美しい命にふさわしい名前を
アカダイショウの毒牙を防ぐ方法がなく万事休すと思われたその時、風のような速さで木と木の間を加速しながら駆け抜ける何かが、アカダイショウの牙が届くその前にアカダイショウの体を切り裂いた。
「シャ…!?」
何が起きたのかわからぬままだっただろうアカダイショウの体が消えていく。
「た、助かった・・・?」
動いたことで毒の回りが早くなり、私はそのままその場に倒れ込んでしまった。
しばらくすれば、痺れは取れるがそれまでにまた襲われないとは言い切れない。
うっかり忘れてしまいそうになるが、ダンジョンとは常に危険な場所なのだ。
目を開けることも苦しくなるような身動きの取れない中、何かが近づいてくる気配を感じる。
自分の力を過信し、ダンジョンを甘く見てしまった自分には当然の最後かもしれない。
もうすぐ卒業試験もあるのに、パーティーに欠員を出させて皆には迷惑かけてしまうな。
そんな事を考えていると、頬が何かくすぐったい。
うっすら目を開けてみるとそこには、彼の姿があった。
私が目を開けた事に気が付くと、私の顔の近くに置いた紫色の小さな木の実を右足でちょんちょんと突っつく。
「毒消し…、そうか、アカダイショウからドロップしたのか。」
何とかして口を開くと、彼が木の実を口の中に運んでくれる。
どうにかして飲み込むと体の毒を中和して何とかが動かせるようになった。
「ふぅ…、助かったぁ…」
まだ、体の自由は完全ではなかったが体を起こすと、彼が膝の上に載って来る。
どうやら、私を心配して状態を確かめているようだった。
私は彼をギューッと抱きしめ、心配ないことを伝える。
「ありがとうな。お前のおかげで命拾いしたよ。ブリッツストラッシュがちゃんと使えてればこんなことにならなかったのになぁ。」
この時の私は、ストラッシュに雷の属性を上乗せして放つブリッツストラッシュのスキルをうまく使えておらずそこで悩んでもいた。
強すぎるスキルの威力を私自身が恐れていたせいだったかもしれない。
彼に、怖がるなと言っておきながら私も自分の力を怖がっていたのだ。
彼は私の無事を確認すると、誇らしそうにしていた。
そして私に、反動を使って加速し木と木の間を駆け抜けていく姿を見せてくれる。
まだまだ反動を活かしきれてない感じはしたが、その姿は解放されて自由で躍動感にあふれていた。
「ははは、なんだよあんなに怖がってたのに。」
なんだか先に壁を超えられてしまった様で少し羨ましかったけど、もっとずっと嬉しくて。
魔力を帯びた淡い輝きと共に飛び回る彼の姿は、とても、とても美しかったことを今でも覚えている。
「蹴る前に、一瞬グッと反動を溜めてから蹴るんだよ。まだまだだぞそれじゃ。」
そう言いながら立ち上がり、いつかこの子がもっと速く森の中を縦横無尽に駆け巡れるようになったら、その時は『ヴェルナ』昔の言葉で守護を意味する名前をあげようと思った。
気に入ってくれるだろうか・・・




