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第19話 ギルドと初○○ ④




『ギャーッ…』



不気味な鳴き声が聞こえてくる。

空に届きそうなくらいまで伸びた木々。

膝上まで伸びた草。

日中だというのに薄暗く、どことなく不気味な雰囲気を醸し出している。

ここは、"トネアの森"。




「…思ったより暗いね」




「えぇ。私も森の中までは入ったのは初めてですし…どうしましょう…」



「んー…、ちょっと薄暗いだけだし大丈夫でしょ。不安ならランタン使っちゃう?」


市場で念のために買っておいたランタンを取り出しながらフラウさんに問いかける。



「そうですね。使いましょう…。その方が早くルクル草を見つけ出せそうですし…」



「ん。了解」



あたしは"魔法"でランタンに火を灯す。

辺りが明るくなって見通しが良くなった。

フラウさんの分のランタンにも火を灯し、手渡す。



「ありがとうございます。では探しましょうか」



ルクル草が群生しているといわれている場所は比較的、森の入り口に近い。




…1時間後。




「……なかなか見つからないね」




「えぇ…。この辺りにはないようですね」



「もう少し奥に進んでみようか」



「そうですね。この辺りには見当たりませんし。そうしましょう」



比較的背の低い草を踏みしめながら、辺りを確認しつつ奥の方へと進む。



「変ですね…」



「どうかした?」




「……ここに何かを掘り出した跡があるんです」




フラウさんが指を指している場所を見てみると確かに何かを掘り出したような跡が…。



「もしかして他にもルクル草を採りに来た人がいるのかな?」



「そうかもしれません…。困りましたね」



「まぁ、ここで立ち止まって考えていても仕方ないし進もう」



「そうですね。参りましょう…」









ザッザッ…と自分たちが草を踏みしめる音が聞こえる。

ルクル草は、なかなか見付からず時間だけが過ぎる。

その間に三度程、"魔物"に襲われたが、あたしが武器を手にするよりも早く行動したフラウさんによって全て撃退されてしまった。



えぇ、あたくし未だにキレーな体ですの。

こっちで過ごすからには戦いにも慣れたいんだけどなぁー…。



倒された魔物に関しては気持ち悪いとは感じたものの…。

考えていたよりも気持ちは落ち着いていた。

あっちで読んだ小説とかによると命を刈り取る罪悪感とか嫌悪感とか色々込み上げてきて吐いたりとか泣き出したりみたいな描写があったから…。



なんか拍子抜けかも、

まぁ…、襲ってきたのが虫っぽい魔物だったからかもしんないけど…。



周囲を見渡しながら森の奥へと進む。

すると木々や草が少ない場所に出た。

木々に遮られる事が少ない為、今までいた場所より随分と明るい。



なんか明るいとホッとする。これで魔物がいなきゃ森林浴〜とか言いながら楽しめそうなのに。



「あ!!ありました!!」



ボケーっとそんな事を考えていたあたしの耳に嬉しそうなフラウさんの声が聞こえてきた。



いかん、いかん。

ボケーっとしてた。



「アリス様、ルクル草がありました」


そう言って少し青っぽい実をつけた草をフラウさんが持ってくる。



おぉー…、これが"ルクル草"。

確かに"知識"通りの見た目だわ。

これが調合されて風邪薬になるのかー…。



「見つかって良かったぁ〜。違約金、払わなくて済むね〜」



「フフッ…。そうですわね。初依頼で違約金はキツイですもの」




出来るだけ傷付けないように丁寧に採取し"魔法"で作り出した水で泥を洗い流し"想像具現"で作りだした紐で括り、5つずつに分けて束にする。



「まぁ…!!素晴らしいですわ!!」



「へ?」



せっせとルクル草5つを紐で括っていたあたしは、フラウさんの声に驚いて作業を中断してしまう。



「素晴らしいですわ!!アリス様!!」



「な、何が?」



「ソレです!!」



「ソレ?」



「えぇ、ソレです!!水で洗ったり紐で括ったりなんて…私、思いつきもしませんでしたわ…」


どんどん声が小さくなりながらも、気が付かなかった自分が恥ずかしいと、そう告げるフラウさん。



「あー…、なんか泥ついたままバッグに入れたくなかったし1つずつやと取り出すときに面倒かなって思っただけだよ。バッグ中に泥とかあると意外と気になるのよ」



「成る程。確かに気になりますね。私もアリス様を見習わせていただきます」




………ん?あれっ?

