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よろしくお願いします。
「それはお前の怠慢だからだろう!もしくはその能力が欠けていたからだ!」
ま、ヴィンセント殿下ならばそう言いますわよね。
「いいえ、教師からは王子妃教育は問題無く終了の言葉は頂いております。王妃様からの終了の許可が下りないだけですわ」
「お前に王子妃としての能力が欠けていると母上が判断したのだろう!」
殿下の隣でユルグ男爵令嬢も大きく首を縦に振っている。
あら。彼女につられたのか?側近候補たちも勢いよくうなずいていますわね。
首振り人形か!!
なんとしても私の過失にしたいのでしょうけれど・・・。
「そうですね。確かに王妃様から見ると、わたくしは王子妃となる資質が欠けているのでしょう」
「やはり貴様自身に問題があるせいではないか」
やっと殿下の言葉を肯定した私に、殿下はしてやったり、と満足気な顔をする。
「ですが、それはソフィア様にもいえる事ですのよ?」
「マリアさん、ひどいっ!自分が王妃様に認められなかったからって」
私を貶める機を逃さない彼女は流石ですわね。
「そうだ!私たちが真実の愛で結ばれていると知れば、きっと母上も認めて下さるに違いない。ソフィアは優しくて愛らしいからな」
優しく愛らしいだけでは、王子妃教育で合格はもらえないと思いますけど?というか、真実の愛などと、ほざいてちゃってますけどいいのかしらね。
これ、殿下自らの不貞をサラッと暴露しちゃっていますわよね?
「殿下。わたくしの王子妃教育が終了したら、わたくしは正式に殿下の婚約者として国中に発表される予定でした」
そう、私はヴィンセント殿下の婚約者として貴族の間では知られています。ですが、実は王子妃教育が終了している事を条件に正式な婚約者とする、という取り決めがされていたのです。
「何だ、お前は私の婚約者候補だっただけなのか?」
殿下、本当に色々忘れすぎじゃないかしら。もう呆れすぎてため息も出ないわ。
「わたくしが王宮に来て半年後に婚約式もしておりますわよ、殿下。ただ国民全体への発表をしていない、というだけです。
まぁ、そこは婚約を解消しますので、もうどうでも良いことですわね。王妃様が終了の許可を出さなかったのは、殿下とわたくしの婚約を認める気がなかっただけですのよ」
「ならば、母上が単にお前に満足していなかった事とソフィアは関係ないではないか」
「いえ、大ありです。王妃様は『平民上がりの庶子』、もっと言えばヴィンセント殿下の伴侶として、公爵令嬢とはいえ庶子風情が王子妃となるのが許せなかったのですよ」
「は?」
「えっ?」
あら。お二人とも仲がよろしいことで。ですが、目を丸くして驚いているだけの殿下とは違って、ユルグ男爵令嬢の方は顔を引き攣らせておりますわね。私にはどうでも良いことですけれど。
「ですからわたくしとの婚約を破棄したとしても、平民上がりの庶子、更には貴族としても下位の位置にある男爵家の令嬢が殿下の伴侶として認めてもらえる訳がないのです」
私の言葉に衝撃を受けている殿下に、私は更に畳み掛けるように言葉を続けた。
「王妃様は隣国の第一王女であり、そのお母様のご実家も王家の筆頭公爵家の由緒正しきお家柄なのだそうですね。
高貴な血を重んじる家門の流れを汲み、王妃様自身もその血に誇りをもち、この国の王族に嫁いでいらしたそうですわ。
ですから、べルージュ公爵の血がわたくしに流れていたとしても、公爵家の侍女をしていたたかが子爵令嬢の娘。
しかも実家からも絶縁され、平民となった女の娘など息子の伴侶としては認められない、と面と向かって言われましたのよ?この学園に入学する時に」
「母上が?まさか、いやっ、でも。ソフィアなら・・・」
私の言葉で青褪めながらもまだソフィア様なら、と口にする殿下ですが、隣に座るユルグ男爵令嬢はそろそろ現実が見えてきたのか、顔色が悪くなってきましたわよ?
「もう国内の高位貴族のご令嬢がたは既にお相手がいらっしゃるので、内々に他国の王族又は高位貴族の中で、殿下のお相手をずっと探しているそうですわ。残念ながらなかなか見つからないようですが」
実はヴィンセント殿下は、他国からの評判があまり良くないのです。王妃様に似てプライドは高いし、高飛車な物言いに加えて、肝心の王子としての能力が低いと判断されているのよ。
気づいてないのは、本人と王妃様だけ、とのもっぱらの噂だ。
幸いなことに、王太子様は国王陛下に似て、大変優秀でお人柄も良いとの評判なので、ヴィンセント殿下のことはそれほど問題視されていないようです。たぶん相手にされていないだけ、ということなのでしょうけど。
「ですが、平民上がりの庶子というのは、確かに見下されたり虐められたりする事は多々ありますわよねぇ」
私が呟いた言葉に何を勘違いしたのか、殿下がニヤリと笑った。この人、まだ私を貶めることができると思っているのかしら?
「やはりお前はそういう考えでもって、ソフィアをいじめていたのだろう!」
まだ言うか。この馬鹿王子!
もう婚約解消しているのだから、後は2人で好きにすればいいじゃない。それとも私を悪役にすれば、男爵令嬢との婚約が認められ、周りにも祝福されるとでも思っているのかしら?
もういい加減私もぶち切れても良いんじゃない?
「私は自分がされてきた事を思い出していただけですが?」
「は?」
『は?』じゃないわ!この馬鹿王子がっ!!
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