科学者S
思いっきり短編
少し思いついたから書いてみたものです
ちらっと読んでみてください
人類は探し続けていた。新たなる革新を。
人々はすでに子供に飽きていた。うるさく金が掛かる。楽しく魅力的な刺激を与えてくれるセックスにただひとつだけ水を差すこの厄介な代物に。そしてそのセックスによってある天才科学者Sが生まれた。彼は外の空気に触れた瞬間に人口乳房をくわえさせられ、ヒーターによる温もりを与えられた。誰が親かを知らず内にかれは科学者になっていた。
Sは考えた。セックスによって子供が生まれてしまうのは、セックスによってしか子孫を残せなかったからだと。ならばセックス以外で人類が繁栄できるようになったらどうなっていくのであろう。意味を失えば退化する。自然界で常に行われてきたことだ。尻尾がなくなったのと同じだ。わずか五年でこの計画は軌道に乗り、Sが二十四の時最初の進化した人類が現れ始めた。そのころには想像もできないだろうが、Sが進化させたクローン技術により牛も白菜も鳥も人参も石油も無くなっていた。すべては生活人間や肉人間、野菜人間、液体人間、燃料人間などで世界が回った。数種類の人間が何億匹も作られ、食べられたり飲まれたり焼かれたり生活したりしていた。
作られるものはすべて理想を追求されることになる。人々は理想を究極まで形にしやがて人間は固定化されていく。しかし、ここでその中にがん細胞のように内側が突然変化するものが現れるため、昔と同じように犯罪は数が減らなかった。そして外側は皆と姿かたちが周りと同じ現代社会にとって現行犯だけがそれらに対する対処法になった。一回逃げられれば木を森の中に隠されてしまったことになる。区別がまったくつかなかった。そして地球上に人類が増えるごとにこうしたことは多くなったが、人口は増えるばかりであった。
そして天才科学者Sは気づく。人間を形作っているのは肉体ではなく影であることに。影には指紋のような物にはない生活によってできる個性があることに。(たとえば飲み水の量や睡眠時間などの差である。)その後に開発されたこの技術は画期的なものだった。なんと影に人格を与え地面から引き離したのだ。売り出し文句は『何にも言わなくて意思の通ずる産まれたときからのパートナー』『信じられるのは金と自分の影だけ』。裏では犯行時の影のプロファイリングを行い、逮捕率は86.9を超えた。しかし、人はいつの時代も技術を戦争の新しい武器として使えないかと考える。だが、この考えは失敗した。なぜなら、影と人は心の深いところで繋がっていたからだ。影が死ねば人は永遠に彷徨なければならなかったからだ。しかし、この考えは戦争ではなく一般庶民に広がった。それを知りつつも生活人間は永遠の命を求め瞬く間にほとんどの人々が影を殺した。なぜなら体は心を捨て細胞は死を忘れひたすら分裂を開始する。その人物は人類の丸からはずれやがて一つの完全な円の集団の中で完全な円を描き同じテンポ同じメロディーでただ足を動かすのだ。(ここに新たな木星が生まれる。)輪はどんどん大きくなり人類の行動は永遠の中に間延びし呼吸さえ捨てる。一瞬が永遠になる。(これは進化なのだろうか。退化なのであろうか。それは誰にも分からない。Sは研究をし続けていたが影は殺さなかった。)この状態が1週間続けば廃棄処分をしていいという決まりになった。燃やすのはとてもではないがきりが無くとてもではないが追いつかない。次から次へと海に捨てられていった。が、彼ら生活人間は生きていた。どうしてそこまでしたのだろうか。それは彼らが一つの神を信じ、その神の言葉に人間は死ぬとよみがえるとあったからだ。これは生活人間も死んで生き返ったとき野菜人間にも燃料人間にもなる可能性を含んでいると解釈した。自分が粗末にしてきたものに粗末にされるのが怖い。彼らは鏡さえも怖かった。ヒステリックな人達はいつか自分を噛み砕く歯それを見るだけで貧血を起こしかけた。
だが、人類の混乱も終わりかけようとしていた。海が埋まり陸地が水に沈み水面を生きている人間が覆った。新たな人間を作る工場は需要が失われたため水に沈み、生活人間以外の人類は徐々に腐り、とろみを持った水に変わった。
Sだけが地球が新たな産声を上げるのを船の上で待った。