第188話 第三王子は闇の住人になる!
エリスにトドメの改心の一撃を喰らい轟沈されられた闇堕ちの中の『シュウ』です。
暗闇の中、どこからともなく声が聞こえる……
『むーしょく! むーしょく! むーしょく! むーしょく!♪』
『君は無職 私は無色 同じ むしょく!』
『あなたも無職! 君もニート!』
『無職ってなんだろ ニートってなんだろう』
『無職は失うものは無いよ。究極生命体だから!』
『自宅警備員募集! 世界は今、君を求めている!』
『ニイト ニイト! 楽しいニイト 愉快なニイト! ニイト ニイト!』
『無職と愉快なニートたち』
『ニートと愉快な無職たち』
『長寿番組 無職の部屋&ニートの部屋&自宅警備員の部屋』
『デレンテレ~ン デレンテレ~ン♪ この異世界では職場なと要らぬのだ! オレさまが捨ててやろう。グエッヘッヘ! これで今日からお前は無職だ!』
『また不採用通知かぁ! 悔しいよなぁ! ここまで来たのに悔しいよなぁ! オレさまには関係ないことよ!』
――無職は止めてくれーー!! 僕を無職にしないでくれーー! ニートはいやだーー!
僕は暗闇の中逃げる…… どこまで走っても声は消えることはない。
『おーい! そっちに行っても、お前の職場は無いぞ!』
『逃げても無駄だぞ! 採用試験受けても無駄だぞ!』
『オレたちと一緒にニートになろうぜ! お前にはチート級の才能があるんだぞー!』
『無職バンザイ! ニートバンザイ!』
『キサマのような社会不適合者は、この闇がお似合いなのさ』
『さあ、勇者よ! 社会不適合者となり、勝ち組魔王を倒すのじゃ! 世界の平和は社会不適合者にかかっておるのじゃぁ!!』
――ハァ ハァ しつこい、どこまで走っても声が聞こえる…… もうダメだ…… 逃げ切れない……
僕は走るのを止めた…… その場に倒れ込み
「もう疲れたよ…… バトラッシュ……」
――僕は全てを諦めた…… エリスごめん…… もう全てがどうでもいい…… 就職なんてもうどうでもいい……
『良いぞ 良いぞ! 喜べ、ここが無職とニートの自宅警備員の世界だ! 今からお前は、この世界の住人になるのだ! これより、お前を最上級位特別自宅警備員に任命を命ずる。返事は要らないぞ! お前はそのまま、ここに居れば良い』
こうして、僕は闇の奥底の闇の住人となった……
「あなた! 本当に何やってるのよ!」
「こんなところに居て良いわけないでしょ! もうみんなのところに帰るわよ!」
暗闇から懐かしい二人の声が聞こえた……
「もう嫌だよ。面倒くさい」
「あなたが帰らなかったら、エリスちゃんが悲しむわよ!」
「そうよ! お父さんとお母さんも悲しむわよ!」
「こんなに悲しくて、苦しいくて、嫌な思いをするくらいならここに居るよ。お願いだからもう僕に構わないでくれ!」
「何ひねくれてるのよ! あなたにはやるべき事があるんじゃないの?」
「そうよ! あなた。あなたを信じてくれてる人が居るのよ」
「誰も僕の事なんか信じてくれるヤツなんていないよ」
「そんな事ないよ。私たちだってあなたの事信じてるわよ」
「もうヘタレなんだから…… あの時みたいに根性見せたら」
「あの時ってなんだよ? 根性なんて見せた時なんて無いぞ!」
「忘れたの? あんなに一生懸命だったのに……」
「私との約束も忘れたの?」
「なんの約束?」
「あなたってもうダメダメね。まあ、あなたらしいって言ったらあなたらしいけど……」
「褒めてくれてありがとう」
「褒めてないわよ……」
「えっ!? そうなの? 褒められてるかと思ったよ」
「相変わらず、図々しいところは変わってないわね。人のこと言えないけど……」
「まあ、あなたも結構やらかしたからね」
「もう、私だって反省してるんだから言わないで!」
「なんのことだい?」
「べ、別にこっちの話しよ」
「そうかぁ。僕には関係ないし、まぁどうでもいいや」
「ねぇ、どうする?」
「どうするって言っても……」
「じゃあ、頭の中に脳みそが入っているか確かめてみる?」
「そうだね。確認は大事だし」
『ポカ ポカ』
「スイカじゃないんだからやめてくれよ」
「スイカより良い音がしたわ」
「食べ頃かしら」
「僕は食べ物じゃない! いい加減ほっといてくれ!」
「みんなが待ってるのに、ほっとけるわけないじゃない!」
「この人、たまにすごく頑固なところ有ったよね」
「なんでここでってところで頑固になるんだよね」
「わかる わかる。変なところで頑固になるんだよね」
「ホントに困ったちゃんなのよね」
「私の時は構ってちゃんだった!」
「お互い苦労したのね」
「そうみたいね」
「頼りになんだか、ならないんだか」
「良いところもいっぱいあるんだけどね」
「あなたわかってるじゃない!」
「だってあなたと私は同じじゃない」
「そうだったわ」
「さあ、あなた。グダグダしてないでみんなの所に帰るわよ」
「みんなの所へ帰ろ?」
「嫌だって言ってるだろ!」
「あなた! いつまでイジイジしてたら、救える人も救えないわよ! みんなを幸せにするって決めたんでしょ! しっかりしなさいよ!!」
「そうよ。覚悟を決めたらその覚悟を貫きなさい!」
「でも…… だって…… そんなの出来るわけ無いじゃんか?」
「でも、だってじゃあないでしょ!」
「あなた。座ってないで立って! このままじゃ、本当に闇の住人に為ってしまうわよ。誰もそんな事望んで無いわよ」
「さあ、みんながあなたが帰って来るのを信じて待っているわ。帰るわよ」
「……………………」
僕は自然と立ち上がっていた……
「私たちの声の方向に付いて来て!」
「ああ」
「何を気の抜けた返事してないで、ちゃんと付いて来てよ」
僕は声の聞こえる方向に無気力に歩きだした。
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