責任
何か、何か一つ、そうなっていなかったら。
違う未来があったのかもしれない。
しかし、現実はすべてがそう動いて、望もうともそうでなかろうとも結果はそこにやって来る。
何とか必要最低限のマナクリスタルを確保できるようになってはいたものの、魔物はさらに凶暴性を増していた。
ダンジョンの外でも強力な魔物が出現したという報告もあり、冒険者であろうがなかろうが戦う力を持ったものはその対処に追われるような状況だ。
私たちも、マナクリスタル採掘以外でも何らかの仕事をこなしていた。
それでも何とか、役目を果たせてこれたのは索敵能力にたけたレリックが居てくれたからだ。
彼の卓越した索敵能力によって、私たちは魔物たちの先手を取って戦う事ができ、魔物からの襲撃をかいくぐることができていた。
しかし、そんな彼が特殊なステータス異常状態である呪いに掛かってしまい、その優位性は失われてしまう。
レリックが私たちとは別のパティーに助っ人として参加していた際、メンバーを庇って受けた攻撃で呪いが付加されてしまい、レリックは戦線を離脱せざるを得なくなる。
呪いを解呪できるスキルは希少でティアはレリックを助ける術を探すが、通常の回復系のスキルでは解呪はできず苦しむレリックを看病しながら心を痛めていた。
ギルはそんな二人を見守りながら、他のパーティーと協力してマナクリスタル採掘や魔物退治に対応し続けている。
私は、仲間たちがそのような状況に置かれているにもかかわらず、採掘ポイントを襲う強力なフォレストジャガーの噂が日に日に増えていく事の方が気になってしまい、ギルやティアとの会話をよそに他のパーティーに参加して情報を集め、それが元でギルとの関係がぎくしゃくし出してしまっていた。
そんな折、ついに強力なフォレストジャガーが群れを率いて採掘ポイントで作業中の冒険者を襲ったという報告が入る。
デミーに残された先生方が緊急で会議を行い、先生方と生徒の合同でフォレストジャガーの群れを討伐することが決まった。
生徒側の参加については自主的に参加した者のみ参加となってはいたものの、この状況下では戦えるものはみな戦いに参加した。
私は参加証明を一番最初にした生徒だったため目立ってしまい、それが余計パーティーのみんなとの関係をぎくしゃくさせる。
なぜなら私がその意思を示した理由は、そのフォレストジャガーが彼ではない事を確認したかっただけだからだ。
皆の為とか、そういうものではなかったのに、周りのみんなはそう思ってしまったようで変に評価されたのもつらかったなぁ。
ただあの時のみんなが、そういうヒーローを求めていたのは仕方なかったと思う。
そしてそれが、ろくでもない結末をより最悪の方向へ進めていく。
「カイ。何か気になる事でもあるのか?」
そうギルが私に聞いてくれたこの時が、あの結末を少しでも変えることができた最後のチャンスだったんだろう。
「いや、特にないけど、やっぱり気が滅入ってるのかな。やたらとみんなが期待してくれるし、レリックの事も。」
「なら、少し休めよ。ダンジョンには俺が行く。」
「そうはいかないよ。ギルだって結構な量の仕事をこなしてるじゃないか。」
「お前ほどじゃない。せめて、ちゃんと飯くらい食べていけよ。」
そう言って去っていくギル。
私は、ギルの忠告を無視してダンジョンへの探索に向かうパーティーに同行した。
私がそうするのは、もし彼が冒険者を襲っているのなら、その責任を私は取らねばならないと思っていたからだ。
しかし、私がダンジョンに居る間、フォレストジャガーは襲ってくることはなく手ごわい魔物は確かにやって来るものの、十分に対処は可能だった。
そういう事実がまた変な噂を呼んでしまい、フォレストジャガーが私に恐れをなして出てこないのだというのが定説になる。
しばらくして、ようやく各地で魔獣の影響が薄まり、このチャンスにマナクリスタルの大量採掘を行う事になった。
そして、私はヴェルナと再会を果たすことになる。




