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世界樹の7日間[前編]

世界樹に近づくにつれて、湿気がすごい。

羽織っている不可視マントも湿気にやられて使用者の輪郭をあらわにする。ついに不可視マントが砂嵐状態になった。

ニーア「本部。コチラ、ニーア。不可視マントが故障した。これ以上進むのは無理だ。」

本部からの通信もノイズが酷い。

本部『(ザーッ)ニーア、世界樹、ま、たど、ルートを……』

ニーアは困惑した。まさか、本部はまだ進めというのか!?飛竜の巡回ルートをかいくぐって世界樹までの安全ルートを見つけ出す。

ニーア「くそっ!」ニーアは不可視マントを脱ぎ捨てた。ここからは自分の能力、毛皮の色相操作が頼りだ。

普段はチャトラのハチワレのニーアだが、色相操作で色んな毛皮になれた。

ニーア『ここは黒で行くか。』

ゾワワワ……

みるみる全身を覆う体毛がチャトラから黒色に変わる。

ニーア「コレでよし。……世界樹か。」

ニーアは上を見上げた。葉の隙間、昼でも薄暗い密林から見えるソレはまだ到達してないというのに幹の太さだけで視界の大半を占めた。

ニーア「行こう。それがオレに課せられた、ミッションだ。」


夕方、ニーアはようやく世界樹の根元まで到達した。

ニーア『……デカい。』ニーアは持っていた、双眼鏡はここではいらないと腰のポシェットに閉まった。

大きな木、その根っこには滝があり。飛竜や大蛇が水浴びをしていた。全部がデカい。大自然の驚異、雄大さにニーアは唖然として身を隠すのも忘れて見とれていた。

そこへ、大きなリュウオウが体を優雅にくねらせどこからか帰ってきた。

ニーア「!」

リュウオウと目が合った。ニーアはすぐさま身を隠したが、すでにアレにはバレている。しかし、はべらせている飛竜をけしかけるでもなく、リュウオウは世界樹の根元の広場にその巨体を器用にまとめて収まった。

「立ち去れ。外来種。」

リュウオウの声がニーアの頭に響く。ニーアは恐怖した。

ニーア『素直に、従っておこう。』

ニーアはもと来た道を戻っていった。


アッシュ「ニーア、猫型亜人が昨日作った飛竜共の巡回ルートと世界樹までのルートだ。全員、頭に叩き込め。」

狼型亜人数人とゴブリンの混成部隊。

それらによる威力偵察が今回のミッションだった。

村の広場に集まったそれらの混成部隊は、せわしなく準備をしていた。

ゴブリンA「……覚えらんねぇ。」

ゴブリンB「大丈夫。オオカミ達についてけば問題ないさ。」

アッシュ『コイツラ、はぐれたらどうするんだ……?』

アッシュはゴブリン達の他力本願な姿勢を、苦々しく見ていた。

かと言って、狼型亜人の任務はゴブリンの戦闘で敵の戦力を測り生還することだった。

コイツラ、ゴブリンに歩調を合わせないといけない。

キーリスに犠牲覚悟で、自分たち狼型亜人だけで行かせてほしいと直談判しにいったが、

キーリス「ダメだ。君等は貴重だ、失うわけには行かない。ゴブリンはコストパフォーマンスで優れている。うまく使え。」と、却下された。

まぁ、彼がケモナーなのは、半裸のメス猫の亜人を個室に何体も侍らせていることから、周知の事実ではあるのだが。


遺伝子工学研究室で世界樹攻略の打ち合わせの為に、マオ、マフ、アニキは集められていた。

マフ「私らがおとり?」

またか。マフはうんざりといった顔をする。飛べるのは今のところ、マフと魔女くらいだ。密林の上空を巡回する飛竜を引きつけるのに、もってこいだろう。

キーリス「今回は八柄の剣を使える魔女を3人付ける、暴れてこい。帝釈天アニキとマオで接敵。帝釈天でリュウオウの手下どもを引きつけろ。時間差でマオ。」

マオ「俺?」

キーリス「お前がリュウオウを倒せ。クサグサノモノノヒレ、八柄の剣が使えるのはお前だけだ。」

そうなんだ?俺らは同じ種類の生体兵器と思っていたし、自分は出来の悪い方だと思っていたけど個性がそれぞれ違うだけなんだ。

アニキ「防御系の魔法なら俺だな!(キラーン)」

確かに、リュウオウの攻撃を防いだ実績もある。

アニキ「けど早めに、やってくれよな!」

マオ「オウ、任せとけ!」


世界樹は月夜に照らされその雄大なスケールで星の空に佇んでいる。密林の中は真っ暗だ。リュウオウの寝床、世界樹に近づくにはもってこいだ。何処からともなく虫の色んな羽音が聞こえアッシュ達の足音をかき消していた。

アッシュ「着いたぞ。降ろせ。」

コブリン達をリュウオウの寝床に接敵させる。慎重に崖を降り、湖の辺で寝ている大蛇に気づかれず進み、リュウオウの寝床の10mくらいまで近づいた。

「やれやれ、いつぞやのやつの仲間か?」

リュウオウは気がついていた。その目が開かれゴブリン達を捉える。

アッシュ『何処から気づいてたんだ?奴は?』

アッシュ達、狼型亜人は密林に身を隠して、ゴブリン達の行く末を見守った。

リュウオウは動かず、周りの飛竜や、大蛇達がゴブリン達を処理する。そう、処理だ。淡々と片付けている。

アッシュ「……?」

狼型亜人A「どうなってるんだ……」

狼型亜人B「ゴブリン達、抵抗しないぞ?」

ゴブリン達は抵抗もせず、武器を手放し、ある者は大蛇に頭から丸呑みにされ、また、ある者は、飛竜に噛み砕かれている。悲鳴も上がらない。小さくうめき声が聞こえるだけだ。

ゴブリンが一人残らず、“なくなる”とリュウオウは何事もなかったようにまた目を閉じた。

アッシュは頭の中で今の出来事の言語化を試みた。

1.ゴブリン達は暗がりを通ってリュウオウに10mくらいまで接敵した。

2.リュウオウはすでにゴブリン達の存在に気がついていた。

3.リュウオウに見られたゴブリン達は何の抵抗もせずに周りの大蛇や飛竜達に処理された。

アッシュ『そして……』

4.リュウオウは密林に潜む狼型亜人達に気づいてないのか、そのまま眠りについた。

Q.奴の感知範囲は何処からだ?

アッシュ「俺が確認する。お前らは顔を出すなよ。」

アッシュは密林から崖に出た。

グォン!

ヒゲが何かの目に見えない壁を感知する。

リュウオウ「む!未だ仲間がいるのか!」

アッシュはリュウオウと目があった。

アッシュ「うあ!」

アッシュは昏迷してその場に倒れた。

狼型亜人A『隊長!まずいぞ!助けないと!』

狼型亜人B『閃光弾!用意!』

大蛇が崖をスルスルと登ってくる。アッシュもゴブリンと同じように処理するつもりだ。

倒れるアッシュの間近に大蛇が迫り、その大きな口を開ける。

狼型亜人B「今だ!」

カッ!

狼型亜人が投げた閃光弾が大蛇の五感を麻痺させる。

その隙に他の亜人がアッシュを担いでその場から密林に逃げ込む。

騒ぎに他の飛竜達が目を覚ます。

リュウオウ「お前達、深追いは無用だ。」

狼型亜人A「今のうちに作戦領域外に逃げよう!」

狼型亜人達は一目散に逃げ出した。




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