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ウィンディの運命分岐点その1 泉の噂と血塗れの悪魔

「ねぇねぇウィンディ。山の向こう、草原の近くの所に綺麗な泉があるんだって。その泉には不思議な言い伝えがあるらしいの。若い乙女がそこで体を清めると、永遠の美しさが手に入るんだって。好きな男の子とだってすぐに仲良くなれちゃうのよ」

 くすくすと笑うライアがそう教えてくれた。


「そうなんだ…。美しくなったら、フランツが気にしてくれるかな?」

 村の中で一番仲良しの男の子フランツ。元気で明るくて良く笑う男の子。

 もっと仲良くなりたかったけど、どうすれば良いのかは解らなかった。ライアが教えてくれて良かった。これで彼ともっと仲良くなれる。

 

「怖いけど、ちょっとだけなら」

 村の外は危ないから一人じゃ出ちゃ駄目って言われてるけど、少しくらいなら平気だよね。

 私はコッソリと村を出て泉を探した。


「………こっち、かな?」

 何時間も山の中を手探りで進んでいると、何かに呼ばれた様な気がした。気のせいかな?


「わぁ…」

 茂みを抜けると綺麗な泉が現れた。私は思わず感嘆の声を上げる。この場所を教えてくれたライアに感謝を抱く。その泉はとても神秘的で、確かに言い伝えの様な不思議な力があってもおかしくない様に思えた。

「よいしょ」

 服を脱いで枝に引っ掛ける。これでよし。

「冷たくて、気持ち良い…」

 まだ寒くなる時期じゃないから泉の冷たさが心地良かった。

「えへへ、これで美しくなれる、かなぁ?」

 ライアと比べてあまり大きくなってない自分の胸やお尻を見下ろす。

 男の子はお胸もお尻も大きい方が好きだから。フランツなんて、年上のお姉さんばかり目で追いかけてる。

 きっと私の事なんて―――


「だ、だめだめ。弱気になっちゃ。折角ライアがこの泉の事を教えてくれたんだから―――」


バシャァァァンッ!


(なっ、なに!?)

 突然の水音にびっくりする。

 私は水音のした方を振り返る。

 そこに居たのは――――


「はーーーっ!気持ち良いーーー…ん?」

 

 血塗れの化け物…に見えた。全身が血で真っ赤だ。それが飛び込んだ所から泉が真っ赤に染まっていく。生臭い匂いも酷い。泉に住むモンスターかと思った。


(に、人間なの!?悪魔…魔王―――)

 私はお話で聞いた悪魔や魔王を思い浮かべる。そうとしか言えない出で立ちだった。

 片手には角の生えた獣の生首があり、首にはその獣の物らしき内臓を巻いている。

 言葉を放ってきたから人間の様だけど、明らかに普通じゃない。


「ひっ!?だ、誰―――!?」

 思わずそう呼び掛けてしまう。

 私の問い掛けにその悪魔は応えずに、私の全身を舐め回す様に見て品定めしてるのが解った。

 怖気が全身を襲う。


「…ひっ!ひぃっ!」

 自然に体が震えてくる。怖い怖い怖い。殺される。食べられちゃう。

 その悪魔が身に纏う血が泉の中に溶け落ち、どんどんこちらに迫って…いや、違う。悪魔自身がこっちに…来るっ!?


(足…震えて、動かな―――)

 ああ、どんどん近寄って来る。逃げなきゃ逃げなきゃ逃げなきゃ………


「いや…た、たすけて…たすけて…」

 私は体を隠すのも忘れて手を広げ、悪魔に命乞いを始めた。生まれて初めて命の危機を感じる。裸を見られて恥ずかしいとかそんな気持ちも浮かばない。この悪魔の気分を害した瞬間に、私はこの世から消されてしまう。

 

「ダイジョーブダイジョーブコワクナイヨ?」


 悪魔は獰猛な笑みを浮かべ、私を逃がさない様に両手を広げて近付いて来る。


「ヒィッ!?だ、だれかぁっ!助けてっ!助けてーーーーっ!」

 そこでようやく私は、こんな時は周囲に助けを求め、叫び声をあげれば良い事に思い至った。

 しかし、それは間違った選択だった。そもそも一人でコッソリとやって来たこの場所に、他に人間が居る訳がなかった。そして助けを求めて大声を出す事は、悪魔の機嫌を大変に損ねる行為だったのだ。



☆☆☆☆☆ 



「あぁ…いやぁ…うぐぅっ!」

 私は悪魔に犯された。きっと私が大声を上げたから逆上したのだろう。容赦無く処女を散らされた。

 性知識はあったから、いずれは好き合った誰かと…出来ればフランツと、初めてを迎えるはずだったのに。


(痛い痛い痛い痛いっ!?)

