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第17話 ギルドと初○○ ②

煉瓦造りの建物内に入ると入口の傍に施設内部の案内板が設置されていた。

1メートル×1メートル程のおそらく金属製っぽい案内板。

物珍しさから案内板に近寄って見てみると案内板は鉄とも銅とも違う金属で作られていそうな事と、建物内の造り自体は簡単なモノだという事もわかった。

案内板に書かれている文字はアラビア語に少し似ていて。

習った覚えもないのに読めるという事実に、もう生前の自分とは違うのだな…と嫌でも理解してしまう。

案内板から振り返って建物内を観察してみた。

中央をカウンターで仕切り外側と内側の二空間にわけられているだけの簡素な造りである。

そんなカウンターの内側で忙しなく動き回る職員や順番待ちで混雑するカウンター外側の利用者たちの様子はどことなく元の世界の"市役所"等の施設を彷彿とさせる。



なんか懐かしいかも…。



もう一度、案内板をよく見てみる。

新規労働員(冒険者)・依頼人登録、ギルドカードの更新・再発行、依頼受付、依頼報告、ギルドランクの確認、報酬の受け取り等、多くの窓口に分割されているみたいだった。




…ん?他の窓口に比べたら混雑の少ない新規登録窓口は一番奥に設置されてるのか〜。

まぁ、自然とそうなるよね〜。




キョロキョロと物珍しさに辺りを見渡すあたし。

そんなあたしにフラウさんが苦笑している気もしたが…。

"初"ギルドという未知の体験をしている今のあたしはそんな些細な事なんて気にもならないくらい興奮していた。

建物も勿論、珍しい。

けれど、先程から自分の目がいってしまうのはここの"利用者"である"冒険者たち"にだった。

皮鎧や甲冑に身を包み、剣を腰に提げている者たちやローブに身を包み杖等を持つ者たちの姿―…。



うわー…リアル冒険者だよ!!

剣持ってるし!!



「リン様、まずは登録をされませんか?」



「へ?あ、うん。そうだね」



うっかり当初の目的を忘れてた。あはは…。



フラウさんと共に(とはいっても、やっぱりフラウさんは右後方をついてくる)奥の方にある新規登録窓口へと向かう。

窓口に向かう間、じろじろとこちらを見詰める不躾な視線を感じた。

……それも、1人や2人ではない。



女の子が2人だけで来るのが珍しいのかな?

それに、フラウさんって美人だしねー…。



若干の居心地の悪さを感じつつ。

あたしたちは新規登録窓口に着く。

そこは順番待ちの利用者の姿もなく他の窓口に比べたら閑散としていた。



「すみません、ギルド登録をしたいのですが」


カウンター内で何かの資料に目を通していた女性に声をかけてみる。



「いらっしゃいませ。新規登録ですね。ありがとうございます。まずは、こちらの用紙に必要事項のご記入をお願いいたします」



あたしたちの姿に気がついた女性職員は、にこやかに登録用紙らしき紙を2枚渡してくれる。

少々目の粗い紙だが、この世界ではこれが普通なのだろう。



「ありがとう」



カウンターの近くにあった机で慣れない羽根ペンに手間取りながら必要事項を埋めていく。

ふと気になる項目があったあたしはチラリとフラウさんの方を見てみる。

スラスラと慣れた様子で必要事項を埋めているフラウさん。



「フラウさん、職業って項目どうしよう」



「魔術師、でよろしいかと。もしくは…剣士でしょうか」



うぅーん…。

ひとまず魔術師でいっか。

魔術師が剣を使っちゃいけないって事もないだろうし…。



【名前】アリス

【年齢】19

【職業】魔術師

【属性】火

【特技】なし




……痣ついちゃうかな?




「書き終わられましたか?」



「うん。フラウさんの見せてもらってもいい?」



「はい。どうぞ」



「ありがとう」



フラウさんから手渡された登録用紙を見てみる。



【名前】フラウ

【年齢】17

【職業】槍使い

【属性】水、風

【特技】共通語、リテ語、セルシュ語、レーヌ語、クルト語、詠唱破棄



「フラウさん、この特技のとこにある共通語やリテ語とかって…?」



「あぁ、それはですね…。この世界では全部で8つの言語が各地で使われているのです。トゥーリアやルシオンは共通語を主に母国語として。隣国リスタニアがあるここから南方の地域はリテ語を母国語として使っております。他には北方ではセルシュ語、西方ではレーヌ語、東方ではクルト語が主に使われており、エルフやドワーフや亜人が好んで使う精霊語があります。それと、なかなか私たちでは聞く機会がありませんが竜人が好んで使う古代語や神語があります。……学ばざる得ない場合や自ら進んで学ばない限り他国の言語を使えるようにはなりません。ですから、他国の言語を使える者はどこでも重宝されるのですわ」




……スゲー…。

精霊語とか古代語とか神語とか…めっちゃファンタジーだし!!

