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「平民上がりの庶子」と私が言っただなんて、誰が言ったんですか?悪い冗談はやめてください!  作者: しずもり


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3/7

よろしくお願いします。

「何故ならば、わたくしもソフィア様と同じく、平民上がりの庶子だからですわ」



私が発した言葉で辺りが一瞬にして静まり返る。


予想外の言葉だったのか、ヴィンセント殿下は口を大きくあんぐりと開け、隣のユルグ男爵令嬢や後ろの側近候補たちと同じような表情で固まっている。



本当に馬鹿じゃなかろうか。



「はっ?な、何を言い出すのだ貴様は。そんな苦しい言い訳は・・・」



ヴィンセント殿下が我に返ったのか、否定の言葉を言おうとして、それでも理解が追いつかないようで、それ以上の言葉が出てこない。



「いえ、本当の事ですよ?べルージュ公爵が、夫人付きの侍女だった母に手を付けて生まれたのがわたくしですもの」



「で、でもそれじゃ平民上がりとは言えないじゃない。やっぱり言い逃れようとしているだけよ!」



 ユルグ男爵令嬢は頑張るなぁ。まぁ、私が彼女に嫌がらせしたという証拠も無い状態だから、このままでは自分の身が危ういものね。それは意地でも私を悪役にしたいでしょうね。



「公爵夫人が自分の夫に手を出した侍女を公爵家に置いておくわけないじゃありませんか。侍女の妊娠に気づいた夫人によって、母は公爵家を追い出されました。


そして公爵夫人に睨まれるのを恐れた実家の子爵家にも絶縁されて、母は平民となってしまったのです。


妊娠した上、いきなり平民となって困っていた母は、幸いにも平民の男性に助けられ、のちに夫婦となったそうですの」



「そ、そんなの皆の同情が欲しいマリアさんの作り話でしょ。じゃなきゃ今、公爵令嬢になっているなんておかしいわよ」



そう言いたくなるのも分かるなぁ〜。

普通ならば、庶子とはいえ後継も、何なら政略結婚に使えそうな娘も居る公爵家が、わざわざ私を迎え入れる必要などない。何故そんな事になったのかといえば・・・。



「殿下もそろそろ思い出してきたのではありませんか?」



「・・・っ!」



私の言葉に、ぼんやりとしていたヴィンセント殿下がハッとして私の方を見た。



「大衆食堂の跡継ぎだった義父と結婚した母でしたが、わたくしが5歳の時に流行病で亡くなりましたの。それでもわたくしとは血の繋がっていなかった義父と義祖父母は、変わらずに本当の娘のように育ててくれたのです。


わたくしは物心ついた頃からお店に顔を出し、7歳になる頃には店の手伝いも出来るようになり、常連のお客さんたちからは看板娘だな、と随分と可愛がっていただきましたわ。


そのわたくしを見初めたのが、お忍びで城下の下町を訪れたヴィンセント殿下、貴方でしたわよね?」



 そうなのだ。店の常連さんと楽しくおしゃべりしていた私を偶然見かけたヴィンセント殿下が一目惚れした。そうして店の前で『一緒に連れて帰る』『マリアと結婚するんだ!』とギャン泣きしながら大騒ぎをしたのだ。


 騒ぎを聞きつけて集まる人々に慌てた護衛が、彼を小脇に抱え、まるで人さらいの様に連れ帰った、という一連の騒動を居合わせたお客さんたちが呆然として見送った。そんな出来事があった。


 義父たちや見物していた人たちは、どこかの裕福な家の子どもの、その場限りのちょっとした我儘、と微笑ましく思った。そしてその話はそれで終わるはずだった。



けれど数日後に突然、私は王宮に連れ去られてしまったのだ。



 どうやら私と出会った日からヴィンセント殿下は、王宮に戻ってもずっと『マリアと結婚する』と言い続け、『要求が通らないなら王子教育をしない!』と部屋に閉じこもってしまったらしい。




 教育係も侍従たちも困り果て、王妃や国王陛下に諌めてもらおうとした。しかし、それでも諦めないヴィンセント殿下にどうしたものか、と皆が頭を抱えていた時に、護衛をしていた者が私の容姿をポロリと口にしたらしい。



平民にしては、見事な金髪と紫の瞳をしていた少女だった、と。



平民でも金色の髪をした者が居ない訳ではない。それでも貴族たちに比べると色褪せたような色や茶色に近い金髪だったりが殆どだ。


そして紫の瞳は平民ではまずあり得ない色、それもこの国では紫の瞳はべルージュ公爵家の者しか持っていない色だった。



 護衛の言葉ですぐ様、私の素性が調べ上げられ、べルージュ公爵の庶子だと発覚した。庶子ではあるが公爵令嬢ならば、と半ば王命の様な形で公爵家はべルージュ公爵の娘として認知させられた。


 そうして私は公爵令嬢の娘である、と無理やり家族から引き離されてしまったのだ。



 しかし、庶子だということも、王族の婚約者としては外聞があまり良くない。

そこで『べルージュ公爵家の末娘は、幼少の頃より第二王子の婚約者として王宮住みとなり、王子妃教育を受けていた』という作り話を王宮主導で広められ、私は公爵家には住まず王宮の一角に住む事となった。公爵家の方々との対面も、婚約手続きをする際に公爵夫妻が立ち会っただけで会話もなかった。以降、公爵家が私に会いに来ることもなかった。



「た、確かにそなたは市井で暮らしていた平民であったな。だがしかし、だからこそ境遇が同じ庶子のソフィアが私に寵愛されたのが気に入らなかったのではないか?


それでわざとソフィアを蔑み貶めて、鬱憤を晴らしていたのだろう?」


まさか!自分が忘れていた事を誤魔化す為にそっちに話を持っていこうとしているんじゃないでしょうね!?


()()()のせいで私は大好きな家族と引き離されたのに!



ユルグ男爵令嬢もヴィンセント殿下の言葉を聞いて、愉悦の笑みを浮かべているのがムカつく。




「それはあり得ませんわ。わたくしは()()()()家族と引き離されて、王宮に連れてこられたのですよ?」



私が平民であった事を隠す為に、私の家族は無理やり王都から追い出されていた。口止め料に金貨数十枚を渡されていた。


そして『二度と王都には来るな』、『戻ってきたり、マリアに接触しようとしたら命の保証は無い』などと脅しをかけられて。



これは王立学園に入学した後に、()()に頼み、周囲に気付かれないように家族の行方を調べてもらった時に知った事実だ。



「それにこの際だから申しますけれど、わたくしがどうして未だに王子妃教育が終了していないのか理由はお分かりですか?」


どうせ公衆の面前で婚約破棄という辱めを受けたのだもの。私も積年の恨みつらみを吐き出すぐらいいいわよね?




ここまでお読み下さりありがとうございました。

引き続きよろしくお願いします。

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