プロローグ フルスロットルに駆け抜けた人生
異世界転生。それは私の国では親しまれる現代ファンタジー。今や大衆的なコンテンツまで上り詰めたジャンルだった。
そんな舞台があればいいなと、人々の希望が詰まった物語。私、「志流 凛」も夢に魅せられた一人だったのは違いない。
仮にもし、自分が死んだ後に夢のような世界が待っていると知れば、ワクワクするだろう。現代にはない冒険魂を震わせて、旅に出ることはどれほど夢見心地がいいのか。想像しただけで......なんて、転生を受け入れた時は甘い考えを抱いていた。
「リンユース・ストレイライン。貴方様はこの国で二人目の勇者であり、同時に『聖女』です!」
「聖女で勇者!?」「なんという奇跡だ!」
「あのストレイラインの令嬢が......」
「神託は本物だ。だからあの人が......」
神ノ結晶を手にし、その力で変身した。私が聖女であることの証明をし、有無を言わせず認めさせるため。
しかし思わぬ展開に顔が引き攣る。自分から飛び込んだとはいえ、予想とは大いに違う展開が待ち受けていたから。
(あの女神......面倒だからって、私に全て押し付けやがったな!!)
そして拳をグッと握り、女神像を”奇怪な装備”越しに見上げる。こうなった原因は全て、あの似ても似つかない女神像の元ネタにあるのだから。
——リンユース・ストレイライン。それが今世での私の名前だ。
え? 今世? ちょ待てよ、急にどういうこと? と、私の語るモノローグを見る方は思うかも知れない。そりゃそうだ、肝心のことをまだ言ってないんだから。
私は日本人「志流 凛」として生まれ、そしてあることがキッカケで死んだ。その後、なんやこんやでこの異世界に転生したのだ。......評判の悪い令嬢として。
もう随分と昔のことに思える。以前の私は社会のクズで、どうしようもない人間だったんだから。
思い出したくもないが、私が狂って死んだことと、この世界で生まれ変わった私が「悪役令嬢」になっていたのは、少しだけ繋がっていく。その過去を少しづつ紐解いていくとしようか。
私がこの世界で「志流 凛」の意識を取り戻したのは二週間前のこと。
そしてただの日本人女性だった私が死んだ理由。それは......心に抱えた闇のダイナマイトに、直接火をつけるように、あることにのめり込んでしまったからだった。
基本的に勢いに任せた作風です。
主人公は破天荒で真っ直ぐな馬鹿。何をするにしても直線的なことを好むタイプです。
色々とネタや体験談を放り込んで作りました。楽しめていただけると幸いです。
平日18時更新。
全部で22話〜ほど。ほんのわずかな英雄譚を、よろしくお願いします。