第92話 第三王子はガチで悔しい!
これが、パワーネット公爵家の交渉術なのか!? えげつない交渉に驚愕すると同時に女性陣の僕を見るあの輝いた目と光るヨダレがトラウマになる『シュウ』です。
話し合いも終わり、僕は二号生に高級プロテインセットを贈る為、一人プロテイン専門店に来ている。
エリスも誘ってみたが、『お店にいるだけで筋肉が付きそうだから』とやんわりと拒絶された。仕方がないのでレイニーに声をかけたが、『エリスと一緒にいる』ということでこちらも絶対拒否の姿勢を出され拒絶された…… なんで筋肉に優しくなれないのか…… 悲しい……
高級プロテインと安価なプロテインの違いは味だ! 高級プロテインはイチゴ味、メロン味、青汁味などさまざまな味が揃っている。逆に安価なプロテインは絶望的に不味い!とにかく飲むのも大変ほど! それでも筋肉愛の為なら自らを犠牲にしてまでも飲むのだ…… このアルラサンド王国では…… ああ、なんて尊いのだ! 筋肉愛!
取りあえず、各種の味のプロテインを選び、あとはお世話になっているみんなにサービスで筋肉にやさしいサプリメントも選んで店員さんに箱詰めしてもらい、包装紙と熨斗紙を付けてもらい『お歳暮』と書いてもらった。店員さんは最初、『お歳暮』という言葉を知らなかったみたいだが、僕が親切丁寧に説明をするとようやくわかってくれた。
僕は、愚かにもこの時点で気付いていなかった。
大多数のチビッ子達に指をさされることになるだろうとは夢にも思わなかった…… 『ハムの人』ならぬ『プロテインの人』と…… 指をさすチビッ子達は知らないだろうが、これでも同盟国の第三王子だぞ!
◇
冬休みに入りエリス、マリー、ソフィアちゃん、レーニャさん、レイニー、僕が二号生のみんなを瞬間移動でハルタンへご招待した。残念ながらバットは時空属性が無かった為、瞬間移動が使えない。その代わりと言っては申し訳ないが、僕たちには超大天使ソフィアちゃんがいる! ソフィアちゃんはお母上様の英才教育により6歳にして僕より魔法の能力は上らしい…… 最近、魔法の練習してなかったからなんだからね!
◇
そんなこんなでハルタンに着きました! が、ソフィアちゃんが居ない!?どこへ行った?
居ました! あまりの可愛さに女性陣に揉みくちゃにされていた。
「エリス姉さまー! たすけてー!」
「あらあら、ウフフ」
エリスは、ご自慢の義妹がみんなに可愛がられ、ソフィアちゃんが揉みくちゃにされているのをご満悦した顔で眺めていた……
女性陣の『ソフィアちゃんを可愛がろう大会』も終わり、当のソフィアちゃんもグッタリしていた……
「エリス姉さま、ヒドイ! 助けてくれなかった!」
とプンスカしていたが、最後は、この異世界のラスボスであり、世界最強の姉であるエリスの強烈な可愛がりである。二号生の集合場所であるマリー宅ではみんなの手前、ソフィアちゃんの可愛がりを我慢していたらしい…… そして、ソフィアちゃんのあまりの可愛さからついに限界突破してしまったらしい…… 哀れソフィアちゃん……
お母上様がみんなを出迎え、声を掛けた。
「あら、みなさん。よくハルタンにいらっしゃいました。エリスの母であり、ハルタンの長のアリエス・フォンティーヌです。よろしくね。みなさんの部屋も準備してあるからゆっくり休んでちょうだい。エリス、シュウ君。みなさんを案内してあげて」
「はい、お母様」
「ハイ、お母上様!」
「ここが共同トイレよ。学院のトイレとは違うから今から説明するわね。シュウ君!? 何!女子トイレの説明を聞こうとしてるの!? シュウ君は男子トイレを説明してちょうだい!」
「ハイ……」
ついついエリスの説明を聞き入ってしまった……
僕は、男性陣を引き連れて男子トイレに行った。
「なんじゃこりゃーーーーーーっ!!!! 全部個室だと!? 座る所に水があるぞ!? どうなってるんじゃーーーーーーっ!!!!」
トイレに関して一番驚いていたのは、デッチャンだった。トイレ内でのコミュニケーションは苦手だって言ってたからな。
デッチャンは個室に分けられているトイレを見て驚愕していた。水洗トイレも初めてだったようでもの凄く感動したようで、便器を抱いて大号泣をしていた……
それを見ていた僕ももらい泣きをしてしまった……
「おお、神よぉぉぉぉ! このような神器『共同トイレ&換気扇&洋式トイレ』を!…… 私、デッチャンは、生涯をかけてトイレの神『ハルタン様』に忠誠を誓いますぅぅぅぅ!」
――デッチャンが神に忠誠を誓っていた…… その神って、『たぬき』だぞ…… それで良いのか?
さすが!体を張ったよごれ役が似合う漢デッチャン・ライダー!ということだろうか……
次は大浴場に案内してみた。
「マジか!? こんな風呂! 初めてみたぞ! 学院の浴場とは大違いだぞ! 湯船もあるぞ!」
――まぁ、学院の浴場は大きなタライにガチな水浴びだけだもんなぁ~ 筋肉をより良く引き締める為に敢えて冷水! 真冬はガチで死にます!
「一通り案内が終わったお風呂に入ってみるか?」
「案内なんてどうでもいい、早くお風呂に入りたい!」
――みんな、温かいお湯に飢えてるんだろうか…… お前たちの筋肉愛はどこへ行ったんだ!
「まぁ、落ち着けって。あとは、今日お世話になる部屋の説明だけだから、そのあとでみんなで風呂に入ろうぜ」
「おう!」
男性陣が大浴場に燃えている…… お前ら、本当に筋肉愛はどこへ行った……
――!? んっ! まさか、お前ら浴場の湯けむりを使って、幻想郷をイメージしたシチュエーションでご自慢の筋肉を披露したいだけじゃないのか! 悔しいかな筋肉増量禁止条例が発令させている僕にそんなにプロテインを飲んで筋肉増量になったパーフェクト・ボデェを見せたいのか! あたい悔しい…… すごく悔しい…… ガチで悔しい……
「じゃあ、次は部屋へ案内するよ」
僕は、悔しい気持ちを抑え、みんなを部屋に案内をする。
「ここが照明器具のスイッチだ。ここを『カチッ』とすると部屋が明るくなるから」
「ギャァァァァァァラクシィィィィィィーーーー!!!」
「目ガァァァァー! 目ガァァァァーー!!」
「目がまぶすぃぃぃぃい!」
――フフフフ。驚いたろ? マジで驚いたろ? この異世界には照明器具というものが無い。照明といえば臭い匂いのする蝋燭しかない。しかも全然明るくない。マジで明るくない。それがどうだ!この明るさ!参ったか!!
他人のふんどしで相撲を取っているのにドヤ顔の自分に吐き気がする……
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