第72話 第三王子は空気になる!
マリーとの話し合いで空気となり、海中の漂うクラゲのようにフラフラ浮いている『シュウ』です。
――次の日の夕方、エリスが帰ってきたとレイニーが教えてくれた。
僕は早速、エリスに会いマリーはどうなったのか聞いた。
エリス曰く、マリーはハルタンに着くなり驚いた表情だったが、そこはマリーやはり壊れることは無かったそうだ。
銭湯風お風呂やトイレ、さまざまなところを見学したという。その中である物に大変興味を持ったらしい。エリスは恥ずかしそうに僕に教えてくれた……
僕は男だからよくわからないが『使い捨て生理用品』にいたく感心したらしい。マリー曰く、これは画期的な品物みたいで是非、世の中の女性の為にこの生理用品を広げて欲しい。そして、マリーを通じて販売させて欲しいとのことだった。
これから僕たちがやろうしていることは資金も必要になるかもしれないと、その為に資金作りをした方が良いとの提案されたそうで、エリスも賛成している。
そういえば、詳しくは避けるが、月血を隠すために赤色肌着や赤色のスカートを履いたりと多くの女性たちが苦労していると聞いたことがある。
そんな、女性たちのこと考えているあたり、やはり聖女はどこまでも聖女なんだと感心してしまった…… レイニーとは大違いだな!
マリーは、冬休みにはハルタンへ赴き、ハルタンの人々と交流を重ねながら、魔法の特訓することになった。
そして、エリス監修の元、僕をモデルとした新作BL本を執筆するとのこと…… なんでこうなった?
◇
冬休みに入り僕たちはハルタンを訪れた。僕は魔法と相撲の特訓。マリーも魔法の特訓と新作小説の執筆。エリスは僕たちの指導と新作小説の監修を挿絵の書いている。空いている時間には改革の話し合いを重ねた。
僕の魔法の特訓は、お母上様の提案で土魔法を中心に特訓している。土魔法って防御系の魔法が多いのには驚いた。
あと、土魔法と重力魔法を併用させ土管を作っては壊し、作っては壊しを繰り返している。下水道に使う土管だ。土魔法で土管の形を作り、重力魔法で圧縮させ固める。この調整が微妙で圧縮が低いと強度不足になり、高すぎると破壊してしまう。安定した生産が出来ればいろんなことにも応用できる。例えば、均一化された石畳などアイデアしだいではいろんな物を作成することが可能になる。やったるぜ!
マリーの方は、魔法属性か治癒属性、時空属性とわかり魔法の特訓に明け暮れ、瞬間移動も習得し、毎日のようにハルタンへ通っている。新作小説も着々と進み、公爵令嬢の権威をフルに使い小説を出版する予定らしい。
エリスはというと僕とマリーの師匠として、またマリーのマネージャーと大忙しでソフィアちゃんと遊ぶ時間が少なくなったと嘆いていた。4時間も遊んだら十分と思うがそれでも、足りないらしい。
最近、レイニーもエリスの影響か相撲の沼にはまり、サムソンたちと日夜、相撲の稽古に明け暮れている。そのお陰で僕に構う時間が無いらしく、すっかりメイドのお仕事を放棄している。まあ、最初から放棄しているので気には止めていない…… それで良いのか?
◇
冬休みも終わりに近づき僕、エリス、マリー、レイニーでこれからの計画について話し合った。
僕はみんなに問いかける。
「マリーも魔法を習得したし、これからどう進めるべきだと思う?」
「そうね、マリーの新作も完成に近いし、発売をどうするかね」
「そうね、作者側から言わせてもらえれば、最初は部数を少なくして、読者の反応を見たらどうかと思う。 魔法に関して嫌悪感がどれくらいあるか知りたいし」
「そうね、マリーの意見が正しいと思うわ。それじゃ、その方向で話しを進めるわね」
――エリスがマリーの意見に賛成らしい。僕は、新作小説には強制的にノータッチなので意見を求められることはない…… かなしいなぁ……
「一つよろしいでしょうか?」
「レイニーさん、どうしたの?」
「新作を読ませて頂いたのですが、マリー様、どうもモブ第三王子に対して漢《ヒロイン》のツンデレ要素が足りないかと感じました」
「それは本当!? レイニーさん! その辺を詳しく教えて!」
「そうですね…… 例えば、モブ第三王子がほかの漢を助けたあとの漢反応とかモブの反応とかですかね」
「やはりそうか、何が足りないとは思っていたわ……それで、レイニーさんはどうすれば良いと思う?」
「詳しくはレーニャ師匠から的確なアドバイスをしていただけると思います」
「レイニーさん、申し訳ないけど、レーニャさんを呼んで来てもらえない?」
「それでは早速レーニャ師匠をお呼びしてきます」
「レイニーさん、私からもお願いがするわ」
「ハイ、エリス様」
――な、なんなんだ!? そのツンデレ要素とか。レイニー、お前が言うと『ツンデレ』じゃなく『ツンバト』になるのは確定的だろ! しかも、極悪最狂のレーニャさんまで呼びに行くとは。『ツンバト』からさらに『ツンアク』に確変決定じゃないか! とどめの一撃と言わんばかりにモブ第三王子なのに最後はモブに省略しやがって! モデルはこの僕だぞ!
僕は叫びたくなるのを我慢して心の奥底で叫んだ!
それから四人は、新作の話しで盛り上がってた。その場にいた僕は、またもや空気と化した…… この時間がツライ……
そして、ようやく新作小説の話しも終わり、まともな話し合いが始まった……
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