第53話 第三王子は父上と母上から爆弾発言される!1
「そうか…… 私がまだ王太子の頃の話しだ……」
『ゴクリ……』
僕は、緊張のあまり唾を飲み、昔のサ〇エさん並みに『んがッぐっぐ』と喉を詰まらせる『シュウ』です。
「私とシュウ、お前の母親であるセリーナと地方視察という名の婚約旅行に馬車で出かけたときにだな、とある谷の崖路を通った時、馬車の車輪が崖路から踏み外し、馬車ごと谷底に落ちたんだ」
「そうなのよ。私たちまだ、結婚式もしてないのに死んじゃうって思ったわ。せめて結婚式が終わってからにして欲しかったわ」
「…………」
――父上の話しを聞いて驚愕するところだが、母上が何を言っているのか、わからない」
「私も、もうダメと覚悟を決め、セリーナに抱き付いた」
「イヤ~ン ブルースったら!」
「…………」
――父上、何かが違う!
「そうしたら、なんと……」
「なんと……」
僕は、父上の話しに身を乗り出した。
「なんと馬車が浮いたのよ! あの時はビックリしたわ!」
――母上から絶妙なタイミングでネタバラシ!
「セリーナの言う通り、馬車が浮き上がり元の崖路まで戻ったんだ。私たちが馬車から出るとそこには、アリエスとマルクスが立っていたんだ。私たちが声を掛けると『魔法』を使って助けたと教えてくれ私たちの治療までしてくれたんだ。その時の従者だったライアンとクリフも一緒に治療してくれてな」
「そうなのよ。アリエスとマルクスは、私たち4人の命の恩人なのよ。みんな同年代だったから仲良くなったの。それで、お友達になったのよ。お喋りしてたらもう遅い時間になっちゃって泊まって行かないかって言われて、私たちはお言葉に甘えて魔女の村『ハルタン』まで連れて行ってもらったの」
「そのような事があったんですね。それでハルタンに訪れた時、落ち着いた態度だったんですね?」
「うむ、なかなかハルタンには来れなかったが、お前たちが産まれる前は何度も訪れていたんだぞ」
「へぇ~。父上と母上は禁忌になっている魔法が怖くなかったんですか?」
「ん、馬車が落ちている時に魔法は体験したからなぁ~。まぁ、最初は驚いたが相手がアリエスとマルクスたちだったからな。普通に話しも出来るし、私たちと何一つ変わらないしな。禁忌とか言ってるヤツ等の方がどうかしている。話し合いさえすれば良き友人になれるものを……」
「……………………」
「あっ! そうだ。ママが、シュウちゃんに良いものを見せてあげる」
――母上。正直、『ママ』は、心に会心の一撃並みのダメージが入るので止めて下さい……
「シュウちゃん、あなたも魔法が使えるっていうじゃなぁ~い。 『ジャーン!』 私も魔法使えますからっ! あなただけが魔法を使えると思ってたら大間違い切りっ!」
――!? それ、ギターを持った一発芸人侍じゃねぇーか! ツッコミの場所が違うって? 母上も魔法を使えるのか!? 親子二代の魔女と魔法使い!? マジかよ!
そう言って、母上は掌を差し出した。
「母上。生命線が長いですね。あと、金銭運も」
「手相占いじゃないわよ! よく私の掌を見なさい」
掌に小さな炎が螺旋階段のように伸びたと思った瞬間、小さな炎の竜巻へと変化した!
「母上。本当に使えたんだ!? しかも、無詠唱じゃないですか! さらに火炎魔法と風魔法の複合魔法! いつ魔法をおぼえたんですか?」
「ハルタンに訪れた時にアリエスから教えてもらったの。火属性と風属性が私の持っている属性よ。」
――奥さ〇は魔女。ならぬ、ママは魔女?
「ブルースもシュウちゃんに見せてあげたら?」
「おお、そうか。シュウも見たいか?」
「是非、見てみたいです」
父上は僕に掌を差し出した。
掌には、小さな竜巻が発生した! 竜巻は『バチッ! バチッ!』音を鳴らしと稲妻が光っていた。
「ち、父上!? これは?」
「風魔法と雷魔法だ。私の属性は、風と雷と闇だ」
――ママは魔女&パパは魔法使い!? 母上と父上は魔法を僕が産まれる前から使えてたんだ!?
『魔女と魔法使いの息子は10属性持ち!最強チートの魔法使い』 マジかよ! これ、投稿小説のネタになるんじゃネェー! 僕は書かないけど……
「父上、母上。なぜ? ずっと黙っていたんですか?」
「「……………………」」
沈黙の後、父上と母上は重々しく口を開いた……
「私たちに世の中を変えるだけの力が無かったからだ……」
「そうよ。当時は今より、魔女や魔法を肯定するには厳しい時代だったの」
「先ずは、当時、国教だった。アポー正教会は魔女批判の急先鋒のようなものだったからな」
「それでね。ブルースが国王になってから、貴族の反対を抑え『宗教の自由』を公布し、国教を定めない事にしたのよ。おかげで、数多くの宗教団体が申請して来たけど、直接、私たちが審査をして、魔女や魔法を批判するような都合の悪い宗教団体は、言いがかりを付けて受理しなかったわ」
「どおりで、フロンシニアスに国教が定められていなかったのかがわかりました」
――フロンシニアス王国では、数多くの宗教はあるが、一定の力のある宗教は存在しない。
「私たちの代では、我が国民とハルタンの人々との友好は、混乱を招くだけだと判断して、次世代に託すことにしたの。私たちが出来る事は、ハルタンの人々との融和を邪魔する者の排除だったのよ」
「人々にとって宗教は大切なものだが、政治介入などしてくるような力がある教団は、私たちにとって邪魔でしかないからな」
「……………………」
――僕は、父上と母上が、ハルタンの人々のために、人知れず動いていたことに驚きだったが、そのことがありがたいと思った……
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