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すたんどあっぷ キャラクターストーリーズ  作者: お茶っぱ
カイさんと別れのスカーフ
8/13

心の天秤が釣り合う事を現実は待ってくれない

「今回の探索には、現在動けるものは全員参加でマナクリスタルの採掘を行う。件のフォレストジャガーも魔獣の影響が薄らいできたためか、以前ほど出現報告が上がっていない。」


 今回の探索について先生達から説明があった。

 最近状況が好転してきたこともあって、みなここを乗り越えられたら何とかなるという気持ちで盛り上がっている。

 この探索には、回復役としてティアが同行を志願し許可され久々に3人で活動することになった。


 行動範囲を広げるため、活動時間が長くなることから残っている回復アイテムだけでは足りない可能性があり、私たちは生徒の中では最上位のパティーだったため誰も異を唱えることはなくむしろ自然にすら思えただろう。

 しかし、ティアは密かにレリックのために解呪用のアイテムを入手することを考えており、彼女が求める解呪用の素材というのはフォレストジャガーのレアドロップ『森の息吹』だという事を私たちは知らない・・・。

 

 出発の前日だっただろうか、教員の一人に呼び止められ、今回の探索について軽く説明を受ける。

 

「カイ君。基本的には私たちが索敵と採掘を行うけど、その時のサポートを君たちにはお願いしたい。」

「サポートですか?」

「そうだ、具体的に言えば採掘したマナクリスタルの運搬を君たち生徒に頼みたい。魔物たちの狙いは我々冒険者だからね。最悪襲われる事になったとしても我々教員が引き付けるからその間にマナクリスタルを持ち帰って欲しいんだ。」

 

 そして、先発隊として先生たちがダンジョンに向かい、その時点での経路の安全が取れたため後発隊として私たちも採掘ポイントへ向かうことになる。

 

「知っての通りだが、ダンジョン内の採掘ポイントは合計で5つ。今まではその内の3つで採掘を行ってきた。今回は魔獣の影響が薄くなったことを受けて、残りの2つの離れたポイントにも向かう予定だ。しかし、そこにはどのような状況かわからないため我々教員だけで向かう。君たち生徒は、3つの運搬班と3つの護衛班に分かれて普段の採掘で使っている3つのポイントにそれぞれ向かってくれ。」

 

 集められた生徒たちに向けて教員が、運搬班と護衛班に分かれるよう指示する。

 私と同様、ある程度の生徒は教員からどちらの班で行動して欲しいか伝えられていたようで班分けはすんなりと決まり、私とギルそしてティアの3人は3つの採掘ポイントの中では一番遠いポイントとなるCポイントへ向かうことになった。

 Aポイントには戦闘能力の低い教員と生徒たち、Bポイントも似たようなものだ。


 私たちが向かうCポイントだけは、実力派が揃えられた。

 なぜなら、そこに例のフォレストジャガーが出現するからだ。

 AとBのポイントまでは問題なく進むことができ、やはり魔獣の影響はなくなっているように感じられる。


「これなら、狂暴化していた魔物たちも元に戻っているかもな。」


 ギルがそう呟くほどにはダンジョンはかつての状況を取り戻しており、私もそう感じていた。

 それなら、そのまま出てこない可能性だってある。

 私はそう思い始めていた。


「よし、ここも今のところは問題なさそうだ。早速採掘を始めよう。」


 Cポイントに到達した我々は、教員たちと周囲の警戒にあたりつつ採掘を手伝う。

 拍子抜けするほど何もなく、結構な量のマナクリスタルが採掘できた。

 そして、教員たちが最後のポイントに向かい、我々はマナクリスタル運搬の護衛に回る。


「ではカイ君。護衛の方を頼んだよ。これだけあればもう十分だろうし我々も次の採掘ポイントでの採掘に無理をするつもりはない。無謀と判断したら速やかに退却して君たちに加わるつもりだ。」

「わかりました。先生たちもお気をつけて。」

「ああ、では行ってくる。」


 教員たちと別れ、マナクリスタルの運搬チームを警護しながら移動を開始して少ししたとき、それまで黙っていたティアが行動を開始した。

 私はそれまでに気が付くべきだったのだ。

 彼女は、彼女の目的のためにそこに居た事に。


「まって。」

「どうした、ティア。魔物の気配か?」

「・・・違うわ。」


 彼女の瞳には何かしらの覚悟がある事をその時点で感じており、それゆえの違和感も瞬時に理解していたが私はそれに気が付きたくなかった。


「フォレストジャガーを探しましょう。」


 彼女が何を言っているのか、私は理解していたが理解したくなかった。


「何を言ってるんだ。今はマナクリスタルを運ぶのが先決だ。わかるだろ? 探すならその後にしよう。もし今遭遇したらせっかく採掘したマナクリスタルが運べなくなるかもしれない。」