しかも、エルフやドワーフや亜人や竜人とか!!

みーたーいー!!

あーいーたーいー!!

はーなーしーたーいー!!



「そうなんだ…」



「えぇ。ですから、リン様も特技の項目に共通語と記入される事をオススメしますわ。トゥーリアではあまり意味はありませんが他国では重宝される事もございますし」



フフッと楽しそうに笑いながら教えてくれたフラウさんに促され、あたしも特技の項目に共通語と記入。

なんかそれだけで自分の能力があがったみたいな気がして嬉しくなった。

というか、よくよく考えたら"知識"のお陰で全ての言語が使えるのではないだろうか。

その可能性にいきつき少し悩む。






結果、あたしはその可能性を見送った。



記入しといて使えなかったら恥ずかしいし。



「では提出しましょうか」



「うん」




「…アリス様とフラウ様ですね。ご職業は魔術師と槍使いですか。では登録させていただきますのでこちらの装置に手を置いてください」




「…"アリス様"からどうぞ」




『アリス』と職員が呼んだ為、フラウさんもそう呼んでくれたらしい。



「ありがとう」



女性職員が取り出した真っ黒い台に拳大の水晶がのせられたような装置に少し緊張しながら手を置く。



装置に手を置いた瞬間―…。



ポウッと水晶の中に虹色の光が現れ…。

その光が徐々に形を変えていきクレジットカード大の大きさになったと思ったら水晶からゆっくりと出てきた。

それを女性職員が慣れた動作で手に取った瞬間、光は飛散し半透明のカードが現れた。



「はい、登録完了です。お疲れ様でした。一応、間違いがないか確認をお願いします」



手渡された半透明のカードには名前と年齢、職業等、登録用紙に記入した内容の他にギルドランクが金色の文字で表示されている。



「はい。間違いありません」



「わかりました。後々、特技が増えたり属性が増えたりした場合は申し出ていただければ内容の変更も出来ますので遠慮なくおっしゃってくださいね」



「はい。ありがとうございます」



「では、お次はフラウ様ですね。どうぞこちらへ」





フラウさんも無事登録が終わり、あたしたちは職員からギルドの説明を聞かされ(フラウさんの説明と大差無い)、更に詳しく書かれた冊子をもらった。



うふふ…。

これであたしも冒険者の一員!!



「アリス様、何か依頼を受けて帰られますか?」



「うん!!」



冒険者になって浮かれ始めていたあたしが、つい、フラウさんの問いかけにも元気よく返事してしまっても仕方がないと思う。




…うん。

仕方がない。




クスクスと笑いながら「では、そうしましょう」と、快諾してくれたフラウさんと共に一番人だかりの多い場所へと向かう。

依頼内容の書かれた紙が所狭しと貼られた掲示板。

あたしとフラウさんも依頼を選ぶ為に掲示板を見詰めた。



「色々あるね。ガルフ討伐…、商隊の護衛…、ルクル草の採取…」



「初めての依頼ですし…、ルクル草の採取にしませんか?ランクもGランクですし」


近くにあった依頼書を読み上げていたあたしにフラウさんがそう告げる。



「それもそうだね。フラウさんはルクル草がどんなものかわかる?」


掲示板からルクル草の採取依頼を取りながら問いかけてみる。

"知識"により、どんな形状でどんな効能があるのかは理解出来たが本物を見たことがないので少し不安だ。



「はい。実家に姉の薬草園があるので実物を見たことがあります」



「良かった。もし、あたしが間違って違うヤツを採取したら教えてね」



「はい。お任せください」



クスクスとお互い笑いあいながら依頼を受ける為に依頼受付窓口へと向かう。

依頼受付窓口で依頼書とギルドカードを提示し手続きを済ませると宿屋に一旦戻る為にギルドを出る。



「うーん、シャバの空気がうーまーいー。依頼の期限は3日後かぁ〜。なんかワクワクしちゃう」



「フフッ…。"トネアの森"なら王都からすぐですし、頑張って依頼達成しましょう」


じろじろと見られて居心地の悪さを感じていたあたしが、ギルドから出た際の第一声に苦笑しつつもフラウさんが答えてくれた。

お城から脱出してきたのが朝だった為、まだまだ日は高い。

喧騒の中を"初依頼"を受けて若干浮き足立ちながら進む。

ルクル草が群生しているのはここから程近い"トネアの森"と呼ばれている場所らしく。

あたしたちは自分たちの装備等を整え次第、出発する事にしたのだ。



凄いワクワクする〜。

武器とか何にしよっかなぁ〜。うふふ…。



あと数メートルで宿屋に着くという所で。

あたしたちは見知らぬ男性に声をかけらていた。



「そこの素敵なお嬢様方…」



最初は自分たちに声をかけているのだと気がつかなかった。

けれど…。



「つれない事をしないでください…」


そう言って彼は、あたしたちの進行を妨げるように立ったのだ。







…は!?

何!?

つか誰!?


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