四次元バッグだから『泥〜』とか言いながら泥が取り出せたりする?




「あ、アリス様。せっかくですし少し多めに採取していきませんか?私もルクル草を使った調合は出来ますし」



「えっ?フラウさん、調合も出来たりするの?」



「えぇ。調合が得意な姉の手伝いもしていましたから…。ついでに教え込まれましたの…」



スゲー…。

流石、フラウさん。



「そうなんだー…。じゃあ、必要な分だけ採取しようか」



「はい」




「……とは言ったものの…この辺りにはもう無いみたいだね。少しだけ奥に行ってみる?」




軽く辺りを見渡したものの…。

この辺りにあったのは採取した分だけだったらしく、ルクル草は見当たらない。

軽く気落ちしつつ、フラウさんに問いかけてみた。



「そうですわね。行きましょうか」



採取する際に邪魔だったランタンをもう一度、手に取る。

そして、ルクル草を探す為に薄暗い森の奥へと足を踏み出した。見逃さないように辺りを注意深く見渡す。



「もう少し奥に行かないとダメかな〜」



さっきの場所から3メートル程、離れた場所で。

ついつい呟いてしまう、あたし。



なーんか背中がゾクゾクすんだよね〜。



寒くないのにゾクゾクと嫌な感じがする。



「アリス様、どうかなさいましたか?」



「んー…、なんかゾクゾクすんだよね〜」



少し離れた場所でルクル草を探していたフラウさんが心配そうにあたしの側へと寄ってくる。



「大丈夫ですか?」



「んー…、大丈夫。体調悪いって感じじゃなさそうだし」




「…今日はもう戻りましょうか。また、日を改めて来ればいいことですし…」




「んー…、いいや。大丈夫。もう少し探してみようよ。日をあけたら、また探すの大変そうやし」


笑いながらフラウさんにそう告げる。



「本当に大丈夫ですか?」



「うん。へーき、へーき。変なこと言ってごめんね。ほら、さっさと探して帰ろう」



「そうですわね…」



しょうがないなぁー…と言いたげなフラウさんの様子に何となく嬉しさが込み上げてくる。




……変な感じ。

こんな些細なやり取りが嬉しいなんて。




辺りを注意深く見渡しながら奥へと進む。

ザッザッと草が外套やブーツに当たる音が薄暗い森の中に響く。




「……なーんか静かじゃない?」


ポツリと呟くあたし。



「えぇ…。少し変ですわね…」




「……ですよねー…」




さっきまで聞こえていた不気味な鳴き声が止んだ。




「…戻りましょうか?」


そうフラウさんが問いかけた瞬間―…。



バキバキバキッ!!



何か大きな木が折れたような音が響く。

そして…。



「うわぁぁぁっ!!た、助けてくれっ!!」



「えっ?」



森の奥の方から人の声が聞こえた。



「アリス様…」



「行こう、フラウさん!!」



人の声を頼りに森の奥へと駆け出す。



バキバキバキッ!!



木が折れたような音も人の声が聞こえる方から聞こえる。

ピシッピシッと木の枝が無防備な額や頬を傷付けるが構わず走り続けた。



「ぎゃあぁぁぁっ!!」



近くで聞こえた悲鳴にあたしは漸く足を止めた。



「どこっ!?」



「アリス様!!あちらです!!」


そう言ってフラウさんが指した場所には3人の"冒険者"らしき姿。

そして、質の悪いガラス玉のような赤黒い目を持つ熊によく似た魔物の姿。



良かった…!!

間に合った!!



そう思い冒険者の側へと駆け出そうとした瞬間。














"赤"が舞った。


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