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第2話 敬愛する従姉妹の教え

神殿から出て今のあたしの足で15分程。

フラウさんに案内されたのは暖色系で纏められた可愛らしい部屋だった。



大人なら5分もかからなさそうだな〜。

思ってたのとちょっと違うけど今のあたしは幼女だから仕方ないかー…。



幼女だという事であまり階段を使わない部屋を選んでくれたのだろう。

見渡してみると壺や絵画等、お城の客間にありそうな物が一切ない事に気付く。




…………実は警戒されてる?




「…リン様、何か気になる物でもございましたか?」


未だ手を繋いだままだったフラウさんが、あたしと目線を合わせるようにわざわざしゃがみこんで問いかけてくれる。




フラウさん優しいなぁー。こんなお姉ちゃんが欲しかったなぁ〜。

生前(?)は可愛げのない弟2人に囲まれてたし…。



ぶつぶつと生前(?)の境遇に胸中で不満を呟く。

…が、済んだ事(?)は仕方ないと早々とあたしは気持ちを切り替えた。




「あ…の…、お花や絵とかは飾らないの?」



首を傾げ渾身のラブリーポーズ(?)。



今のあたしの容姿ならイケるはずっ!!

生前(?)のあたしなら一発KOだよー。

……変な性癖とか言わないで。

性癖じゃないし。

可愛らしいモノを愛でるのは人類の義務なのよ!!




そんな、あたしの計算高い仕種にフラウさんの目尻が下がる。



おぉっ!!

キター!!

意外と好感触!?

うふふ…。

フラウさんも好きねぇ〜。



「リン様がぶつかられて怪我をされては大変かと思い下げさせたのですが…。お花や絵があった方がお好きですか?」




…成る程。

気を使って下げてくれたのか。

ちょっと焦ったじゃ〜ん。

まぁ、フラウさんが嘘を吐いているとは思えないし。




「お花や絵は好き…です。…ここに来る前も…ママに言われて…お花を…摘んでたの…っ…」



一応、ここでも目を潤ませてみる。

今のあたしは"いたいけ"な幼女だから利用出来るモノは何でも利用しないと。

今はまだ、お城の生活に興味があるから事を荒立てたくはないし。



まぁ、もしもの時は魔法や想像具現で乗り切ろう。



「…そうでしたの…。お辛いでしょうに…。リン様、…私、リン様の御生母様には勿論、遠く及ばないかもしれませんが精一杯、リン様のお世話をさせていただきますね」


そう言って微かに涙を浮かべたフラウさん。

そんな人の善すぎるフラウさんの様子に、あたしはやり過ぎたかも…と一瞬、後悔してしまった。




………ごめんね、フラウさん。

今のあたしは幼女の姿だけど生前(?)の年齢はフラウさんの年より多分、上なの…。




「…ありがとう、フラウお姉ちゃん」




まぁ、後悔はしても手は抜きませぬが。

所詮、え?後悔って何?美味しいの?ってやつですよ。

…うふふ。




涙を滲ませながらも自分に一生懸命、笑顔を向けるいじらしさ。

そして自分をお姉ちゃんと呼び慕う、無垢な幼女。

そんな、愛らしい幼女の容姿をフルに活かしたあたしの策略にフラウさんは見事撃沈した。




使えるモノは何でも使えと、あたしに教えてくれた従姉妹の彩夏お姉ちゃん、元気かなー。

きっと相変わらず男を取っ替え引っ替えしてんだろうなー。




目の前で身悶えしているフラウさんを見詰めつつ、あたしは自分の人生の師匠とも呼べる従姉妹の姿を思い出す。







拝啓、彩夏お姉ちゃん。

あたしはお姉ちゃんの素晴らしい教えを胸に異世界でマイペースに生きていきます。…なんちゃって。

なんか喉が渇いたし、そろそろフラウさんを正気に戻そう。







「…フラウお姉ちゃん、大丈夫?リー、何か変な事を言ったかな?」


舌ったらずなあたしの問いかけに直ぐ様、フラウさんは正気を取り戻した。

ついでに自分の事をわざと愛称で呼びフラウさんの庇護欲を掻き立てておく。

………念には念をってやつ、だ。




「い、いえ。何でもございません。取り乱したりして申し訳ございませんでした。リン様、喉は乾かれてませんか?」



うんうん、最高だよフラウさん。

あたし、フラウさんとなら上手くやっていける気がするよー。



「えっと、少し渇いたかな…」


遠慮がちに答えるあたしに満面の笑みで頷くフラウさん。

素敵です。



「それでは準備して参りますので、こちらにお掛けになってお待ちいただけますか?」



あたしの愛らしさに撃沈した後も敬語を使うフラウさん。



いやぁ〜、メイドさんの鏡ですね〜。

宰相に苦言を言われただけで掌を返したみたいに態度を変えていたどっかの筆頭魔術師にフラウさんの爪の垢でも煎じて飲ませたいくらいです。



「うん。ありがとう、フラウお姉ちゃん」



あたしは素直に頷くとフラウさんに支えられてソファーに腰掛けた。




勿論、スマイル0円。

無駄に笑顔ですよー。


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