自分で自分は見れないものらしい
「先生はいりますよ。」
シルシア先生の部屋に入ると、予想した以上に物が散らかっていた。
本だったり、研究中の素材だったり、何かのアーティファクトだったり。
先生はいつも言っていた『わからないものを探しているんだ』と。
先生は博識という何でもかんでも見た瞬間にわかってしまうスキルを持っていて、世の中の事が全部わかってしまって人生がつまらないらしい。
だから、わからないものをこの世に求めているそうだ。
まぁ、つまり、とんでもない変人という事です。
ぼさぼさの白髪に、丸い眼鏡をかけたいかにも学者みたいな風体だ。
身長が割とあるのでひょろっとした印象を受けるが、割と体幹はしっかりしてる。
「やぁ、カイ君。君は今日も優秀だね。明日はどうかわからないけど。」
「なんすかそれ・・・。おれ明日グレるんですか?」
「う~ん。そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。なんか最近魔力の消耗が激しいというか何か干渉されているような感じで、よく見えないんだよね。」
「体調悪いんですか?」
「あ~。そうなのかなぁ。」
「いや、自分の事くらいわかるでしょ?」
「それがさぁ、自分って自分で見れないじゃない? だから僕、自分の事はあんまりわからないんだよねぇ。」
私はよくシルシア先生と会話をしたが基本的に先生の言っていることはよくわからなかった。
そのよくわからなさが先生の魅力なのかもしれない。
「まぁ、なら奥の部屋で昼寝でもしててくださいよ。部屋の掃除しておきますから。」
「うーん。それじゃぁ薬草の材料取ってきてよ。」
「薬草ですか?」
「そう、ミオティ草。」
「え、あれ薬草だったんですか。」
ミオティ草というのは、ダンジョンによく生えている青くてきれいな花をつける植物だ。
ダンジョンの外にも生えている場所がある。
そういう場所は大気中の魔力が安定していることが多く、安全なことが多い。
「実はね、ミオティ草には大気中の魔力を蓄える性質があるんだ。魔力を蓄えたらそれだけ奇麗な青色の花びらになる。」
「あーそういえばたまにダンジョンで奇麗なミオティ草の花が咲いてることありますね。」
「そうそう、じゃ、たのんだよ。ちなみに。ミオティ草は花を絞って魔力を抽出して使うんだ。飲めば体調を整えてくれるし、塗り薬として使えば外傷を治してくれる。効果は蓄えられている魔力によるけどね。なんと魔物にも効果があるんだよ。」
「へー。すごいですね。」
「そうなんだよ。たださぁ、絞ると無茶苦茶臭くて、飲むととんでもなくマズいんだ。匂いが付くからそこの布袋とスカーフを持っていきなよ。」
そう言って、ふらつきながらシルシア先生は布袋とスカーフを渡してくれた。
このとき先生は『よく見えない』と言っていたが、『何』なら見えていたのか問い詰めたくはある。
私にその資格はないけれどね。




