第12話 旅は道連れ…
「…リン様、リン様さえよろしければ私の実家にいらっしゃいませんか?」
あたしを1人にしてくれる為にメイド長の所へと行っていたフラウさんが部屋に戻って来て早々にそうあたしに告げた。
その表情はどことなく強張っている。
「…え?」
姿見の前で凹んでいたあたしはそんなフラウさんの様子に戸惑ってしまった。
「……先程のフォルディモア様たちのお話からしてリン様がここに居らっしゃれるのは多く見積もっても数日だと感じました。…このままでは、間違いなくあの変た…ゴホン…失礼いたしました。…このままでは、間違いなくジュドー様がリン様を養女として迎えられるでしょう。…そうなれば私がリン様とお会いする機会も殆どなくなってしまうような…そんな気がするのです。………ご実家に帰れないと聞かされた直後で動揺されているのは重々承知しております。……私の所為で更に混乱されているのもわかっております。…ですが、どうしても申し上げたかったのです。……リン様さえよろしければ我が家にいらっしゃいませんか?」
………あたしの聞き間違えだよねー?
やだなぁ…、あたし疲れてんのかなー。うふふ…。
フラウさんの口から聞き捨てならない単語が飛び出しかけた気がするー…。
………確かに、このまま逃げ切れなければ間違いなく、あのロリコン将軍に囲われてしまいそーだよねー…。
なんかスゲー興味持たれてたみたいだしー…。うぅ…。
…でも――…。
「…ありがとう、フラウお姉ちゃん。リー、凄く嬉しい」
「では――…」
「でもね、リーは、この世界を見てみたいの」
お礼の言葉を口にしたあたしにフラウさんの表情は、わかりやすいくらい明るくなった。
そんなフラウさんの言葉に被せるように、あたしはフラウさんが望んでいるものとは全く違う言葉を返す。
「…そんな…。お一人では危険ですわ」
ごめんね、フラウさん。
でも…。
でもね、あたしには今後の自分の豊かな食生活の為にも様々な調味料を入手するという果たさなければならない重大な使命があるのっ!!
フラウさんと離れるのは凄く寂しいけど…。
「大丈夫だよ!!これでもママに少しは鍛えられているし!!それにママから貰ったお守りもあるからリーは大丈夫!!」
「…ですが…」
「フラウお姉ちゃん、ごめんなさい。でも、どうしても見てみたいの。…お家に帰れないって言われて凄く悲しかった。けどね、もしかしたら知られていないだけでオジサンが言うより、もっと簡単にお家に帰る方法があるかもしれないでしょ?だから、リーは探したいの。…ワガママ言ってるのわかってる。でも、どうしても探したいの。……だから、リー、フラウお姉ちゃんには応援して欲しい。…ダメ、かな?」
なお渋るフラウさんに、あたしは渾身のラブリーポーズでお願いする。
…その際、想像具現で瞳を潤ませておいた。
さー、どーだー!!
生前のあたしなら即KOな代物だよー!?
「っ…、わかりました…。私はリン様を応援いたしますわ」
「ありがとう!!フラウお姉ちゃん!!」
「……ですが、お一人でというのはどうしても了承しかねます。…ですから、私もお供させていただきますわ」
「…へ?」
はい?
…お供させていただきますわ?
…………………っ!?
「えぇっ!?ダメだよ!!だって、フラウお姉ちゃんには、お仕事があるでしょ!?」
「まぁっ!!私なんかの事まで気にかけてくださるのですね…。ありがとうございます。ですが、大丈夫ですわ。なんの問題ありません。早速、メイド長に伝えてまいります」
意気揚々。
まさにそんな感じであたしの前で目をキラキラさせているフラウさん。
「えぇっ!?でもっ――」
流石にそこまで迷惑かけらんないよー!!
「……リン様。この世界の常識等を知っている者が居た方が何かと便利ですよ?それに…私、決めたのです。何があってもリン様についていくと。反対されてもついていきます。ですから、リン様は気になさらないでくださいね。では、メイド長の元へといってまいりますわ」
そう告げるや否やフラウさんは一礼して部屋を出ていってしまった…。
えー…。
いーのかなー…。
あたし的には助かるけどさー。
 




