逃げたぜ来たぜ大魔境
「よし、行くか」
「何処に行くの?」
「また魔の領域か?」
今はフェルンの町の高級宿だ。最後のつもりで二人を無茶苦茶可愛がった。やや名残惜しいな。
「ああ、この町を…いや、この国を出る。ちゅっ」
俺はウィンディの慎ましい物を吸いつつ、アーニスの巨大な山脈を揉んで楽しむ。
「急にどうしたエスペル?」
「また怖い夢でも見たの?」
女二人は俺の事を心配してくれている。可愛いね。
「何か嫌な予感がする」
誰かが近付いて来てる気がする。早く逃げなければ。
「…どうしたの?本当に変だよ?」
ウィンディが俺に寄り添って来る。最初の頃はずっと怯えていたが、最近は距離が近い。
相変わらず何を考えてるか解らない女の子だ。だが俺が寝てるとずっと頭を撫でてくれているし、ほっぺとかにチュッチュチュッチュキスしてきてくすぐったい。起きた事に気づかれない様に寝たフリをするのが大変だ。俺が『うーん』とか言って起きそうな素振りを見せるとスンッと表情が硬くなる。なんなんだろう?
(いや解ってる。こないだのが原因だろ)
俺自身ちょっとよく解らん事で怯えて震えていた時、ウィンディが優しく抱き締めて眠らせてくれた。あれからウィンディの俺に対する恐怖感が薄れた気がする。くそ、調子狂うわ。
「敵か?エスペル」
アーニスが一気に緊張感を高まらせる。
いや、お前じゃ瞬殺だよ。
………そろそろ本当に潮時だな。
「悪いが俺はここを去る」
もう一度ハッキリ伝えると二人の表情が固くなった。
「ついて行っては駄目か?」
アーニスが少しだけ寂しそうにしている。
「身重じゃ厳しいだろ?俺でも勝てない女だ」
無意識に口にしてハッとする。
そう女だ。
遠い記憶の片隅に、俺に恐怖を与えた女が居る。
(何者だ?)
「そうか…残念だ」
アーニスが目に見えて落ち込む。
アーニスとは組手をし、怪我をするたびに犯した。自然と回数も増えた。
「残念だがしかし、エスペルでも勝てない相手か?それは、無理だな…いや、それでも…」
アーニスが下腹部を撫でる。
月のものが来てないらしい。
デキちゃったかもなー。
ただ結婚しろとは行って来ない。俺にとっては都合が良い。都合が良過ぎるけど。
(組手相手が居なくなってしまうな)
どの道、妊婦相手に激しい訓練は出来ない。いや少し驚きだな。俺も自分の子は可愛いか。
「…そうだな。里帰りをしよう。母の手助けを借りて元気な子を産む。ではまたな、エスペル。ん…」
アーニスは俺と別れのキスをし、服を着るとさっさと出て行った。あっさりしてんな。なんか今まで出会った女の誰とも違う。
(いや、未練がましくなる前に行ったのか)
宿の外で誰かの泣き声がした。
気付かない事にする。
でもま、大丈夫だろ。
お互い再会の約束もしてないが、あいつなら普通にまた会いに来そうだわ。俺が抱いて修行もつけてやった初めての弟子だ。これからもっと強くなるぞ。
「ウィンディはどうしたい?」
俺はウィンディにも試しに訊いてみる。どの道置いていくけどな。追いかけたければ来ればいい。逃げるだけだ。
「わ、わたし、は…」
そう呟き俯くウィンディ。
突然の関係の終焉に困惑している。
まぁ金は定期的に入る様にしてあるから、生活には困らんだろ。
「ま、いーや。楽しかったぜ?またな」
そう言ってウィンディに別れのキスをする。
「ん…ま、待って、エスペ―――」
ウィンディが何かを言いかけてたが構わず扉を閉める。早く逃げないとヤバイ。そう本能が言っている。
ウィンディ、アーニス共に、俺の金が入る様に調整してある。
ウィンディは後援者の一人として、アーニスは別パーティーだからクラン登録してある。
パーティーと違い、クランには氏族と言う意味もある。クラン登録はパーティー間程、簡単に脱退とかは出来ない。別のクランのパーティーが揉めた時にクランリーダー同士の話し合いで決着をつけたりする。
所謂ケツモチだな。
これからアーニスが母子共に何らかのトラブルに巻き込まれれば、俺に連絡が来る。したらすぐに駆け付けてやれる。
「俺は親父とは違う」
俺の女を母さんみたいにはしない。
「養育費はモンスター殺せば稼げる。楽なもんだぜ」
金…金か。
いや金だけじゃ駄目だ。病気になったら助ける。それに変な取引や口約束で自分の子供を売っ払ったりしねーよ。あのクソ親父のせいで俺は―――
「ん?なんだっけ?」
クソ親父?俺、父親に会った事あったっけ?
