第8話 新・三位一体
三位一体のパーフェクトボデェに、感動で倒れたレイニーを介抱しながら、コイツはコイツなりに、筋肉の事を理解したんだなぁと感動で涙を流す『シュウ』です。
このままでは学院長との話しが進まないのでレイニーをそのまま床に寝かせ、学院長へあいさつをした。
「フロンシニアス王国第三王子ロッシュウ・ニオ・アルパトスと申します。この度は三年間お世話になります。よろしくお願い致します」
「おぉ、これは、これは、長い旅路でお疲れではないですか? トレスベン学院学院長を努めて参ります。ポウジン・グランドです。有意義な学院生活が送れますよう願っております」
「ありがとうございます。ポ…… ポウジン・グランド様、初めての旅でしたが、民の生活や文化にふれとても有意義な旅になりました」
危うく『ポウジング・ランド……』と言いそうになった。
「それは、それは、ようございましたな。どうぞ、ソファーに」
「ありがとうございます」
僕はソファーに腰を掛けた。学院長も自慢の筋肉を見せつける様に歩きながら僕の対面のソファーに座った。
「ところでロッシュウ様、フロンシニアス王国王族のあなた様が私に『様』を付ける必要はないのですぞ」
「ポウジン・グランド様、王族であっても私は、この学院に入学し師事を受ける者として尊敬と敬愛を考えれば当然の事だと思います。王族の者としてでは無く、一般生徒として扱って欲しいのです。出来ましたら、貴族でなく平民として学院生活を送りたいのです」
「ほ~ どうしてそのような事を申すのですか?」
「はい、私は王族、貴族の中では無く一般生徒の中で勉学に励み、民の考えや風習などを知り、いずれ帰郷するフロンシニアス王国の全国民ため、王族貴族の考えと民の考えどちらにも偏らず中道の考えを持ち、どちらにも最善の政策で全国民の安寧と幸福の為に、この身を捧げる所存です。そして、国王陛下並びに兄上達の助けになれればと、その為にどうしてもこの機会が必要なのです」
「おぉ! そのようなお考えでしたか! それは素晴らしいお考えですぞ! わかりました。そのように手配をしておきましょう!」
――僕の好感度はきっと右メロン肩上がりの爆上がりだと思う!
ポウジング・ランド様…… 間違えた! 学院長ポウジン・グランド様は僕の言葉を信用したみたいだ。生徒の言葉を教師が信じ、また教師の言葉を生徒が信じる。心通う師弟愛だなぁと感動映画を彷彿させる出来事だった。
本音は…… モブ顔の王族の立場を隠し平民に溶け込む。つまり平民という隠れ蓑を着て学院生活を過ごす事が僕の秘策である。
「それでは、フロンシニアス王国のプロテイン商人の子息と言う設定でどうですかな?」
学院長が有難い提案をしてくれた。 ――プロテイン商人の子息って…… 素晴らしい! さすがは学院長、頭の切れる御仁だ!
「ありがとうございます。ご提案感謝します。では、そのように話しを進めて下さい」
「職員にも一般生徒として接するよう伝えておきますぞ」
「はい! よろしくお願いします」
「ロッシュウ殿、入学早々、全学院生の交友を深める為、サイドチェスト祭が開催される予定になっておる!」
「ほぉ、サイドチェスト祭とは、どのような催しなのですか?」
――サイドチェスト祭…… 何かパーフェクトボデェに関する行事だと直感した。
「漢と漢が己の肉体を賞賛しあう大会じゃ! また女子生徒もしかりじゃ!」
――単なるボディービル大会かよ!
「わ、わ、私には、その肉体が足りないのです!」
僕は、留学《追放》決定時のトラウマが蘇り、学院長、秘書、職員の前で恥も外聞もなく大号泣した。
相変わらずレイニーは倒れたまま放置プレー中だった。
「――ロッシュウ殿、落ち着きを……」
学院長の言葉に我に返り、自分の行いに対し詫びた。
「己の不甲斐なさに…… お見苦しいところをお見せして申し訳ございません」
「いや、いや、ロッシュウ殿は勘違いされておる。サイドチェスト祭とは、お互いの交友を目的とされておるが、大切なのは『心』『技』『筋』なのじゃ!」
「『心』『技』『体』ではないのですか?」
「いや、『心』『技』『筋』! 『心』『技』『筋』!
『心』とはライバルは昨日の自分、昨日の自分に打ち勝つ心の強さ、筋肉愛じゃな! 『技』とは筋肉に対しての尊敬、敬愛を持ち、そして筋肉の知識と筋肉をイジメ抜く技術のことじゃ! 『筋』とは筋肉のスジ一本、一本に筋肉愛を注ぎ込み鋼の肉体を作り、美しく力強いポージングフォームを生み出すのじゃ!」
「今から…… 今から鍛えたのでは遅くはないのでしょうか?」
「その為に、この三年間、トレスベン学院で知識と技術を納め、立派な紳士淑女へと成長するのじゃ! ロッシュウ殿も安心されるがよい! 昨日、今日の自分より明日の自分自身を信じるのじゃ!」
「――ハイ! 今のお言葉、肝に銘じて精進して参ります!」
僕は学院長ポウジン・グランド様の言葉に感銘受け返事をした。
それと同時にある疑問を浮かび質問をした。
「ポウジン・グランド様、一つ質問してもよろしいでしょうか?」
「私で答えられるのであれば、どうぞ」
「ありがとうございます。 ――ポウジン・グランド様方は、いつもその様な装いなのですか?」
「ワハハハハハハハッ! 我が肉体《筋肉》は鋼の鎧、これこそが正装なのだ! 秘書の二人を見て見なさい。紳士の嗜みとしてネクタイをしているではないか!」
よく見ると秘書の二人はビキニパンツ一丁にネクタイを締めていた……
――こ、これこそが紳士の嗜み! 改めて感銘を受ける僕だった……
こうして、学院長との有意義な対面は終わり、倒れているレイニーを引き摺りながら寮へと戻るのだった。
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