履き違えた覚悟のもたらすもの
「ガァァァァ!!」
彼は再び加速を開始する。
どうすべきか逡巡している私の元に、ギルとティアが駆けつける。
「大丈夫、カイ!!」
「よく持たせてくれたな、カイ!!」
二人が牽制の攻撃を放ってくれたことで、彼は一旦距離を取らざるを得なくなった。
この時の私はいったいどんな顔をしていたのだろうか。
「どうしたカイ。安心しろ、俺たち3人ならきっと勝てる。レリックに土産話を持って帰ってやろうぜ!」
「ええ、あれを倒してレアドロップを手に入れれば彼もやっと治してあげられるわ。頑張りましょう!」
駆けつけてくれた二人は威勢の良い言葉を発していた。
しかし、二人とも体が震えていたし、明らかに気負っているのが分かる。
ダンジョンに通っているとはいえ、それは他人に安全を確保してもらった状態での話。
今このダンジョンに置いて、自分の身の安全を保障してくれる存在は自分しかいない。
彼らは今初めてその状態に突入し、その恐怖を踏み倒して私のところまで来てくれたのだ。
「ああ。わかってる。」
いったいこの時の私は何を分かっていたのだろうか。
何を分かったつもりだったのだろうか。
「覚悟を決めよう。」
私は二人にそう告げた。
「生きて帰る。考えるのはそれだけでいい。」
一呼吸おいて二人は応えた。
「ああ。そうだな。」
「ええ。もちろんよ。」
二人はもう震えてはいなかった。
いい仲間を持ったと思う。
先に飛び込んだのはギルだ。
ギルは片手剣を使う剣士で、盾を装備している。
盾を前方に構えて剣の出所を隠しながら、フォレストジャガーに向かって突進していった。
そうしてフォレストジャガーの死角となったギルの背後を利用して私も距離を詰める。
フォレストジャガーがギルの背後に回り込もうとしたとき、そこにはすでに私の間合い。
右か左か、どっちに回り込むのか私は注意深く魔力の動きを探る。
その時、フォレストジャガーはひたすらエーテルを四肢に溜めて初速を高めようとしていた。
なにか嫌な予感がした。
「ギル! 気を付けろ、何かある!!」
私の忠告に、ギルが攻撃よりも防御を優先して身構えた。
その瞬間。
彼は風のような速さで、ギルと私の足元を駆け抜けていく。
「きゃあっ!!」
彼の狙いはティアだった。
彼女が回復をしていたのを見て、そこから仕留めに行ったのだろう。
戦い方として、正しい判断だ。
フォレストジャガーの鋭い牙と爪がティアの肩を抉って大量の血が流れている。
そのままの勢いで背後にあった岩を使い、さらに速度を増したフォレストジャガーの追撃がティアに向かって放たれようとしていた。
その瞬間、私の体は動いていた。
「我、風よりも速き者。雷を纏う者。我が身よ、我が槍よ、雷となりて目の前の敵を貫け。ブリッツストラッシュ!!!!」
フォレストジャガーの牙と爪がティアに届く前に、その体を私の槍が貫いた。




