失楽園1
マフが担当していた大陸の竜種を絶滅させ、次にマオが向かったのは帝釈天の大陸だった。
大陸に渡ってからというもの天空神殿から出てないという帝釈天をマオは訪ねに執務室に行った。
マオ「まだ一本も行ってないのか?」
マオは帝釈天の腰の重さに驚いた。ずっと魔法の研究をしていたらしい。天空神殿の自分の席に足を組んで斜に座る姿はまさにキーリスそのものだ。
違いはガワだけ、テカテカの褐色の肌に金に染めた髪の毛。くっきりしたメイク、ぷっくり下唇だろうか?
マオ『……あ、だいぶ違うのか?』
ターマ「ですね……」脳内の妻は答える。
アニキ「すまねぇな。剣と札で魔法体型の確立に忙しくってよぉ。行けてねーんだわ!」
長い年月で近未来的な服より、その風土に合った服、そこの土地で採れる素材を使った服が着られるようになり、大陸ごとに特色が出ていた。帝釈天の服装は行く先々で竜種を殺して、大陸を歩いて横断して来たマオのとはガラリと変わっていた。
アニキ「なんなら、お前の方で片付けてくれや竜種。」
マオ「そのために、きたのさ。」
キーリスのクローンだけあって研究にのめり込むとそれに集中する気質がある。
戦闘に明け暮れるマオ。生前、魔法の研究をばかりしていたマフもそうなのだろう。
アニキはふと、マオの顔で気になった点を指摘した。
アニキ「マオ。お前の顔、そんなだっけ?なんか歪んでないか?」
ソレはマオも気にしていた。マカル返しの度に少しづつ身体が歪んでいくのだ。回を重ねるごとにそれはひどくなっていっていた。
マオ「マカル返しってのも案外、万能じゃないのかもな。」
アニキ「なにはともあれ、俺んとこの兵隊使っていいぜ。ラーヴァナも暇してるだろうしな。」
マオ「ありがとう。」
マオは独り言を何やらブツブツ言いながら天空神殿の帝釈天の部屋から出ていった。
マオ「ラーヴァナ。お前の出番だ。下に降りるぞ。」
ラーヴァナ「ようやくかよ!」
天空神殿の外、地べたにあぐらをかいていた、巨大な羅刹は光の剣の柄を腰に四本ぶら下げていた。よっこいしょと巨躯が立ち上がる。
天空神殿の端にある転送装置でマオとラーヴァナは地上に降りた。
ラーヴァナは初めて見る地上の景色に驚いた様子だった。
ラーヴァナ「へぇ、猿の亜人ばっかだな。」
マオ「聖地には猿の亜人じゃなくてイギギって言う頭の長い種族とかがいるぜ。あと、マフのところは魔女や猫型や狼型の亜人とか?」
ラーヴァナ「そうなのか!?いろんな人種があっておもしれーな!」
マオはラーヴァナのために村を案内してやっていた。そんな時に村の広場から怒号が聞こえてきた。マオはそれが気になって二人で見に行くことにした。
マオは人だかりを見つけると、集まっていたゴブリンに話を聞いた。
ゴブリン「逃げてた人間を見つけて、捕まえてきたんでさぁ。」
集まった人たちは口々に人間が知恵をつけ始めたと言う。
猿型亜人A「いやぁねぇ。知恵をつけた人間は。ずっと発情しっぱなしで、すぐ増える人口のコントロールもできやしない下等生物のくせに。」
猿型亜人B「逃げた先で、勝手に増えて村まで作ってるって噂だ。見せしめに吊るしとけ。」
人だかりの真ん中には、全身アザだらけの裸の成人女性が手を縛られて転がっていた。それを見たラーヴァナが言う。
ラーヴァナ「食肉かな?あれってうまいのか?」
マオ「さぁ?俺は食ったこと無いけど、オークはうまいうまいって言って食ってた。あと、ゴブリンどもの繁殖にも使われてる。俺たちの貴重な財産だよ。」
ラーヴァナは自分の胸の高さまで吊り上げられていく人間を見て興味なさげに「ふ~ん。」と言った。
切りだった山々の間にクネクネと蛇のようにくねった川が流れ、朝は霧が出ていて前がほとんど見えなくなるような場所に目立つ、天まで届いてそうな木が立っていた。
そこには緑色のリュウオウが川に沿って体を隠していた。
マオはリュウオウが川から顔を出した所をようやく見つけ船から身を乗り出した。
マオ「ようやく見つけた。隠れてやがったのか、臆病だなお前。」
緑のリュウオウ「お前が同胞を各地で狩っているのは聞いているぞ。用心のためさ。」
マオは挨拶と言わんばかりにいきなり緑のリュウオウに向けて無数の光弾を放ったが。リュウオウはそれを水の壁を使って防いだ。
リュウオウ「質量のない魔法はこれで防げる。」
キィィィン
マオの耳に不快な音がする。
マオ『精神攻撃か!?』
ターマ「任せてアナタ。」
ターマが脳内でそう言うと耳鳴りが消えた。
リュウオウ「ぐぉ!反射して来よる!?」
リュウオウが怯み首を大きく川から出して悶絶し始めた。
ラーヴァナ「もらったぁ!」
そこを山間に隠れていた多腕の巨大な羅刹が持っていた光の剣で首をはねた。
緑のリュウオウ「!?」その頭は川に落ち、川の水は赤く染まった。
マオ「次行こーぜ。」
ラーヴァナ「おう!」
次の世界樹の下には大きな洞窟があり、
そこに緑のリュウオウが住んでいた。それだけなら普段と変わらなかったが、
マオ「あれ?人間と共存してやがる?」
そこにはマオ達の所から逃げ出した人間の村があり、
リュウオウが人の営みを慈しむように上から眺めていた。
マオは鉄球を腰のポーチから取り出し物陰から狙撃しようと企んだ。漏れる光が暗い洞窟を照らす。
ターマ「……バカ。」
異変に気がついた緑のリュウオウは口から雷の束を光にめがけて放った。
ボン!
マオの体は電圧で弾けた。煙を上げる肉片が狭い洞窟に飛び散った。
リュウオウ「やったか?」
外に出ていた人間達はいきなりのことに驚いて我先に村の家々の中に隠れた。緑のリュウオウはマオの死体を確認しようと近づいていった。
焦げた匂いが充満する。普通であれば死んでいる。
が、そこにはマオが待ち構えていた。
リュウオウ「ばかな!」
マオ「やってくれたな、トカゲ野郎。」
至近から無数の光弾が放たれる。リュウオウは
伸びてきた木の根でそれを防ぐ。受けた木の根は弾け飛んだ。
次にリュウオウは地面から生えてきた無数のツルでマオを拘束した。
マオ「く!変な魔法を使うなぁ。」
そこへ洞窟の上から光の剣の光刃が飛び出してきてリュウオウの頭を貫いた。
洞窟の天井からラーヴァナの高笑いが聞こえる。
マオ「やるう!……さてと。」
マオはそこにあった村を焼き払い、人間たちを帝釈天の手下の猿たちに引き渡した。
引き渡す際、人間達は口汚くマオを罵った。
人間A「魔王め!許さないぞ!」
人間B「今に見ていろ!悪魔め!」
マオ「……魔王?」マオはその時初めて自分たちが人間に恨みを買っているのだと知った。