 年上の経験済の女の子達が話していた様な甘く優しいひととき等とは到底違った。

 お腹が苦しい。お股が痛い。それ以上に怖い。私は悪魔に犯されている。赤ちゃん出来ちゃうのかな?悪魔の赤ちゃんなんて嫌だけど、出来なかったらどうしよう?私はまだ来てないから…それを知られたら食べられちゃうかも知れない。


「おー、これはまた新感覚だな。気持ち良し」

 悪魔は私を犯して楽しんでいた。私が泣いて痛がって嫌がってるのを見て笑っている。やっぱり人間じゃない。悪魔だ。化け物だ。怪物なんだ。

 

「ん、お。ラッキー」

 泉の中に私から流れた血が混じる。これに気付いた悪魔が喜んでいる。悪魔は処女を求めると言うのは本当だったらしい。


「…ひっ、ひっく…うえぇ…」

 私は手で顔を覆い泣きじゃくる。汚された。私の初めてをこんな悪魔に。それに痛い。全然気持ち良くない。それ以上に怖い。悪魔が満足したら私は食べられちゃうんだ。

「んーなんか俺だけ気持ち良くなってるのも悪いな」

 悪魔は私の両手を掴んで顔を晒す。

「ひっ!?」

 悪魔と目が合い、私は恐怖で痙攣する。その瞳に射抜かれ、体の芯から凍り付くのが解った。

 悪魔は突然優しい声音で語りかけて来る。

「怖くない怖くない。自分に正直になりな?」

「うぅ…ひっく…うぅ?」

 何のつもりだろう?正直?私の話を聞いてくれるの?それなら―――


「い、いたくしないで…らんぼう、しないで…ころさないで―――」

 涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔をふるふると振りながら必死に訴える。

「解った解った。優しくするから」

 そう言った悪魔の瞳が妖しく光る。駄目、見ちゃ駄目。見ちゃ駄目なのに………あれ?おかしいな?痛いはずなのに…怖いはずなのに…嫌なはずなのに…なんだか、少しだけ…………気持ち…良い?


「へ、変になるっ、変なのっ!変になっちゃう」

 この目の前の悪魔が怖くて仕方無いのに、強く抱き締めてしまう。痛くて抜いて欲しいのに自分から動いて求めてしまう。

 おかしい。悪魔の所業だ。きっと恐ろしい魔法を使ったに違いない。

「ああああっ!」

 いやらしい声が聴こえる。それが私の口から発せられてる事に後から理解が追いつく。


 なんだかふわふわしててよくわかんないや。

 

 なんで私、こんな目に遇ってるんだろう?何か悪い事したかなぁ?村を一人で出て来ちゃったからかな?


 なんでわたしがこんなめに?


 なんでわたし、いましあわせっておもっちゃってるの?

 こんなにひどいことされてるのに………


「いやいや、俺の子を孕めるなら運が良かったかな?」

 悪魔の言ってる意味が解らない。

 それでも体が繋がってるからか解る事もある。

 悪魔は私を通して私ではない誰かを見てる。

 それは本当に酷い事だと思った。


 ひどいひと、抱くなら、わたしをちゃんとみて―――


「もう少し大きさ欲しいねここ。まぁ小さくても良さはあるか。味も悪くない」

 悪魔が私の胸を弄ぶ。誰にも触られた事無いのに…。そしてその言葉から私の予感が確信に変わる。その恐ろしい事実に背筋がぞくぞくする。これは恐怖?それとも…


 私は熱くなった顔を自然と横に振る。拒絶感と嫌悪感、恐怖感が強くなり、ふわふわした気持ちと混ざり合う。


 ああ、きっとそうなんだ。

 この悪魔は、きっと私に赤ちゃんを産ませたいんだ。だって、こんなに、お腹の中がおかしいんだもの。欲しい欲しいって、私のお腹の奥の方が叫んでる。悪魔が魔法を使って操ってる。


