満月ハ泡沫ニ沈ム
自分の手が届くものは、守りたい。そう願わずにはいられなかった。
次々と倒れていく仲間達、大切な家族。
いつの間にか俺は独りになっていた。
何かを掴みたくて始めた旅も、孤独だった。
何も見つからない、空っぽなまま帰郷した。
そんな俺がある日見つけた、一輪の花。
わたしを見つめてと言わんばかりに主張してくる花々の中でも、たった一輪の花に目を奪われた。
その花もまた俺と同じく孤独だったが、誇らしく気高く美しかった。他の花なんて目に入らなかった。
何としても手に入れたい。でも俺には何も無かった。あるのは両親から貰った少しばかり見目の良い容姿だけだ。
それでもこの手で守りたいと思った。
静かに、息を潜めて様子を伺う。
高い塀に囲まれて、厳重な警備の中、どうすれば花を手に入れられるか思索した。
ある満月の夜、遂に作戦を決行する。
警備の目を欺き、花の前に降り立って、恭しく礼をとり、愛の言葉を囁いた。
「今宵の月は一際輝いて魅惑的だ。君の時間を貰えないか?」
花は美しく微笑んだ。
「私も、あなたを待っていたの。どうか私を離さないで。」
その後俺と美しい一輪の花を見たものはいない。
幸せな深い海の底で、俺は花を抱きしめ眠りについた。