出るとセレーナはユーマに使えるかどうか訪ねた。
「う~ん、少し見てみないとわかんない」
「わかった。なら森に着くまで調べてみて。アキナ、私たちもそろそろ行きましょう?準備は出来てる?」
魔導機はユーマに任せる事にしたセレーナは、アキナに直ぐに出れるか訪ねた。
「ああ、何時でも行けるよ」
「なら行きましょう。のんびりしてる訳にもいかないし」
セレーナは荷物を背負うとユーマを抱えて歩き出した。
ユーマに少しでも早く魔導機の使い方を見つけてもらう為に、抱えて安全を確保してあげればその分魔導機に集中出来るのである。
「う~ん…う~ん」
ユーマは色々な角度から魔導機を見るが分からず唸っていると今度は可動するかどうか試した。
すると今度は上手くいきユーマはどんどん可動させていった。
最後に魔導機は正方形の薄い板のようになった。
それを見ていたセレーナはユーマに訪ねた。
「ユーマ?それ元に戻せるの?」
「うんとね?こっちが元の姿みたい」
流石にこの薄い板が何の役に立つかセレーナも疑問に思った。
「何だろな♪何だろな♪」
ユーマは形が変わったのが嬉しいのかテンションが上がっていた。
そして魔導機をいじり始めて何か折っていった。
「何してんだオチビ?」
「見て♪見て♪鳥さん♪」
ユーマが魔導機を折って作ったのは鳥だった。
だがここで魔導機に変化がおきた。ユーマが作った鳥が本物に変わったのだ。
流石にこれにはセレーナ達も驚いた。
「ユーマ?その魔導機は何かわかった?」
「うんとね?魔導機を折って作った物に変化する道具みたい。僕の魔力を少しあげたら本物に変化した♪」
これは役に立ちそうだが、今回の依頼には使えそうになかった。
「今回の依頼には使えそうにないわね」
「じゃあしまっとくね~」
ユーマは鳥を元に戻すとポケットに魔導機をしまった。
「魔導機の名前考えないとね?」
「うんとね、う~ん…オール!!」
ユーマは少し悩むと名前が思い付き楽しそうに発表した。
「じゃあユーマ、名前も決まったし森に着くから準備して」
「わかった~」
セレーナがユーマを下ろすと、ガチャンと音がするとユーマは自分の杖を準備した。
「準備できた~!!」
「なら行きましょう」
アキナがいなければユーマは杖で飛んで行くのだがそうもいかずトテトテとセレーナの後ろに付いていった。