「いやぁ、あかちゃん、いやぁ…」

 頭がおかしくなる。

 怖い。気持ち良くなるのが怖い。赤ちゃんなんて欲しくないのに、欲しくてたまらない。おかしい。私はおかしくなっちゃった。

 でももっと気持ち良くして欲しい。嘘。そんな事思ってない。きっと私は悪魔に操られて支配されてるんだ。きっとそうだ。こんな、こんないやらしい子が私な訳がない。


「いい顔だ。好きだぜ」

 悪魔はそんな私を好きだと言う。堕落させていたぶって楽しんでいる。なんて酷い人なんだろう。

「あああああーーーっ!?んむっ!―――」

 唇も奪われてしまう。ファーストキスだったのに。でも…もうどうでもいっか…もうすでに身も心も汚されちゃった…


 嫌なのに。唇を吸われると頭が痺れる様な気持ち良さが起こる。おかしい。こんなの私じゃない。

 ………ううん。もっとキスして欲しい。

 キスは優しい。なんて酷い。どうせなら全部酷くして欲しい。痛くて苦しいのに、気持ち良いと優しいも混ざり合って頭がおかしくなるよ。

 

「うぅ、う…フランツゥ…うー」

 自然とフランツの名前を口にしてしまう。ごめんねフランツ。私汚されちゃった。

 私が涙を流していると、悪魔が喜んでいる。

 そんな時だった。


「邪魔すんなコラ」


 唐突に悪魔が呟く。

 その冷徹な響きに、私の背筋にぞくりと怖気が走る。

 次の瞬間、泉に波紋が広がり、泉の底で何かがのたうち回って苦しんでるのが解った。それもすぐに鎮まる。

 いったいなんだったのか?その答えは目の前の悪魔がすぐに教えてくれた。


「良かったな。俺が居なかったらお前食い殺されてたぞー」

 悪魔が私の頭を掴んでそれを見せつけて来る。

「ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!?」

 水底から血が広がっていく光景と、悪魔が掲げ上げた水蛇を見て悲鳴を上げる。その水蛇は頭が潰れ目玉を飛び出させている。悪魔が仕留めたのだ。


 いつの間にかその水蛇が近寄って来ていたらしい。凄い大きい。私なんて丸呑みにされてしまうだろう。この悪魔はそれすらも一踏みで殺してしまった。

 ―――なんて頼もしく雄々しいのか。


「ほら、お礼は?」

 悪魔に感謝を促される。

「…え?」

「助けて貰ったお礼」

 確かにそうだ。この悪魔が現れなかったら、呑気に水浴びしていた私は食べられちゃっていただろう。

「う…うあ…うぅ…」

 でも、素直にお礼を言うのは憚られる。

 なんでこんなに私を酷く扱う人なんかに―――


「タスケテクレテアリガトー」

 有無を言わさぬ口調だった。逆らえば何をされるか解らない。私もあの水蛇みたいに踏み潰されちゃうかも知れない。

「た、たすけて、くれ、て、ありが、とう…」

 私はなんとかそれだけを言い切る。そして同時に心の何処かが折れてしまった気がした。


 犯してくれてありがとう。

 気持ち良くしてくれてありがとう。

 子種をくれてありがとう。

 

 悪魔への感謝の言葉には…そんな意味も含まれている様な気がしてしまったからだ。

 私はこの男に屈服してしまった。そう実感してしまった。

 私を犯しながら体も清めていたのだろう。血の汚れを落とした悪魔は…その人は思ったよりも可愛らしい顔をしていた。体もそんなに大きくない。


 私やライア、フランツよりもやや年上の少年の様だった。

 ニッコリ笑うその笑顔にドキリとする。ああ、心を操られている。でなければ、こんな酷い事をする人を愛しいなんて思う訳がないじゃない。

 悪魔は美しい姿で人を惑わすと言う。まさにその通りだと思った。私に酷い事をしてくる少年を、可愛らしく愛しく感じるなんておかしいのだから。


「うん。その感謝の気持ち受け取った。じゃ、報酬も頂くか」

 彼はそう言うと姿勢を変える。

「え?」

「ほら後ろ向けよ。尻出せ」

 私の姿勢も無理矢理変えられてしまう。こんな格好、後ろからなんて凄く恥ずかしい。お尻も丸見えになっちゃう。

「や、やめて、もう、やめてよぉ…」


 ボロボロ泣いて懇願しても許して貰えなかった。お腹に熱い物をたくさん注がれた。そしてお腹の奥がキュンとなるのが解った。

 変になる。おかしくなる。

 悪魔がその激情を私にぶつけているのが解る。あまりの激しさに、私の身も心も砕けてしまいそうになる。


「あっあっ――――あっ…………」


 そこで私の意識は途絶える。

 痛みと恐怖と絶望しかないはずなのに…悪魔に蹂躙される甘美な気持ち良さでふわふわしながら、私は意識を失ったのだった。



☆☆☆☆☆



 綺麗な泉で水浴びをすると美しくなる。

 そんな話に釣られて裸になって水浴びをしていたら悪魔に襲われ犯された。

 そんなのはきっと悪い夢。

 起きたらまた普通の、代わり映えのない村での日常が待っている………はずだった。


「あ…う…」

 朦朧とする意識の中、変わらずに悪魔の様な少年に犯されていた。

 悪夢は続いていた。

 いや、とうに目覚めてる。

 悪夢以上の現実が私に降りかかっているだけだ。

 少年は執拗に私を犯していた。

 そんなに私の身体が気に入ったの?