「レリックを救うには、フォレストジャガーのレアドロップが必要なの。」


 彼女の目的がフォレストジャガーのレアドロップなら、彼女からしてみればフォレストジャガーがダンジョンボスになっていた方がいい。

 ダンジョンボスはレアドロップの率が高くなったり、通常はその魔物からドロップしないようなアイテムが出ることがあるのだから。

 

「そうか、だから君はここに。どうして言ってくれなかったんだ。」

「言えば、カイは私に参加させなかったでしょ。」

「そんなことは・・・。」

「嘘よ。ここ最近ずっとフォレストジャガーの話を聞いて回っていたんでしょ。アナタあの魔物と何かあるじゃないの?」

「それは、だって、危険な魔物なんだ、当たり前じゃないか情報を収集するのは。」

「じゃぁ、どうして右足にスカーフを巻いていたかどうか、そんなことまで確認していたの?」

「いや、それは・・・、前にダンジョンで戦ったフォレストジャガーが右足にスカーフを巻いていたから、もしかしてそいつなのかなって。そうだったら仕留め損ねた俺にも責任があるから。」

「カイ。アナタ嘘が下手過ぎよ。嘘ついてるとき、瞬きの回数がすごく多くなるのよ。あとやたらと説明が多くなるの。」


 ティアは悲しそうに俯いた。

 それは、デミーに来てパーティーを組んで一緒に目標に歩んできた仲間に裏切られたという悲しみか、仲間を助ける事よりも魔物を優先しようとした私への怒りかだったのか。

 

「カイ。私はレリックを助けたいの。マナクリスタルが皆に必要なのはわかってる。だけど、マナクリスタルじゃ彼は救えない。彼が私たちのためにどれだけ自分を危険にさらしてきたか、カイだってわかってるでしょう?」

「それは、そうだけど。」


 どうすべきか迷っている私に、運搬担当のモスボーが声をかけてきた。


「カイ。ここまでの道中、ほとんど魔物に遭遇しなかったし、たぶん僕らだけでも大丈夫だ。君たちほどじゃないけど僕らだって戦う事はできる。」

「そんな、いくらなんでもここはダンジョンだぞ。危険すぎるよモスボー。」

「僕らだって、レリックには何度も助けられた。やっぱり僕らだけ助かってもね。」


 そこに、ギルも加わって来る。


「なら、カイ。お前はモスボー達についていってやれ。俺はティアとここに残る。それなら、魔物が追跡してきていないかという警戒で護衛もできるし、先生達には魔物に襲われたから俺とティアが囮になって、お前がモスボー達の警護を続けたって言えば理屈は通るだろ。」


 これはもうここに居る誰一人、私が説き伏せることは不可能だった。

 

「わかった。わかったよ。」

「じゃぁ、カイも協力してくれるのね!」

「条件がある。一度Bの採掘ポイントまでは護衛を続けよう。Bの採掘ポイントまでもどったら、そこでモスボー達と別れて俺たちだけでCの採掘ポイントに戻ってフォレストジャガーを探す。それなら、僕らの役目も半分は果たせることになる。」


 どうにかこの案でティアを説得し、B地点までの道を進むことになった。

 私は内心、Bの採掘ポイントまで行ってからC地点に戻るまでに、教員たちがCの採掘ポイントまで戻ってきていることを期待していた。

 そうすれば、そこでこの話は終わりだ。

 

 ティアだって引かざるを得ない。

 私はこの時点ですでに仲間と彼を天秤にかけ、仲間を見捨てる方に傾けていたのだ。

 私たちはBの採掘ポイントを目指し歩き出した。


 ギルの提案で、先頭をギルが進み距離をある程度とってモスボー達運搬チームとティア、また距離を取って私が後方の警戒を務める。

 だが、Bの採掘ポイントに到達したとき、事態は一変してた。

 私にみんなと距離を置いて冷静になる時間をギルは用意してくれたんだと思う。


 しかし、私はとにかくこのままフォレストジャガーが出てこなければいいと祈り願うくらいしかできず、そしてそれはかなうわけもなかった。

 Bの採掘ポイントが見えてきたと同時に、先頭を行くギルがぶ。

 そして現実が目の前にやってくる。

 

「全員構えろ! フォレストジャガーの群れだ!!」

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