オレの『夢』を盗むy
ここは、学校。俺は、高校一年生で、B組。
ついさっき、事件が起きた。
また、yの仕業だ。俺の携帯にメールが来た。
あいつには、教えてないと思う。
あいつとは、上夜幸絵のことだ。あいつは、毎日毎日ヘラヘラ笑っててムカツク。
幸せそうで、とても幸せそうでムカツク。
メールの内容は、
『今日は、早めに盗みたいな♪だから、午後0時ぴったしに、例の場所でね☆』
題は・・・『夢』だった。
『夢』とは、俺の作品の一つだ。
大切に、桜の木の下に埋めてある。
11:55か・・・。
そういえば!上夜がいない。お腹痛いと言って、保健室に・・・・・・いいや。盗みに行った。
俺らの教室から、桜の木まで、およそ五分。(徒歩)頭がいいな。上夜は。
ガタッ
「先生、気持ち悪いので、保健室行ってきます」
「ああ」
でもなぁ、俺にだって考えはあるんだよ!!
普段走らない廊下を走る。
周りなど気にせずに、バタバタという音も耳に入らない。
犯人はもう知ってんだ。捕まえなきゃ、上夜を。
上夜幸絵を・・・。
「っしゃあ!間に合った。上夜は・・・」
俺はギリギリ11:59に着いた。上夜はもう着いてるはずだ。
『夢』は、1mくらい掘って埋めた。
そんなにすぐ盗めないはずだ。
俺は時計の針なんて気にしてなかった。
ガサガサ
葉が落ちてきた。まさか―・・。
この時の気持ちは、なんというか・・・あの時だ。あの時のようだ。
あの時のなんとも言えない気持ちだ。
あの時のように、上夜は、桜の木から飛び降りて、走っていった。
だめだ。だめなんだ。いくら、キレイでも、クラスメイトでも、このままつっ立ってちゃあ、だめなんだ。
あいつは、盗み続ける。俺の作品を・・。
「待てよ。分かってんだよ!!お前の正体を!クラスメイトだってことを!」
そう言ったら、上夜の足が止まった。
そして、俺の方へツカツカと歩いてきた。
正直・・・殴られるかと思った。俺が目をつぶった瞬間に、上夜は言った。
「返す!返します。いままですみませんでした。もう盗みませんから!許してください」
「上夜・・・?」
上夜は、顔を真っ赤にしてまた走っていった。
別に、返せって言ってないんだけどさぁ。
「持ってってもいいよ!つか、もういらないから!」
すると、笑いながら君は言ったんだ。
「ありがとう」
なんか、かわいいと思ってしまった。
それからだ。上夜を意識し始めたのは。
かわいいと思い始めたのは。
ムカツクなんて思わなくなったのは。
目で追うようになったのは。
好きだと思い始めたのは。
これからは、上夜の為に絵を描きたい。
そして、それから一ヶ月後――・・・俺らは事件に巻き込まれた。