第73話 第三王子は邪神を復活させる!
またもや空気と化した『シュウ』です。生きていくのがツライです。これでも一応、主人公なのに……
ようやくまともな話し合いが始まった。
「マリー、一号生のみんなにはどうしたら良いと思う?」
僕は、マリーに聞いてみた。
「ん~、今は何もしない方が良いと思うわ」
「どうして?」
「私のように心が筋肉で出来ていないと問題が起きるかもしれないわよ」
「問題?」
「ええ、魔法が衝撃過ぎて、受け入れてもらえない可能性もあるから。先ずは、副筆頭のバットに話してみてはどうかな?」
「バットかぁ……」
「シュウ君。バット君なら信用出来ると思うけど……」
「それはわかってるよ。何かあったらバットに迷惑かけるんじゃないかって、考えてしまって」
「私なら迷惑をかけても良いって事?」
「い、いえ、そんなことは無いです。はい」
「今のは、シュウ君が悪いわ」
「すみません。つい、聖女オブ聖女なら良いかと思って」
「いくら私が聖女でもそれは、アウトだわ」
「――!? マリー。今、私が聖女って言わなかった?」
「えっ!? 私が聖女だって言ったわよ。何かおかしい?」
「ハァ!? マジもんの聖女様なの?」
「そうよ。さっきからそう言ってるじゃない」
「あれ? シュウ君、知らなかったの? マリーは教会が認めた正真正銘の聖女様なのよ」
「マジかー!? もうなんだよ! その追加設定みたいな後付けは! これが異世界の常識なのか? この異世界、意味わかんねーよぉ! 聖女オブ聖女が本物の聖女オブ聖女だったとは……」
「――シュウ。さっきから異世界がどうとか…… ――!? まさか、シュウ。君は新作小説でいうところの異世界からの転生者か!?」
「あちゃ~、シュウ君、やっちゃたね~」
「ハッ!? ごめん……」
――やっちまった…… 動揺すると口が軽くなってしまう。なんとか誤魔化さないと……
「シュウ、どういうこと?」
「え~と、異世界とか何のことだろ?」
「何を誤魔化してるの?」
「……………………」
――ダメか。 最後の手段だ!
「3,2,1,0! ダッシュ!」
僕はその場から逃亡を図った―― その瞬間、後ろからレスリング顔負けの高速タックルを喰らった! 床にうつ伏せの状態で倒れ込んだ。何があったのか恐る恐る背中の方を見ると、高速タックルをかましてきたのはマリーだった。
「私から逃げきれるとでも思ったか! ワハハハハッ!」
邪悪に高笑いする聖女の姿があった…… まさに、邪神そのもの。俗にいう邪神ご降臨とは、このような光景だろうなぁ……
『悪役聖女は邪神の如く高笑いする! ~邪神は異世界で降臨する~』
僕の中で新作小説のタイトルが決まった!
「ぐ、ぐぬぬ」
「さあ、シュウよ。もう言い逃れは出来ないぞ。かつ丼でも食べてみるか? 私の取り調べはきついぞ」
「もうシュウ君、マリーは味方なんだから教えてあげたら?」
「そんなことしたら僕の秘密がバレるじゃないか」
「なに!? まだ、秘密があるのか? それならその秘密とやらを白状してもらおうか?」
マリーは素早く両腕を離し、そのまま僕の体に跨がり、背後から両手で僕の顔面を掴み、僕の上半身を後ろに反らせた。
「シュウ君! この技、見たことがあるわ! 確か…… そう『キャメルクラッチ』よ! 早くギブアップした方が良いわ。早くしないとラーメンの麺にされちゃうわよ!」
「早くギブアップした方が良いんじゃないか? シュウ、ラーメンの麺にはなりたくないだろ?」
それでも、僕は贖う。
「――エ、エリス。なんで某超人プロレスアニメを…… し、知っているの?」
――ボケにはちゃんとツッコミで返してあげるのが漢の優しさと強さ……
「えっ!? なんで知っているかですって? 知っているから知ってるの」
「――答えになってないよ……」
――もはや、通常のツッコミでは対処出来ないレベルまでエリスは成長したんだね。嬉しいよ…… うっ、背骨が折れる……
「ギ、ギブアップ……」
マリーは僕から手を離し、とどめの一言。
「チィッ、はじめから素直に白状すれば良いものを手間をとらせやがって!」
――!? 前にも同じようなセリフを言われたことがあったぞ? もしやデジャブか?
「さあ、シュウよ。聖女マリーの前でお前の秘密とやらを晒すがよい」
――マ、マリーの……く、口調がおかしい? 聖女オブ聖女は、そんなこと言わない! ぼ、僕が本当に邪神を復活させてしまったのか?
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