―――ウマクオモイダセナイ―――
「まいっか。思い出せない事は大した事じゃねーって事だろ」
そうして俺はフェルンの町を出ると、ウィンディを初めて犯した泉を越えて山に入る。ここを越えればロイヤル王国から出国だ。
「さて、次はどうすっかなー」
身重の女をヤリ捨てて身軽になった俺は、青天晴れ渡る大空を見上げ呟いた。
☆☆☆☆☆
そして俺は走り過ぎて知らない所に来てしまいました。
此処は何処?
わたしはだーれ?
ぼくエスペル。
犯して孕ませた女達から逃げて逃げて〜遥々〜来たぜ大魔境〜。
そうここは魔の領域の最深部。
魔境も魔境、大魔境だ。
「やっべーな」
呼吸を整えて木の陰に隠れる。なんか息し難いんだよね。ああ、瘴気か。瘴気のせいで息がし難い。普通の人間なら一呼吸で死んでるでごわす。
これは毒耐性プラス、身体強化・内による呼吸器官の強化がないとクリア出来ない試練だな。
のっしのっしと獣が歩く。
あ、これ俺に気付いてるな?
(こりゃアカン。死んだか?)
アーニスと一緒に虐め殺してた虫と全然違う。
勝てない。死ぬ。戦ったら死ぬ。
のっしのっしと、獣が歩み去って行く。
俺に気付いてたがシカトしてくれた。腹減ってなかったのかな。あとは別に殺す必要も無いからだな。俺弱いし。
「うははははははっ!やっべー!戦いてーなんて思えねーよっ!」
ヒリついた命の遣り取りなんざ出来ねーよ。一発で殺されるわ。
「あっはははっ!弱ぇっ!俺弱ぇ〜〜〜っ!」
俺は笑いながら走る。
アカンアカン。
ありゃ魔王姫クラスだぜ。
いやぁあの時も死ぬかとは思ったよなー。
「魔王姫?」
魔王姫って誰だ?
………………………?
………まぁいっか。
俺は隠形に全振りする。
魔力を極力抑える。
身体強化も完全にオフったので、今ならゴブリンでも俺を殺せる。
まぁ気配を殺し切ってるから、雑魚じゃ俺を認識出来ないだろうけどな。
俺はゆっくり時間をかけて引き返す。
肝試ししたかった訳でもないが、自分を見つめ直すのに大魔境はうってつけだ。
「何が最強か。何がベアナックルか。ここに来りゃちっぽけな生き物に過ぎないんだよな、俺なんて存在はよ〜」
女孕ませまくってるのは、心のどっかで俺様の強い子種を残してやってるんだぜ…みたいな意識が無いでも無かったが。認識が改まるね。
弱いからいっぱい種を遺すのさ。俺の子供達で何人が俺の領域まで到達出来る?何人が魔境を踏破し大魔境へと至れる。
「魔王討伐なんざ夢物語もいいとこだな」
ここじゃ息をしただけで人が死ぬ。だから魔境なんだよ。
「ふぅ、はぁ、す〜〜〜はぁ…」
多少は息がし易くなって来たな。瘴気が大分マシになった。
此処ら辺は魔境ってとこかな?
