第59話 第三王子は挑む!
お読みいただきありがとうございます。
今回からミノノモンタ先生の方言講座となります。
途中で挫折しないようご注意ください。
意外にも一発屋侍芸の沼に落ちていきそうな『シュウ』です。ものすごく楽しいです!
――母上が父上に対して自作自演をするとはなかなかの役者だ! これが、王妃たる者の本性なのか?
母上が父上に治癒魔法を掛け、父上は復活した。治った瞬間、あまりの恐怖で母上と一緒に居たくないのか、お父上様やサムソンさんたちの所へコソコソと逃げて行った……
「せっかく治したのにすぐ居なくなるんだから」
――母上はいかにも自分は悪くない! というスタンスは変える気は無いようだ…… 父上にトラウマが刻まれませんように…… ハルタン様、お願いします。父上の為に神頼みをしてみたが、多分、ハルタ様は神の世界で腹を抱えて笑っていると思う! なぜなら、お笑いの違いがわかるたぬきなのだから……
母上は愚痴りながら今度はレイニーに治癒魔法を掛けていた。
「レイニー。あなた強くなったみたいね」
「いえ、セリーナ様、陛下には全然歯が立ちませんでした」
「そんなこと無いわよ。あの人に身体強化4倍を使わせたんだもん」
「身体強化の魔法わね、倍数が上がれば上がるほど、次の日には……」
「『――ゴクリ』 次の日には……?」
「筋肉痛になるのよ……」
「――!? それだけですか?」
「そうよ。年を取ると辛いのよ筋肉痛は……」
「はぁ、筋肉痛とは辛いものなんですか?」
「辛いも何もホント、辛いのよ。レイニーはまだ若いからわからないと思うけど、私も8倍使ちゃったからね。明日から大変よ。明日、王宮に帰れるのかしら……」
「そ、そうなんですね。セリーナ様、王宮に戻られれば良いですね」
「ええ、あなたにもわかるようになるわ。衰えという悲しき性を……」
「………………」
◇
「おう、シュウ! いっとま わのほうさ きでぇけろ」
ミノノモンタさんが僕に声を掛けて来たが何を言っているのかわからない。前に会った時と方言が違う気がする。ここは、グー〇ル先生と同様に何でも知っているエリス先生に聞いてみよう!
「エリス。ミノノモンタさんに『いっとま わのほうさ きでぇけろ』って言われたんだけ意味がわからないくて…… 前と方言も違うし、エリスはわかる?」
「わかるわよ。あれは南部弁ね。訳すと『ちょっと、ミノノモンタさんのところに来てくれ』と言っているのよ。ミノノモンタさんは方言研究家だから様々な方言を使うわよ」
――グー〇ル先生と同様に何でも知っているエリス先生! 聞いて大正解だったよ。 あのたぬき南部弁も知っているのかよ…… 青森県の県南地方の出身者か? 間違った! 青森県の県南地方の出身たぬきか?
「じゃ、エリス、ミノノモンタさんの所へ行ってくるよ」
「私も付いて行った方が良いんじゃない?」
「どうして?」
「シュウ君、南部弁わかるの?」
「全然、わからん」
「でしょう」
「じゃ、エリス、一緒に行こう」
「うん」
――こうして僕は、あまりにも難解すぎて通訳必須の津軽弁と双璧をなす南部弁に挑むことになった。
「ミノノモンタさん。どうしたんですか?」
「いがさ わがぁ もってぎた りんごくわせたぐで よんだべな」
「エリスさんお願いします。」
『あなたに 私が 持ってきた リンゴを食べさせたくて 呼びしました』
――持って リンゴ 呼んだ。しか、わからなかった。難解すぎる……
「食べます! リンゴ大好きなんで頂きます。」
ミノノモンタさんは、僕とエリスに青リンゴを1個差し出した。
「かっ けっ」
『さぁ 食べて』
「「いただきます」」
リンゴを丸かじりした瞬間
――!? なんだ、このリンゴは! 果汁がこれでもかと溢れだし、適度な酸味の中にリンゴ特有の蜜の甘さとシャキシャキした食感が口の中を駆け巡る! マジでうますぎるんだが!
「ミノノモンタさん! このリンゴ、うますぎです! 何ですかこのリンゴは!」
「これは美味しいわ! この蜜の甘さがたまらないわ!」
「んだべ わが つぐってた リンゴはんで うめぇに決まってんべぇ ほんだすけ ちゃっちゃど けっ」
『そうだろ 自分の 作った リンゴなんで うまいに決まっているさ だからさっさと食べろ』
「「ハイ」」
僕もそうだが、エリスもこのリンゴが気に入ったようだ! 僕はミノノモンタさんに質問をした。
「それで、このリンゴはなんて名前?」
「ぐん〇名月って名前だじゃ」
『〇んま名月って名前だ』
「ぐ〇ま名月っていうんだ! ホント、美味しくて何個でも食べられよ」
「ホントね。名前はぐん〇名月だけど名産地は青森県なのよ。シュウ君、知ってた?」
「知らなかったよ。ぐ〇まなのに青森県?」
「そうよ。ハルタン様の故郷、県南地方でも生産されているわ」
「ミノノモンタさん。なんで青森名産のぐ〇ま名月がハルタンあるんだ?」
「なして? へられでも ハルタン様のおがげだじゃ 突然、ぐ〇ま名月って書がれだ看板の後ろに苗木生えでぎで 育でだらうめぇリンゴでぎだんだじゃ」
『どうして? 言われても ハルタン様のお陰だ 突然、ぐ○ま名月と書かれた看板の後ろに苗木が生えてきて 育てたらうまいリンゴが出来たんだ』
――あのたぬき、異世界だからって好き勝手やりたい放題だな……
「まぁ、良いか。おいしいリンゴも食べれたし」
「これも飲んでけへ」
『これも飲んでみて』
「これは?」
「姫様とつぐっだぁ さげっこだぁ」
『姫様と作った酒だ』
「エリス、お酒も作れるのかい?」
「ええ、作れるわよ。まだ、シュウ君には飲ませてなかったけど、少しなら飲んでも大丈夫じゃない?」
――王宮に居るときは飲み水が貴重というか汚染されまくりで飲める水がすくなかったからなぁ…… 代わりにビールとか果汁酒なんかも飲まされていたんだよな…… 今考えると小さいときからアルコール漬けだったんじゃないかな。衛生上しょうがない…… 言っておくが僕は、呑兵衛じゃないぞ!
「じゃ、少しだけ」
ミノノモンタさんは、コップにお酒を注いでくれた。透明なお酒で匂いもフルーティー!僕は、一口飲んでみた……
「なんじゃこりゃぁぁぁぁー!?」
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