第27話 第三王子は魔女の村へ!
魔境の森、魔女の村、魔法。もう何が何だかわかりません状態の『シュウ』です。
魔境の森から一瞬で目の前の風景が変わった……
目の前には20メートル程の高さの城壁と城門。そして、水堀だった。フロンシニアス王国の王都を囲む城壁となんら遜色のない物だった。
僕とレイニーは現実離れした瞬間移動の事実と村を言いながらこれだけ巨大な建造物に腰を抜かした。
「シュウ君、レイニーさん。ようこそ、私たちの魔女の村『ハルタン』へ」
「「……………………」」
――僕は、あまりの事で声さえ出なかった。前世や前々世の世界では、魔法自体なかったし、本当にマンガやファンタジー小説、テレビの世界の物だった。それが、瞬間移動を体験すると脳の思考が追い付かない。まるで、夢を見ているようだった。
「ああ、エリス…… 今、何が起こったの?」
「歩くのが大変だから瞬間移動で村の前まで来たんだよ。びっくりした?」
「ああ、びっくりだよ。森の中に居たのに急に城壁だもの」
「ごめんね、そうだよね。急に魔法って言われても信じられないよね」
「今でも、夢を見てるようだよ」
「村に入ったらもっとびっくりするかも」
「魔物がいるから」
「ハイ!?」
「いろいろと手伝ってもらっているの…… 魔物に」
「テイムってやつか」
「そうよ。魔物は私たちにとって大切な仲間なのよ」
「なるほど、魔物は襲って来たりしないんだよね?」
「ええ、襲ったりしないわ、それに、私たちと同じなの。私たちは魔法が使えるけど人間なの。魔物だって姿形が違うだけでちゃんと生きているの。それでも、差別されたり、恐れられたりしているの。野生の魔物も本来は大人しい生き物なの」
「わかったよ。エリス…… レイニー、そろそろ村に入ろうか?」
「かしこまりました。ロッシュウ様」
「みんなー、私よ! 門を開けて頂戴!」
エリスは城門に向かって声を掛けた。
「姫様! おかえりなさーい! 今、開けますね!」
川の鎧を着た若い男が城壁の上から顔を出し手を振った。すると跳ね橋が降り城門が開らき、僕たち3人は城門をくぐり抜け、中に入った。
「おぉー!? これは凄いな! なぁ、レイニー!」
「立派な城下町みたいですね!? ロッシュウ様!」
――フロンシニアス王国の城下町より数倍発展した村だった。って言うか完全に城下町だろ!
レンガで出来た2階建ての建物が立ち並び、綺麗に整理された石畳の道路、華やかな街風情、しかも、独特の汚物の臭いが一切しない! 道路にも汚物は落ちていない。どうなっているんだ?
「姫様、おかえりなさい。よくご無事でお戻りになりました」
「ただいま、みんなも元気そうで安心したわ」
城壁から顔を出していた警備兵とその後ろには同じ装備をした兵士が3人、エリスを出迎えていた。
「姫様、こちらの方々は噂の方々ですな?」
「ええ、そうよ。こちらが、ロッシュウ・ニオ・アルパトス第三王子殿下と専属メイドのレイニー・エントランさんよ」
「フロンシニアス王国第三王子ロッシュウ・ニオ・アルパトスです。よろしくお願いします」
「ロッシュウ様、専属メイドのレイニー・エントランと申します。よろしくお願い致します」
「ロッシュウ・ニオ・アルパトス殿下、レイニー殿、遠路はるばるお出でくださりありがとうございます。第二警備隊副隊長の『ドール・リンケルホン』と申します。よろしくお願い致します。では、職務に戻りますゆえ、後ほど改めてご挨拶に上らせていただきます。では、失礼」
ドール・リンケルホンさんは、そう言って城門の上に続く階段を部下と共に上って行った。
「ねぇ、エリス。エリスってお姫様なの?」
「お母様がこの村の長をしているの。それで、みんなで私の事を姫様って呼ぶの」
――村って言ってるけど、本当に城下町の遥かに超えたレベルであり、村の長と言うより女王陛下と言っても過言じゃない!
エリス本人は長の娘って言ってるけど、本当は本物のお姫様じゃないのか?
「エリスって確か名前がエリス・フォンティーヌだったよね。大賢者エリス・フォンティーヌ様と同じ名前じゃない?何か繋がりがあるの?」
「私ね、大賢者エリス・フォンティーヌ様の子孫なの!」
「「ハッ!」」
「お母様も私もエリス・フォンティーヌ様の血筋を受け継いでいるの」
「レイニーさん、今の話しお聞きになりました?」
「ええ、確かにエリス・フォンティーヌ様の血筋とおっしゃりました」
「「………………」」
「「それって! ティーファンド王族の子孫ってことじゃねぇーか!」」
「お姫様ってそんな大袈裟なものじゃないから」
エリスは僕たちのツッコミにやさしく答えてくれた。
――エリスはガチのお姫様でした!……
「はぁ、はぁ、もう今日は驚きすぎて疲れた」
「ロッシュウ様、私も疲れちゃいました。今日は疲れたのでロッシュウ様のお世話が出来ませんのでお一人ですべてやっておいてください」
「レイニーさん。それいつものことだよ」
「「「…………………………」」」
「まぁ、こんな所で話しててもしょうがないから村を案内しながら私の家へ行きましょう」
「じゃ、お願いします」
――これだけの規模の城下町を村って言い張るエリスの城下町ってどんな規模の城下町なんだろうか?
エリスに街並みを案内してもらいながら商店街、住宅街を抜け、一軒の大きなお屋敷に着いた。
――予想はしていたがフロンシニアス王国の王宮より大きい! 白い漆喰で塗られた壁、見てるだけで惚れ惚れするお屋敷だった。
「シュウ君、レイニーさん遠慮なく入って」
――エリスは玄関の扉を開けた……
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