すんげーザックリなんだけど、魔の領域にもランクがある。
大魔境…魔王とか魔族がいらっしゃるらしい所。瘴気が酷い。深呼吸してみろ、あの世に飛ぶぜ。
一般人生存時間、一秒。
魔境…人間界をうろついてるモンスターが赤ちゃんに見える。瘴気はそこそこ。常にデバフかかってるみてーなもんだよ。
一般人生存時間、一分。
魔の領域…アメーバ状に広がる魔境の端っこ。強いモンスターがわんさか居る。瘴気は場所に寄るね。アーニスと遊んでた所は瘴気ゼロの初心者コーナー。面積的には一番広いから、魔境も大魔境も全部ひっくるめて魔の領域と呼んだりもする。
一般人生存時間、一時間弱。
魔の森、魔の谷、魔の山…つまりは魔境の飛び地みてーなヤツね。地脈で繋がってるとかなんとか。モンスター強い。瘴気は場所によりけり。
一般人生存時間、一日程度。
Sランク冒険者には、大魔境内でスローライフ送ってる化け物も居るらしい。最早人間じゃねーだろそいつ。
☆☆☆☆☆
瘴気が薄くなってきたな。ようやくまともに息が吸えるぜ。
「ぷぅ…それでもまだ魔境…かな?早く人里に帰りてーな。女抱きてーよ女」
俺は愚痴りながら歩く。
そんな時だった。
ヒュドッ!
「―――あ?」
俺の背中に矢が突き刺さった。
「痛い」
体が熱い。
身体強化…はしてるな?
その俺の守りを突破した?
この射手、強いぞ――――
「敵か」
俺は腕を回して矢を引き抜く。
鏃を舐める。
「毒?…いや、なんだこの味?」
俺の肉片と混じって血の味しかしねーよ。けどなんか変な味がする。多分麻痺とかかな?生け捕りにするつもりだったのかな?
まぁいいか。殺す。
ヒュヒュヒュヒュヒュヒュンッ!
「ほっ、おおっ、おほほっ!」
俺は邪眼を開眼して矢を見切る。
身体強化・内も合わせて発動し動体視力を上げて全部躱す。
(頭狙われたら死んでたかな?いや、頭蓋骨は突破されないはずだ。うん)
脳味噌への回復魔法は成功するか解らんから、身体強化による頭の防御力は格段に上げてある。背中に突き刺さった矢も頭だったら刺さらなかったはずだ。
「痛いな。久しぶりに痛覚が仕事してて新鮮だね」
アーニスとウィンディに噛み噛みされた時以来か。いやアレはノーカンか?本当にいつ以来かね。
「だからって大人しく喰らう気も無いがな」
身体強化・内により身体機能を向上。脚の筋肉が肥大化し一歩が大きくなる。
俺は矢を避けながら射手に迫る。見えた。女?髪が長い金髪碧眼で…いや、男かな。
「ちっ!今度は魔法かっ!」
そいつから魔力の高まりを感じる。
矢を放ちつつ魔法を唱えてやがる。やるじゃねーか。
ゴウッ!
風魔法によるカマイタチ。真空波が向かって来る。アレを喰らえば真っ二つになるかな?どうだろ。まぁ俺は死なないけど、ちょっと動けなくなるかも。
その間に逃がすかも知れないしね。
避けよ。
ザンッ!ザンッ!
俺が避けた先で大木が切断されていく。
威力高いな。前言撤回。喰らってたら死んでたかな?
「◯✕△□ッ!」
ん?なんだ?なんか言われた気がする。
弓矢を構えた奴がなんか叫んでる。
耳が長い。
エルフって奴か。初めて見たな。
俺はそいつに近寄る。
矢と風の刃が飛んで来るがもう怖くないぜ。焦ってるのか狙いが滅茶苦茶だ。そんなんで当たるかバーカ。
「後ろからコソコソ狙い撃ちしやがって。寄られたら何も出来ないのか?雑魚が」
警戒して損した。
遠距離攻撃持ちだから近接に持ち込めば勝てると思わせて、さらに本当は近接がメインだったりとか考えたじゃん。
「死ね」
俺の拳がエルフの腹に決まる。
「◯✕△□ッ!」
エルフは体をくの字に曲げて嘔吐する。
お?よく耐えたな?背中まで貫通するつもりのボディブローだったんだけどね。
身体強化・外か。俺やアーニスと同じ土俵に立ってる連中って事か。
「そうかい」
ならば殺し方も工夫が居るな。
俺は指先一点に身体強化を集中する。
今の俺は指先以外は無防備になる。攻撃を受けたら死ぬ。なので攻撃は一瞬。
「ふっ!」
ドズッ!
