第93話 第三王子は筋肉愛に溢れる!
他人のふんどしで相撲を取っているのにドヤ顔の自分に気付き、心が病んでしまう『シュウ』です。
各部屋の案内も終わり男性陣全員で大浴場へ向かった。途中で女性陣達に会い、彼女たちも大浴場に向かう所だったらしい。
パトリックが僕に、
「ねぇ、シュウ。ハルタンには魔物が居るって聞いていたけど怖くないの?」
「ああ、エリスに身体強化の魔法を掛けてもらって魔物さんに挑んだけど瞬殺されちゃったよ。魔物さん達、ホント強いからなぁ…… 特に五天王は強いぞ!」
慈愛溢れる僕は、友好的である魔物さん達と相撲大会の事をパトリックに話してあげた。
「なんか、怖いね……」
「シュウ、魔物に挑むなんて君もすごいね」
「勝負を挑まれたかな。逃げることが出来ないさぁ」
「そうか…… 僕だったら逃げ出すと思う……」
「僕の場合は強制的な部分もあったからね」
突然、始まった相撲大会(歓迎会)だったからね。僕の為にしてくれたから逃げるなんて選択肢は無かったんだよね。
「そっかぁ、話を聞かせてくれてありがとう。シュウ」
「ああ、わからないことがあったら何でも聞いてくれ」
「その時はお願い」
「ああ」
パトリックの顔が青ざめていた。多分、今まで体験したことの無いことばかりだから疲れたんだろう。お風呂に入って、疲れを癒して欲しい……
僕たちは、脱衣所に着き、
「この籠に脱いだ衣服を入れるんだ。良いかい? 貴重品はお手元から離さず、十分ご注意下さいますようお願い致します」
僕は、みんなが貴重品を持っていないことは知っていたが、お約束なので取りあえず言ってみた。
「風呂の中に俺の命である『ダンベル』を入れて良いのか?」
ダンベルがご自慢の『マイ・ダンベル』を見せつけて来た。
「おい、ダンベル! 僕は貴重品と言ったんだが!?」
「シュウ、これは貴重品だろ!」
「あのなぁ~、ダンベル君。貴重品と言ったら普通は、財布とか貴金属だろ? なんで『ダンベル』が貴重品になるんだよ」
「知らないのかこのダンベルは特注品の『ポリエチレンダンベル』だぞ! 全体がポリエチレンでコーティングされ、さらにプレートの交換やダンベル同士の接触音が軽減されるんだぞ! スゴイだろ~ しかも、床面も傷つきにくい! マジだぜッ! プレートも8角形を採用しているからダンベルが勝手に転がっていかない工夫がされているのさ!」
「そ、そうか…… それは、き、貴重品だよな……」
――ダンベルの筋トレグッツ講座の圧がスゴッ! どんだけ、筋トレグッツに命かけてるんだよ! 『ポリエチレンダンベル』って言ってたよな?この異世界にポリエチレンってあるんか?
「ダンベルの話しはわかった。しかし、裸でどうやって風呂に入るんだ?」
「何言ってるんだ? シュウ。 尻筋に挟むに決まってるだろ! 『ダンベル』も邪魔にならないし、尻筋も鍛えることも出来るし、一石二鳥だろ?」
――!? 直はダメだ! 直物だけはダメだ! 勘弁してくれーーーー! サイドチェスト祭の悪夢が甦るーーーー!
「おいっ! やめろ! それだけは絶対にやめろ! 『ポリエチレンダンベル』はおいていけ!」
「おいていくのか? 持って行くにはダメなのか? ホントにダメなのか?」
「『ポリエチレンダンベル』が水が付いたら錆びるだろ?」
「ポリエチレンでコーティングされてるのに?」
――コイツ、しつこくて面倒だな…… とにかく直物だけは絶対阻止しなければ! 毛でもあった日には目も当てられない…… まぁ、紳士淑女を目指しているからムダ毛の処理はしていると思うが…… いつものパターンで必ず落ちがあるはずだ! 用心せねば……
「とにかく『ポリエチレンダンベル』は入れない方が良い。お湯に入れたらコーティングが溶けるかもしてない知れないし……」
「そうだな。お前がそこまで言うのであれば止めておこう」
「そうして貰えたらこちらも助かる! ホントーーに助かる!」
「わ、わかった。じゃあ、風呂に入ろうぜ」
何とかダンベルを説得することが出来て良かった……
「おお、わかってくれたかぁ! 早く入ろう!」
「ああ、ゆっくり湯船に入って、イジメ抜いた筋肉を癒してやろうぜ!」
――僕はイジメてないけどな…… みんなの鍛え上げられた筋肉を見るのは辛いが、僕の心の中には筋肉愛が溢れているから大丈夫……
まずは身体を綺麗に洗い、湯船に入る。
「はぁ~、筋肉にしみるぜぇ~」
「筋肉を冷水で締めるのも良いがお湯で緩めるのも良いな」
「一張一弛ってやつだな」
「俺の筋肉がもの凄く喜んでるぜ!」
「やっぱり、マリーの言っていた通り文明の次元が違い過ぎる。俺の筋肉たちがお祭り騒ぎだぜ!」
大浴場は男性陣に大好評だった! ホントにお前ら筋肉の事しか考えていないな…… 筋肉愛バンザイ!! 筋肉愛バンザイ!!
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