 ライアよりも貧相で自信なんて持てない身体なのに―――


「…う、あ。ああっ…や、やら、やめ、へ。やらぁ…」

 なんとか声を振り絞って訴える。

 痛みや恐怖だけの方がどんなに良かったか。

 少年に犯されるうちに、段々と私の身体は気持ち良さが勝つ様になっていく。

 嫌だ。気持ち良くなんてない。気持ち良くなんてなりたくない。


「そういや名前訊いてなかったな」

 私の懇願など当然の様に無視して、悪魔が質問してくる。いけない。悪魔に名前を知られちゃいけないはずだ。答えちゃ、駄目なのに………

「ウィ、ウィンディ…」

 私は素直に答えてしまう。


「可愛い響きだねウィンディ」

 悪魔に褒められた。ああ、もう終わりだ。悪魔に名前を覚えられた。私の瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。

「おうち、帰して…もうやらぁ…」

 必死に訴える。痛いのも嫌。気持ち良いのも怖い。これ以上悪魔の好きに身体を弄られたくない。

「解った解った。これ終わったらなー」 

 悪魔は私の痴態を楽しんでいる。痛みに泣き叫ぶ姿も、快楽に乱れる姿も楽しんでいる。

 私は悪魔の様な少年を、愉しませ悦ばせるためだけの玩具に成り果てていた。


「うええ、うあっ、あああーーー…」

 少年は私の泣き声に聴き入りリラックスしている。他者に苦痛を与えながら安らぐその姿は、比喩表現でなく悪魔そのものだ。

「可愛いよウィンディ」

「ん―――」

 唇を奪われる。無理矢理犯されてるはずなのに、私の方から貪る様に舌を絡め夢中に求めてしまう。キスは好き。もっとして、もっとちょうだい―――ああ、ほらまた、悪魔に魔法をかけられた。魅了の魔法だ。そうに違いない。

 

 ああ、逃げられない。

 彼からもう逃げられない。

 こんな身体に、こんな心にされてしまったら、彼を求めずにはいられない。もう私は彼から離れられないだろう。


「気持ち良くしてやるからなー」

 彼の指が、舌が、その猛るモノが、私の身体と心を蹂躙していく。

「あっ―――ああっ―――っ!?」

 自分の声だというのが信じられないくらい、淫らでいやらしい喘ぎ声が口から出る。涎を垂らして身悶える。お父さんお母さんごめんなさい。ウィンディは悪い子になっちゃったよ。


 もう恐怖や痛みより、ふわふわした気持ち良さが勝り始めている。

 このままだと完全に彼の女にされてしまう。本当に彼から逃れられなくなる。


「可愛い赤ちゃん孕ませてやるよ。悦べウィンディ」

 彼が私の耳元で囁いてくる。その響きはとても甘美で頭がくらくらしてくる。

「いやぁ、あかちゃ、いやらぁ…」

 気持ち良さに溺れてしまう事が怖い。私は泣いて首を振るが、唇を塞がれ抵抗力を奪われる。キスされた瞬間に身体の力が抜けてしまうのだ。これは悪魔の口付けだ。なんの抵抗も出来なくなる…どころか、進んで彼を求めてしまう。


 そんな私に、彼は欲望の限りを尽くしてくる。

 遠慮も容赦も無く私を犯してくる様はとても恐ろしく、とても可愛らしく、とても愛しい………


 そうなの。変なの。

 逆らえないの。

 彼の瞳を見ると動けなくなるの。

 嫌なはずなのに、怖いはずなのに、私の身体に夢中になっている彼の姿を、私は可愛らしく思ってしまっていた。


(まるで、まるで母に甘える幼子の様―――………)

 痛みと快楽で混濁した意識の中私が感じたのは、彼の隠された本質だったのか?…それとも私がそう思いたかっただけの妄想だったのか?

 幼い私にはまだよく解らなかった―――………

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