第4話 贈り物と従姉妹の教え
お茶の時間の後は幼児特有の質問攻撃でフラウさんにこの国の事や常識について教えてもらう。
んで漸くここが何て国なのか分かった。
この国の名は"トゥーリア"。
別名、"水と知の国"と呼ばれている。
豊富な水と他国より多くの魔術師が住む事からそう呼ばれているらしい。
……水と知の国、トゥーリアか〜。
……勇者召喚を行っている国としか聞いて無かったから助かった。
"知識"を使うにも国名が分からなければ使えないモノもあるみたいだし。
………"影"とかについては相手の魔力を探知した瞬間に"知識"から情報が得られたのに。
………ところで、勇者召喚で思い出したんだけど勇者って必要かい?
そう疑問に思ってフラウさんに聞いてみたところ…。
魔王云々ていう話は無いらしい。
そもそも「"魔王"って何でしょうか?」って逆に聞かれてしまった。
簡単に説明してみたところ、やはり聞いた事が無いとの事。
え?魔王が居ないっぽいのに勇者って必要かい?
……一瞬、ほんの一瞬だけだけど魔王職、空いてんのかー。チャーンス?とか思っちゃったけど。
いや、ねぇ?
"魔王"って響きが堪らんじゃん?うふふ…。
って、いかんいかん。話がズレた。
この世界に魔王は居ないっぽいけど僻地の村が"魔物"(ここではモンスターの事をそう呼ぶらしい)に襲われる事もあるみたい。
けれど国の兵や傭兵、そして冒険者("ギルド"と呼ばれる機関に登録している人の事で依頼人がギルドに委託した依頼をギルドを通して受けて報酬を得たりするらしい)等で魔物退治は事足りてるんだって。
"冒険者"にギルドかー。
ファンタジーの世界ですねー…。
つか、事足りてるんだったら尚更、"勇者"の必要性が分かんない。
あたし、何であんなに見張られてんだ?
そもそも幼女だから勇者じゃないって、あたしの望み通り判断してくれたんじゃないの?
うーん…、謎だ。
それとは別に気になった話が1件。
隣国リスタニアが、きな臭いらしい…。
別名、"武力の国"。
そう呼ばれている"リスタニア"。
フラウさんが魔物の話の時に、ついポロリと溢した「王城に出入りしている商人達の話によると最近、リスタニアでは徴兵が盛んに行われているらしいんですよね…。そんなに集めて、どこかと戦争でも始めるつもりなんでしょうか…」この言葉に疑問符が浮かんだ。
………"知識"によると隣国リスタニアは他国より国土が狭く魔物の被害が殆ど無かったはず。
全く無い訳じゃないから魔物退治用の徴兵かもしんないけど、それにしては大袈裟じゃないかい?
商人ルートの話なら信憑性が高いしみたいだし…。
…思ったよりも早くここを出る事になんのかなー?
我が身は可愛いし、リスタニアの動きには今後、注意しておこう…。
そう結論付けると、あたしはフラウさんに先程から個人的に凄く気になっていた事を問いかける。
「…フラウお姉ちゃん、そのクマさんなーに?」
ティーセット等を片付けに一旦部屋から出ていったフラウさん。
帰ってきた時には何故かあたしより少し大きめのテディベアを手にして帰ってきたのだ。
色は薄茶色。
首に巻かれたリボンは白。
目がクリクリしてて愛らしい。
かなりグーです。
あたし好みです。
勿論、いただけるんですよね?
「フフッ…。お気付きになられましたか。私からリン様への贈り物です。このコをリン様のお友達にしていただけませんか?」
「えっ?リーのお友達に?…うんっ!!いいよっ!!フラウお姉ちゃん、ありがとうっ!!」
…えっ?遠慮?
それでお腹がいっぱいになんの?
遠慮なんてしてたら周りに全部持っていかれちまいますよー。
遠慮するくらいなら渾身の笑顔で、ありがとうです。
スマイル0円。無駄に笑顔ですよー。
あたしに、そう教えてくれたのは勿論、彩夏お姉ちゃん。
いやー…ためになります。
まぁ、興味ないモンは、いくらあたしでも遠慮しますよ?だって、いらんし。
あたしはフラウさんから笑顔でテディベアを受け取り、その手触りを堪能する。
サラサラでモフモフ。
ぬはー…、手触り最高です。
しかも何かいい匂いするし〜。
「フラウお姉ちゃん、クマさんからいい匂いがするよー。何でー?」
大方予想は付いてるけど首を傾げながらフラウさんに聞いてみる。
えっ?
だって、その方がなんとなく"無邪気な子供"みたいで可愛いし。
「フフッ…。職人の話によりますと、そのコの中にはポプリが入れてあるそうなんです。それで、いい匂いがするのでしょう。気に入っていただけましたか?」
あたしを見詰め「可愛いなぁ〜」と言いたげな表情で教えてくれるフラウさん。
…ここ迄、素直に反応されると罪悪感が………今更湧いたりする訳も無く。
「うんっ!!ありがとうっ!!リー凄い嬉しい!!」
あたしはフラウさんに対して大袈裟なくらい感謝の気持ちを体現しておいた。
だって人間関係を円滑にする為には感謝の言葉と笑顔は基本ですから。
それだけやっておけば余程の事が無い限り悪い印象は抱かれないんだってー。
これも彩夏お姉ちゃんの教え。
自分の為になら笑顔で感謝の言葉や気持ちを表すぐらい簡単だしねー。
いくらでもやりますよー?
それよりも。
…お城のご飯って、やっぱり豪華なんでしょうか?
この国に召喚されたのがおそらく昼過ぎ。
朝と昼は残念な事に食いっぱぐれましたが…。
勿論、夕食は期待してもいいですよね?
あたしは今、育ち盛りの幼女ですし。