分数の割り算を教えてみる話
親戚の子供が家に遊びにやって来た。少し生意気で、暴れるようによく遊ぶ。体力的についていけないので、自分の部屋にこもって避難していると、しばらく経って大人しくなった。どうしたのかな?と、思っていたら、なんだか自分を呼ぶ声が。
どうしたのかと思って行ってみると、親戚の子供はそこで宿題をやっていた。科目はどうやら算数のよう。子供はその前で腕組している。
「どうした?」
「うん。これが分からないの」
見てみると、そこには分数の割り算が書かれてあった。どうやらこの子は、それに納得がいっていないようだった。
ふむ。と、僕は思う。
こういうのを疑問に感じて、素直に従わないタイプの人間は好きだ。大人、子供に拘らず。
それで僕は、その理解を助けてあげてみる気になったのだった。
「分数の割り算が分からないか。そりゃ、無理もない。大人だって分かっていない人がいるくらいだからな。
そうだな。これを理解するには、まず割り算が何なのかって事を理解しなくちゃならないんだ」
そう言うと、僕はまず『6÷3=2』という数式を書いて、それから隣に『3+3=6』という数式を書いた。それから、こう言った。
「この二つの式の関係が分かるか?」
そう言うと、子供は少し不安そうな表情になって僕を見上げてきた。僕は軽く微笑んでやる。
「そんなに怖がらなくて良い。なかなか気付けないけど、聞けば簡単に分かる話だから。
ほら、『6÷3』の答えは“2”で、『3+3=6』って式には3が2つあるだろう? この“2”は同じ意味なんだ。実は、割り算ってのは割る方の値が、割られた方に何個あるのか?って計算でもあるんだよ。この場合は、3は6の中に何個あるのか?って事だな。3は6の中に、2つあるから『6÷3』の答えは“2”。
少し難しい言い方をすると、分母の値を基準にした時の分子の値が分数全体の値になるって事なんだけど。
どうだ、ここまでは分かったか?」
それを聞くと、子供はやや戸惑っていたがコクンと頷いた。
「うん。じゃあ、次だ。
これを分数の割り算に当て嵌めてみよう。
『1÷1/2=2』だ。どうしてこうなるのかと言うと、1/2が、1の中に2つあるからだな。1/2は0.5だけど、『0.5+0.5=1』だろう?
もう少し踏み込むとな、割る方を1にすれば、割られる方の値がそのまま割り算の答えになると分かる。1で割ったら、分子の値がそのまま全部、答えだろう? だから、そうなるように計算すれば良いんだよ。ちょっと難しいか? なら、具体的にやってみよう。
『5÷1/2』で、割る方の値“1/2”を1にするには、2をかけてやれば良い。『1/2×2=1』。当たり前だけどな。でも、このままだと、5の方が放ったらかしだ。5にも同じ様に、2をかけてやらなくちゃならない。それで、『5×2=10』になる。ここで割り算全体を観てみると、『10÷1』で、答えはもちろん“10”だ。
もう気付いたかもしれないけど、この分母を1にするって計算は、分母と分子をひっくり返してかけるって計算そのままだな。だから、そうやる訳だ。学校では、どうしてそんな計算をしなくちゃならないのか教えてくれないかもしれないけど、実はこんな簡単な事なのさ」
その親戚の子供がどこまで僕の話を理解してくれたかは分からない。だけど、少しは伝わったらしく、それから自分で納得いくまでラクガキで遊ぶみたいにして計算式をいっぱい書いていた。
僕が子供の頃の小学校では、分数の割り算は、ただただ計算方法を丸暗記させられるだけのものだった。理由も分からず、分母と分子をひっくり返してかけろとただ言われたんだ。今の小学校を僕は知らない。でも、もしも今もそのままなのなら、その指導方法を非難されても仕方がないと思う。
関係のある歌を作りました↓
http://www.nicovideo.jp/watch/sm19928554