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キーリス

キーリスは最高議会の議長室に呼ばれた。

その部屋、議長室から青い星が真空の中に、星々の海に浮かんでいるのが見える。何とも美しい。見る分には。

分厚い大きな耐圧、耐熱窓をバックに席に座る議長は今回、キーリスを呼んだ本題を切り出した。

議長「キーリス、あの星、エルヨウンの話は聞いてるな?」

キーリス「えぇ、敵対原生生物がいてテラフォーミングに手間取っているとか?」

資源採掘は遺伝子工学研究員のキーリスには畑違いな話だったが、もう何ヶ月も前から、噂は耳に入ってきてた。船内はその話で持ちきりだった。

議長「そこで、遺伝子工学の優秀な博士、君の出番だ。」

キーリス「と言うと?」

議長「エルヨウンの敵対原生生物を殲滅するため、奴等に対応できる生体兵器を作って欲しいんだ。星に降りてね。」

キーリスは驚いた。星に降りる?危険すぎやしないか?

キーリス「なんでまた、星に降りないといけないんですか!?」

議長「飛竜だよ。往復するとなると奴等の妨害を受ける。大丈夫だ。降りると言っても現地のアヴァターラを操作するんだ。」

キーリス「なんだ、それなら安心ですね。」

アヴァターラは我々が安全に星のテラフォーミングと資源開発、採掘を行うための遠隔操作アンドロイドだ。

議長「現地はすでにイギギどもが遺伝子工学研究所を天空神殿内に造っている君はそこで好きな研究をやってればいい。」

キーリス「なるほど。安心しましたよ、議長。」

議長「やってくれるな?」

キーリス「もちろん。」

議長「では、アヴァターラ操作室に行ってくれ。連絡はコチラでしておこう。」

キーリスが部屋を出ると、議長は電話で内線をかけた。


オペレーター「話は聞いてますよ。キーリスさん。アナタは個室から操作することになります。あちらの扉です。」

アヴァターラの操作室はキーリスは入るのは初めてだった。ずっと遺伝子工学研究室に籠っていたキーリスは対人が苦手だった。オペレーターのような女性は特に。

キーリス「……助かります。」

アヴァターラの操作室には他にもズラッと並んだデスクに座る女性スタッフが、そこから現地のアヴァターラを操作していた。

キーリス『やれやれ、個室でよかったよ。』

陰キャ全開のキーリスは人生何度か異性とお付き合いしたことがあるが、どれも長続きしたことがなかった。外見が良くても、中身が少し世間とズレているのだろう。

キーリス自身もその自覚はあった。

個室の中のモニターに現地の様子が映っている。アヴァターラはすでに稼働して何かをしてるようだ。

席に座ると、キーリスはマウスを触った。

オペレーターの声がつけたヘッドホンから聞こえる。

オペレーター「キーリスさん。アヴァターラ操作は初めてでしたよね?マウスをつかむとアヴァターラと意識がつながります。それで操作開始です。簡単でしょ?歩行もマウスでやります。大丈夫、慣れれば簡単ですから。」

キーリス「そうだね。」

遺伝子工学に比べればどんなことも簡単だろう。

キーリスのマウスを持つ手がひかり、意識がアヴァターラに移行する。


自律モードを終了。システム、遠隔モードへ移行します。

意識の遠くで女性のような声が聞こえる。

ゴブリン「お?ダレカ来たぜ?」

イギギ「お?誰だ?アルジ達か?」

アヴァターラ「……ここは?」

どこか資材置き場の中、荷物運びの最中、だったようだ。

イギギ「ここは地上、天空神殿から来た物資を搬入してる場所です。」

ゴブリン「あんた、名前は何てんだ?」

キーリス「……おい、これは?」

キーリスはイギギにゴブリンを指さして質問した。

イギギ「遺伝子工学研究所ができたんで、うちらで試運転がてら、試作してみたんです。うちらはゴブリンって名付けてます。」

キーリス「へー、見てくれは緑色でブサイクだが、よく出来てるじゃないか?」

キーリスは自分の操作しているアヴァターラが女性用だと、今更、気がついた。

キーリス『アヴァターラの……カ、感度はどんなもんか後で試すか……』

キーリスは天空神殿の遺伝子工学研究所に、用があることをイギギに伝えた。イギギはその長い頭をかいた。

イギギ「そうでした、すみません。ここにはアヴァターラが1台しかなかったもので、雑務をやらせてしまってました。」

キーリス「このくらい自分らでやってもらわなきゃ困るよ。さ、研究所に案内してくれ。あ、いいや。君等は作業にもどれ。」

キーリスは持っていた荷物をゴブリンに任せると。空に浮かぶ神殿への転送装置のある建物に向かった。

キーリス『ここの奴らは、奴隷っていう自覚はあるのか?』

キーリスはイギギとゴブリンの方を目だけで見た。地上に派遣されてる奴らはみんなこうなのかもしれない。

頭脳職奴隷に舐められないようにするのもアルジと努めだ。

キーリス「ここだな?」

キーリスは説法台のような転送装置に手をかざすと、その体ははるか上の浮き島の庭園についた。

キーリス『まだ歩かせるのか、非効率だなぁ。』

キーリスには手入れの行き届いた美しい庭園を鑑賞するような殊勝な感性を持ち合わせていなかった。

彼には試験管の中で蠢く新生物の方がよっぽど、美しいと思えた。

重武装の警備ロボットのゲートを抜けてキーリスは神殿内に入ると内部の地図を頼りに遺伝子工学研究室に向かった。

キーリス『人員が足りないなぁ、イギギかアヴァターラを上に要請しよう。あ、いっそ俺が作るかな。』

部屋に向かう途中、ほとんど人とすれ違わない事にキーリスは不安を覚えた。

部屋に着くと研究所長が出迎えてくれた。

所長イギギ「これは、アルジ様。ようこそ、我らの研究所へ。」

キーリス「君等イギギのじゃない、我々の、だ。以後、気をつけ給え。」

所長イギギ「……失礼しました。アルジ様。アルジ様の席はコチラになります。」

体重のあるアヴァターラ用のイスだろう、がっしりとしたイスにキーリスは腰を下ろした。

キーリス「今、何が揃ってて、何が足りないのか知りたい。この端末で見れるか?後、俺に個室はあるか?」

所長イギギ「アヴァターラですけど個室がいりますか?」

しまった。遠隔操作なのだから本体がマウスを離せば、母船でいくらでも休める、アヴァターラの感度が試したいから個室が必要だなんて言えない。

キーリス「き、気分転換は必要だろ?」

所長イギギ「?はぁ、わかりました。庭園の見れる部屋がありますのでそちらをお使い下さい。」

キーリスはしばらく端末をいじっていたが、ムラムラしてきたのでその部屋へ早歩きで向かった。


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