彼は敵としてそこに
彼ではないフォレストジャガーについては、数頭見逃しティアとギルに任せしばらくの間フォレストジャガーの群れと戦闘を繰り広げた。
「はぁ、はぁ、これで最後か。」
私は何とかフォレストジャガーの群れを討伐し、安堵していた。
この群れには彼はいなかったからだ。
きっと、もういつもの穏やかな彼に戻ってどこかで暮らしているに違いない。
それから急いでギルたちの元に向かった。
群れを倒したがレアドロップは落ちなかったのは残念だが、あれだけの群れを倒した以上ティアも納得せざるを得ないだろうし、ティア達の方で討伐したフォレストジャガーからレアドロップが手に入っているかもしれない。
しかし、そんな都合のいい事が起きるほど、この世界は優しくも温かくもない。
「カイ! 来てくれたか!」
「間違いないわ、この強さはダンジョンボスよカイ!」
そう。
間違いがない。
間違いようがない。
そこには彼がいた。
あのスカーフが足に巻かれている。
状況は最悪だった。
「カイ、私はモスボーの手当てに回るから、ギルと一緒にもう少し時間を稼いで。」
「・・・くっ、わかった!」
モスボーは肩をやられていた。
鋭い爪で抉られたのだろう相当のダメージのようだ。
「ギル、一旦下がれ。俺が防ぐ。」
「カイか! すまん。ポーションで回復したらすぐに戻る。」
ギルに変わって、前に出た私はいつ以来になるのだろうか、彼とヴェルナと相対した。
「ガァァァァ!!!!」
彼は、激しい殺意を放っていた。
それを跳ね除け盾を構え攻撃に備える。
彼は以前より反動を上手に使える様になっていて、木や岩を使って加速しながら攻撃を繰り出してくる。
「なんてスピードだ。さっきの奴らとはレベルが違う…ッ!!」
通常、初手で相手の機動力を奪う対処を行うのがフォレストジャガーへの一般的な対応だ。
私は以前の経験から魔力を感じて相手の攻撃タイミングを察知しカウンターでストラッシュを打ち込めるようになっていて、先ほどのフォレストジャガーの群れに対してはそれで対処していた。
この時も、当然その対応を行うつもりだった。
頭の中では完璧にタイミングを計っていたが、私は動こうとしたタイミングで動けなかった。
躊躇ってしまったのだ。
遅れて放ったストラッシュは容易にかわされ、右から背後を取られた私は背中に強烈な一撃を受け膝をついた。
「ぐあぁぁ!!!」
一撃喰らってしまったが、それは加速した速度がリセットされるという事でもある。
何とか立ち上がり、私はストラッシュの構えに入った。
加速前の状態なら十分捉えられる。
「随分と速く動けるようになったじゃないか。教えたことが身に付いたようで嬉しいよ…。ヴェルナ。」
彼に助けられた日の事を思い出す。
あれからも一緒に過ごし、ブリッツストラッシュの安定性を高めるために基本技であるストラッシュの習熟度を高める練習に付き合ってもらったりもした。
その際、彼の動き方についてのアドバイスなどもしてお互いにレベルアップをしたことを思い出す。
「なんでだよ。何でダンジョンボスなんかに…。俺の敵になったりなんかしたんだよ!!」
その叫びは、虚空に消え何にも届かず何にも響かなかった。




