第204話 第三王子はチートについて語る!
レイニーは僕達の叔母にあたる事に気付き、その事を話そうとした瞬間、レイニーに殺されそうになった『シュウ』です。お祖父様の中々のやんちゃぶりには呆れ返ってしまう。
まあ、お祖母様の鉄拳制裁で寿命が縮んだとしても本人も満足だろう…… 多分。
「お前、いつからあんな魔法を…… いや、魔導だったな、使えるようになったんだ?」
「2日前です。お母上様からご伝授いただきました」
――2日前
フロンシニアスに戻る前にお母上様からの要請でエリスと共にハルタンへ向かった。
お母上様の執務室に入ると、お母上様、お父上様、マリー、レーニャさん、レイニーがいた。
「シュウ君、いらっしゃい。さあ、二人とも座って」
「はい」
「はい、お母様。シュウ君に大事な話しがあると聞いていましたが?」
「本題に入る前にシュウ君の持っている闇属性の話しをするわね」
「ハァ?」
「あなた自分が何の属性を持っているか覚えてる?」
「それは、勿論。治癒、火、時空、風、雷、氷、爆裂、土、闇、光の10属性です」
「正直言って、かつて大魔導士と呼ばれたロッシュウ・ルーン・アルパトス様の8属性を越えているのよ」
「ロッシュウ・ルーン・アルパトス様は8属性だったのですか?」
「そうよ。だからと言ってロッシュウ・ルーン・アルパトス様と比べたら魔法技法の練度差でシュウ君はロッシュウ・ルーン・アルパトス様に劣るわ」
「ええ、それはわかります。練度の差はこれからの特訓次第と言うことですね?」
「そうよ。あなたの努力次第では、ロッシュウ・ルーン・アルパトス様を確実に素質、実力的にも越えると私は信じているわ」
「お母上様の期待を裏切らないよう精進して参ります」
「その意気よ。あとシュウ君は闇属性の事どう思ってるかしら?」
「闇属性ですか? 闇と聞けばあまり良いイメージはありませんね。復讐とか怨み辛みと言った印象がありますが……」
「普通に考えてら誰だってそう思うわよね」
「ええ」
「でもね。本来の闇属性ってイメージと違うものなのよ」
「イメージと違う?」
「本来の闇属性は人の心の救済なの」
「人の心の救済?」
「人の心は非常に壊れやすいものなの。不安や怒り、先の見えない恐怖、自分の足りないところを見つけたら、自分は駄目なんだと思ったり、自分より劣る者を見れば安心して優越感に浸る。自分より誰かが良い物を持っていれば、その物を…… いえ、それ以上の物を手に入れたいと思う欲求。自分の事を良く思ってもらいたいと、周りの人を謗り、さらに不平不満を漏らし、自分の味方にしたいとか。もっとたくさんあるけど長くなるから…… 簡単には言えば、世の中、綺麗事だけじゃ生きて行けないのよ。善人もいれば悪人もいる。そんなところよ」
「――確かにそうですね」
「人には嬉しいとか楽しいとかの感情もあるけどその逆の感情、負の感情もあることもよく知っておく必要があるの」
「……………………」
「――特にシュウ君にはね。あなたの闇属性は…… 自分の娘を自慢するようで恥ずかしいけれど、魔法の天才と言われているエリスより遥かに優れているの」
「僕の闇属性がエリスの闇属性より優れている?」
「そうよ。ちなみにエリスの光属性はあなたの光属性より優れているわ」
「そうなんですね……」
「ここからが本題よ」
「はい」
「闇属性の本来は人の持っている負の感情を取り除き、浄化する事の出来る属性なの」
「負の感情を取り除き、浄化する? そんなことが出来るのですか?」
「人の闇を克服した、今のあなたなら出来るわ。闇魔法二大奥義、闇魔法究極奥義『深底暗黒闇解放魔法』闇魔法最終奥義『深底暗黒闇救済魔法』を!」
「僕が人の闇を克服した? 闇魔法二大奥義?」
「私も闇魔法二大奥義の事は聞いたことがあるけど…… 私には使えなかったわ」
「えっ!? エリスでも使えない魔法があるの?」
「闇魔法二大奥義だけは習得出来なかったわ」
「それはね。人の闇を知るには自分自身が体験しなくてはいけないの。例えば、悩み苦しんでいる人がいる。その苦しみを知らない者がいくらその人を慰めようとしてもそれは、観念的なものであり、綺麗事なのよ。その苦しみを体験し乗り越えた者が悩んでいる人を慰めたら、同じ苦しみを持った者同士、相手に寄り添い相手の本当の意味でのよき理解者、力になれるのよ。相手に伝えたその言葉を真実語と言うのよ」
「真実語ですか……」
「あなたには申し訳ないと思ったけど、あなたに負の感情を体験させるためにマリーちゃんとレーニャとレイニーさんに協力してもらったわ。辛い思いをさせてごめんなさいね」
お母上様は僕に頭を下げた……
「シュウ…… あなたが傷付けるような事をしてごめんなさい」
マリー僕に謝罪をした…… 僕は夢でも見ているのだろうか
「ロッシュウ様、数々の無礼な行い申し訳ありませんでした」
あのレーニャさんが僕に謝罪をした。僕を騙しているのか?
「ロッシュウ様、申し訳ありませんでした」
レイニーも僕に嫌々ながら頭を下げた。
――レイニーさん! お母上様から僕を闇に落とすようお願いされる前から僕の対する対応は全然変わって無かったですよ!!
「シュウ君、ごめんなさい。私も全部知っていたけど…… 言い訳はしないわ。ごめんなさい」
「エリス…… 良いんだよ。君はずっと僕の側にいて支えてくれていた、ありがとう」
「ありがとう。シュウ君……」
「それに、もう過ぎた事ですので、それにお母上様達は僕の事を思っての事ですから、どうか頭を上げて下さい」
「そう言ってもらえると助かるわ」
「いえ、僕なら大丈夫ですので」
「本当にあなたはよくやってくれたわ。大抵の人は闇に堕ちると、そこから立ち直れなくなり廃人になるの。それでも、あなたは闇のそこから這い上がって、闇を克服して見せたわ」
「僕も闇の底に堕ちた時は、全てがどうでも良くなって、このまま闇の中に居ても良いとまで思いましたが、前前世の妻と前世の幼馴染みが僕を闇の底から助けてくれました。それにエリスが側に居てくれましたから」
「奥さんと幼馴染みさんがねぇ。そうだったの……」
「疑問に思ったのですが、なぜエリスは闇魔法二大奥義を使えないのですか?」
「「……………………」」
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