第76話 第三王子は 屈辱を味わう!
「洗脳魔法で傀儡人形にしてしまいますよ」とは、言ってはいけないと思い気持ちがテンパっている『シュウ』です。
「バットが嫌だと言ったら諦めてたよ。さすがに洗脳魔法を使って傀儡人形にするとか、もうしないよ。安心していいぞ」
「――!? もう…… 洗脳魔法…… 傀儡人形……」
「バットどうした? そんなにプルプル震えて?」
プルプルと震えはじめたバットを気遣い声を掛けた。
「俺が仲間にならなかったらどうしたんだ? ま、まさか、洗脳魔法…… 傀儡人形…… にしようとしていたのか? エリスさん?」
「ホントにそんなことしないって! ホントよ!」
「ホントかぁ? 信じて良いのか?」
――バットは、エリスを疑い始めた。僕は何かマズいこと言ったのかな?
「バット様! そこまでです! 未来のフロンシニアス王国王妃に向かって非礼は許しませんよ!」
突然、レイニーがエリスを護るように現れた。
――いつもながら急に出てくるよなぁ。いつもどこから現れるんだろ?
急に現れたレイニーにバットは呆然とした表情で、
「未来のフロンシニアス王国王妃? どういうことだ? 誰か説明をしてくれ」
「この私、不肖レイニーがご説明いたします」
「ああ、よろしく頼む」
バットは、力弱く返事をした。
レイニーは、フロンシニアス王国の紋章の書かれた小さな箱をバットに見せつけ言い放つ!
「一同! モブ第三王子の御前である! 頭が高い! 控えおろう! こちらにおわすお方をどなたと心得る。恐れ多くも未来のフロンシニアス王国王妃エリス・フォンティーヌ様にあらせられるぞ! 控えおろう!」
――なぜ? 僕の紹介じゃなく、エリスの紹介なんだ? しかも、ハッキリとモブ第三王子と言いやがった!
「モブ第三王子って、だれ?」
バットは、レイニーの狂乱行動に混乱に陥り、真顔になって『モブ第三王子って、だれ?』と口にした…… モブ第三王子って僕のことだから…… 悲しいなぁ……
「バット様、あなた様の目は節穴ですか? 目の前にモブが居るじゃないですか」
――今度は、モブ第三王子からモブに略しやがった。レイニー、君は確かフロンシニアス王国第三王子で王太子でもある僕の専属メイドだったよね?
「シュウか? そんなわけないじゃん! あのシュウだよ! フロンシニアス王国が崩壊しちゃうじゃん? えっ!? マジなの? ホント?」
――バットの熱い目線が僕を焦がす…… だから、こっち見んな! いつものバットならそんなこと言わない。どうした? 壊れたか?
「静まれ、静まれぃ ! このモブ顔が目に入らぬか!」
レイニーさんが、僕の後頭部を掴み、バットに僕のドアップを見せつけた…… 『キャーッ!』そんな間近じゃ、照れるじゃないか……
「ホントにホント?」
マリーとエリスは何も言わず、ただ、頷いていた…… なんてヒドイ扱いだ……
「本当か? シュウ?」
「バット。申し訳ないが本当だ! こんなモブ顔でもフロンシニアス王国第三王子であり王太子だ」
僕は、これ以上の無い最上級の満面の笑みで答えた。
「うそだぁ~」
「僕を信用できないのか!」
「出来る訳ないだろ、その笑顔がすでに胡散臭い……」
――また胡散臭いって言われたぁぁぁぁ! もうHPがマイナスです……
「シュウ君、大丈夫よ! シュウ君はお義父様とお義母様にそっくりだから……」
「そうです。残念なところが……」
――折角、エリスが僕にフォローを入れてくれたのに、レイニーのヤローがとどめの一撃を入れてきやがった! もう立ち直れません……
「しょ、証拠はあるのか?」
――バットは疑い深い性格にクラスチェンジしたみたいだな。誰のせいだろう?
僕はいつも大事に持ち歩いている敬愛している、父上と母上の肖像画を差し出した。精巧に書かれた肖像画であるが、いたるところがマシマシになっている肖像画だ!
「バットこれを見てくれないか?」
「これは、誰の肖像画だ?」
「僕の父上と母上、つまり、フロンシニアス王国ブルース・マリエス・アルパトス国王陛下とセリーナ・カイル・アルパトス王妃殿下の肖像画だ」
「――!? かなり美男美女じゃないか? シュウ、お前、全然似てないぞ?」
――何を言っているんだ。バット! 僕は2人にそっくりじゃないか! 今からこの僕がそっくりなところを教えてやる!
「バット、良く見てくれ。父上の耳だが、僕にそっくりじゃないか?」
「そうだな。確かに似ているが……」
「次は鼻だ。 母上の鼻を見て欲しい」
「これもなんとなく似ているな」
「次は口だ。これは、父上の口を見てくれ」
「おお、確かにシュウの口に似ているが、目はどちらにも似てないぞ?」
「目は先代国王つまり、僕の祖父だ! 僕が小さい頃、よく祖父の目に似ていると言われたもんだ……」
「パッと見、似てないがパーツごとに見るとお二人ににそっくりだな…… す、すまない。シュウ、疑ってしまって」
「良いさ、バットが言いたいことは、僕が良く知っている……」
「ま、まさか、すべてのパーツが揃うとは…… 奇跡としか言い様のない…… プッ、すまない失言だった……」
――なぜ? そこで吹き出す…… 屈辱を感じるのはなぜだろう―― げせぬ
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