「◯✕△□ッ!」
俺の指先がエルフの綺麗な碧色の目ん玉に突き刺さる。ちょい突き指したな。だがなんとか攻撃は成功した。俺の指はこのバカの頭蓋骨内に侵入した。
「死ねよ」
指先から一気に魔力を解放する。
ブパッ!
下痢を尻穴から吹き出すみたいな音を立て、エルフの頭部が膨れて弾け飛ぶ。
「汚ねー爆竹だな」
ちょっと口に入ったよ気持ち悪い。
ビュンッ!
「おっと〜」
俺が紙一重で矢を避ける。
まだまだエルフは居る。あと何人だ?あと何人殺せばいい?
矢の飛んできた方向へ走る。
すると大木の根や枝がワサワサと動いて襲いかかって来た。びっくりした。
「なんだこりゃっ!?トレント―――いや違うっ!」
一瞬、植物系モンスターのトレントが乱入して来たかと思ったが違った。
木が襲って来る!木魔法かっ!
「だが甘いっ!ぬるいんだよね〜」
拘束しようとしてくる木の枝を無視して突っ込む。
攻撃を掻い潜りなんとか術者に近寄るが、別方向からまた矢が飛んで来て逃がしてしまった。何人居やがるんだ?苛々してきた。
仕方無い。
「(死ね)」
俺が死界をフルスロットルで発動する。右目だけな。両目の視界を失うのは良くない。
ズグンッ!
「ぐおおっ!?」
右目に激しい痛みが走る。血の涙が溢れる。眼球が破裂したかも知れない。右目が全く見えん。
しかし―――
「へっ、効果覿面っすね」
俺の死界によりエルフ達にダメージを与えられた。流石に視ただけで殺したりは出来ませんでしたが、皆さんかなり効いたみたいね。
木の上に居たらしいエルフが地面に落下したっぽくて痛みに呻いてる。
精神をやられたらしいエルフが発狂して弓矢や風魔法をぶっぱしてる。
軽度な者も嘔吐したり崩折れたりしてまともに立っていられないらしい。
俺の事を睨んでくる骨のある奴も居たが、手が震えてるらしく弓矢を放てない。ざまぁ見さらせ。
「◯✕△□ッ!?」
なんか暴言吐かれたな。
エルフ語なんざ知らんけど、言葉の意味はなんとなく解るぜ。野蛮人とか原始人とか言ってるな?
「野蛮な原始人をなめんなよ〜」
俺は石を拾う。
石に身体強化・外を纏わせる。
持続時間はたいして長くないだろうが、一瞬で十分だ。
「ウホホーイッ!」
俺は原始人らしい掛け声とともに石を投擲する。
エルフ共は原始人の石投げ攻撃なんざ気にしてないらしい。避ける素振りも無い。いやま、避けれないか。
「死ねやバカが」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
俺が投擲した石っころがエルフ達に次々に襲いかかる。ある者は顔面を撃ち抜かれそのまま絶命。ある者は腹に大穴を開けて臓物を撒き散らす。
しかし肩や足を掠めただけの奴も居る。
うむ。やっぱ左目だけだと照準が微妙だわな。皆殺すつもりで投げたけど、狙いが外れたのも結構あるわ。
「よーし、コンボ成功」
だが目標は達したぜ。
邪眼の正しい使い方やんね。睨んで動きを鈍らせ追撃して足を奪う。時間が経てば回復魔法持ちが傷を治してしまうかも知れない。だが、この場所はそんなのんびりした事を許さない。
グオオオオオオオオオオオオッ!
獣の咆哮が轟く。
大地や大気を揺るがすその咆哮に、俺を睨み付けていたエルフ共がハッとしている。
「はしゃぎ過ぎだバカが」
ここは魔境なんだぜ?虫けらみてーな人間やエルフがちょっとオイタするぐらいなら見逃して下さる魔境の主達も、あんま派手にやるとお仕置きしに来るんだべ?常識だべー?
