ぷろろーぐ
誤字脱字等あった為、改訂しました。
多少加筆してありますが内容は変わってません。
残酷描写のある話には一応わかるように※がついています。
気付いた時には既にあたしはフワフワと真っ白い空間に浮かんでいた。
上を見ても下を見ても左右を見ても何もない。
浮かんでいるあたし以外、存在が見当たらない不思議な空間だ。
ここはどこだろう…。
ぼんやりと、そんな事を思いながら、あたしはこんな状況でも自分が落ち着いている事に気が付く。
いつもの自分ならこんな風に落ち着いている筈が無い。
そうは思っても何の感情も起きないのだ。
それを不思議に思い首を傾げる。
その時―…。
『気が付いたか。憐れな迷い子よ』
真っ白い空間に突如、眩しい光が降臨した。
は?
迷い子?何それ?
『…迷い子とは異世界からこちらの世界へと次元を越えて来た存在の事。そなたは何らかの力によって魂だけ、こちらの世界へと越えててきたのだろう』
眩しい光はゆっくりと形を人型に変えていく。
短めに整えられた銀糸のような髪、紺碧の瞳、鼻筋の通った高い鼻、少し薄めの唇。
人の力では決して造れそうにない精巧な人形のような玲瓏な容姿に一瞬、目を奪われてしまう。
声の感じからして目の前の人物は男性なんだろう。
今更だが、あたしは自分の頬を抓った。
…ちゃんと痛覚がある。
…うわぁー、そうなんだー。
それはダルいなー…。
どうしたら戻れんの?
…それより、あたし、口に出してない筈なんだけど。…何で分かんの?
『…迷い子が元の世界へと戻る事は叶わぬ。…戻そうとしても何らかの力で妨げられるのだ。…ここは我の空間。ここを訪れるモノの思念は我には全て筒抜けになる』
あ、そうなんだ。
便利だねー?
………それより戻れないって聞こえたんだけど!?
『…迷い子は戻れぬ。それは変えようのない事実。そなたには酷かもしれぬが…』
戻れ…ない…?
マジで?
『…マジ、だ』
嘘…。
まだ見てないDVDとかマンガとかあるのに!?
…戻れないの!?
『…それらが何なのか分からぬが…戻れぬ』
…マジかよ…。
………まぁ戻れないんなら仕方ないや。
あたし、これからどうなんの?
ここで暮らすの?
『…いや、ここに置いておく事は出来ぬ。ここに居た場合、あと数時間も経たぬうちに、そなたは消滅してしまうだろう』
消滅!?
マジで!?
いやいやいやいや、流石に消滅はちょっと…。
『…残念ながらマジ、だ。…そこで、だ。我の力でそなたに魂を入れる器と身を守る能力を授けよう。出来る限りそなたの要望には応えるつもりだ。…どうする?』
お願いします!!
消滅はパスなんで!!
…それより今更なんだけど貴方が現れる迄、感情が起きなかったんだけど?
『うむ…。ここでは感情の起伏が起きぬようになっておる。現状を受け止めきれず狂ってしまっては素も子も無いからな。…さて、まずはそなたの魂を入れる器を創ろう。何か要望はあるか?』
そっか…。
んー…、背は今と変わらないくらいがいい。
容姿は10人中8人が目を奪われるくらい整ってると嬉しいかなー。
髪は漆黒で腰より少し下くらいの長さでサラサラストレートね。
んで目はパッチリ二重で瞳の色はアメジストみたいな紫。
スタイルは全体的にやや細めで、胸は大きめがいいなぁ…。
『………こんな感じか?』
あたしの目の前に要望通りの姿の16才くらいの少女が現れた。
…おぉ、…言ってみるもんだーね。
瞳の色は瞼が下ろされている所為で見えないけど、きっと要望通りなんだろう。
『…これで良いか?良ければ能力を授けたいのだが』
いいも何も…最高っ、です!!
うわぁ…、憧れのお人形さんみたいな女の子だー!!うふふ…。
『そ、そうか。…では、能力はどうする?』
うふふ…。
あ、そうだ。
忘れてたけど、この世界って魔法とかあるの?
あと、モンスターとか居たりする?
『…そなたが言う"魔法"も"モンスター"と呼ばれるモノも存在する。魔法は皆が使える訳では無い。魔法を使うには魔力が必要だからな。あと、モンスターは人や家畜等を襲う。…まぁ、モンスターにはモンスターなりに役割があるから人類が滅亡の危機にならぬ限り我は手出しするつもりはないが。…話が少しズレてしまったな。他に気になる事はあるか?無ければ能力を授けたいのだが』
ふーん…そうなんだ。
能力…、能力ねぇ…。
例えば想像した物を具現化したりとか出来る能力とか、そういう能力でもいいの?
『…かまわぬ。それで良いか?他に必要な能力はあるか?』
えっ!?
想像具現って授けてもらえるの!?
うわぁ…、言ってみるもんだねぇ。
あとは魔法使いたいし魔力かな〜。
勿論、全ての魔法が使えて尚且つ魔力量は底無し、で!!
あとはー、身体能力も高めがいいな。魔法だけじゃなくて剣とかも使えた方が生きていきやすいだろうし。
『…分かった。授けよう。他に必要な能力はあるか?』
うーん…、もう思いつかないや。
『…ふむ。それでは最後にこの世界の"知識"を授けよう…。これで、そなたはこの世界、全ての言語が話せるし書ける。それと生きていく為に必要な事や魔法等に関しても思い浮かべるだけで理解出来るようになっているはずだ』
そっかー。
ありがとう。
そういえば、どうやってここから出るの?
『…今、丁度、勇者召喚なるものを行っている国がある。そこに我が送り込もう。召喚されて能力を活かし勇者として生きるも良し、勇者になる事を拒んで生きるも良し。それは、そなた次第』
はぁっ?
"勇者"〜?
無理無理、興味無い。なれるなら"魔王"の方がいいよ。
面倒は嫌だなぁ。
…あ、そうだ。
体を若返らせる事って出来る?
『うむ、出来るぞ』
良かったぁ!!
じゃあさ、5歳くらいに若返らせてくれない?
『…これで良いか?』
目の前に在った器の姿が少女から幼女へと変わる。
おぉ!!スゲー!!
色々と、ありがとう!!
これで上手く生きていけるよー。
『…そうか。…最後に、伸び伸びと生きよ、憐れな迷い子よ』
そう彼が告げた瞬間、あたしは眩しい光に包まれた。
……あ、名前を聞くの忘れてた。
ま、いいや。