「◯✕△□ッ!」
耳長金髪碧眼エルフ達が、整った面を焦燥と恐怖で彩る。俺なんざ無視してアワアワと慌ててはるよ。
「ははぁん?読めたでよ?」
ちっぽけな人間一匹、簡単に倒せて連れ去れると思ったな?俺が予想以上に強くて選択を誤った。
俺がエルフを一人倒した時点で退くべきだったな。
俺は雑魚ばっか狩ってたが戦闘の嗅覚は鈍くないつもりだ。俺が真っ先に殺したエルフが連中の中で一番強かった。指揮官かどうかは解らんが、人畜無害な可愛らしい少年を不意打ちで射抜く様な脳筋戦闘民族エルフ様だ。強い奴がリーダーの可能性は高い。
実際今もエルフ達は右往左往している。緊急時のサブリーダーや方針を決めていなかったとみえる。
ふらふらしながらしつこく俺に矢を射掛けてる奴も居れば、モンスターに風の刃を放つ者、我先に逃げ出す者も居る。死んだ仲間に縋り付いて泣いてるバカや、怪我をした仲間を引きずっているマヌケ。
もうしっちゃかめっちゃかやねー。
「なんだこいつら?この程度の覚悟や練度で魔境に来て、さらには俺に喧嘩売ったのか。救えねーな」
俺はエルフ共に興味を失う。俺の命を脅かす敵かと思ったらそーでもないじゃんね。こっからエルフ達が最終秘奥義でモンスター達を退け、俺と最後の決戦が始まるのかと思ったよ。つまらん。
「んお?」
「グルルルルルルルルッ!」
「◯✕△□ッ!」
足を怪我して倒れてるエルフが襲われている。俺の投擲が足を掠めた奴だね。
獣系モンスターに伸し掛かられている。モンスターは犬や狼っぽい。顔に喰らい付こうとして、エルフの弓で防がれている。
狼型モンスターの牙がエルフ自慢の弓をバキバキと砕いていく。
「◯✕△□ッ!」
おーもうすぐ死ぬな。
美しい顔は恐怖で真っ青だ。
うーん、女か。
「ま、俺を狙った理由とか訊いておくか」
俺は狼型モンスターの頭を横から殴り付けて粉砕する。
女エルフの顔面に脳漿や血がびちゃびちゃとかかる。恐怖と嫌悪で美麗な顔を歪ませるエルフを無造作に肩に担ぐ。
足が痛んだのか悲鳴を上げるエルフちゃん。
「いいもんひーろった。もーらい」
俺は新しい玩具が手に入ったのでウッキウキで戦線離脱する。もうこんな地獄に用は無いんだぜ〜。
「◯✕△□ッ!」
俺が担いだエルフがなんか訴えて来る。
ああ、多分仲間を助けてくれって言ってるのかな?
「なんで?なんで俺を殺そうとした奴等を助けないといけないの?」
俺がそう言い放つと、エルフは黙る。言葉は通じずとも意味は理解したらしい。あ、刃物を取り出したぞ?無駄な事を―――
ドスッ!
「ん?」
背中の上でエルフが自害したっぽい。あーそっちかー。ま、どの道…
「無駄な事を―――」
俺は走りながらエルフの足の傷口に指を突っ込む。
肉体物理的接続。自己回復魔法開始。認識拡張。拡張部位修復確認。生命機能存続………成功。
「にはは、そんな楽に死なせないよ〜」
俺はマルチタスクでとにかく逃げる。
動き出した魔境のモンスター共から逃げつつ、捕獲した獲物の延命措置だ。あらまぁ忙しい忙しい。
「エルフ犯すの初めてだ〜」
痛い目に遭ったしムカついたけど、そこそこ殺して溜飲下がったし、残りは魔境の主達が後始末してくれるでせう。
結果オーライ結果オーライ。痛み分けにしてしんぜよう。むしろ可愛らしい女エルフが手に入ったから儲けたのかな?
俺は獣の咆哮とエルフの悲鳴が木霊する魔境を駆け抜ける。鼻歌が聴こえる。ああ、俺か。
「ふんふ〜ん。新しい肉便器ゲットだぜ〜」
うむ。プラマイで言えば収支はプラスでほくほくだ。俺は自分の顔が、自然と綻ぶのが解ったのだった。




