第18話 筋肉の三位一体
レイニーさんに『ヘタレウイニング・ザ・レインボー(必殺アッパーカット)』という名の暴言を喰らい、ダウン寸前の『シュウ』です。
何だかんだで、お買い物! お買い物! ポイント5倍! ということで当日になりました。
エリスと待ち合わせする為に商店街へ出掛けたが、後方から千のお面を持つメイド。自称『天才女優』がコソコソと僕を尾行している。
天才女優よ! 巧みに変装しようが、僕の心の眼を開眼させれば、いとも簡単に見付ける事が出来るのさ!
――僕の心眼を『節穴』と言う……
レイニーを撒いても良いが、ゴキ〇リ並みにしつこく、生命力が高いので放置している。
王都の商店街は汚物の臭いは少しはするが、歩道などに汚物が捨てられている様子はない。用足しはおまるで済ませ、その汚物は大きめのツボに入れて溜める、のちに回収業者が引き取り、処理場へ運び肥料の材料にする。家畜の糞尿と同様の扱いをしている。
フロンシニアス王国、アルラサンド王国、サスペイン王国をはじめ周辺国は土地が痩せている。化学肥料、有機肥料、農薬が発展していない。この世界では作物栽培は難しい。糞尿が唯一の有機肥料の材料になるので、税の代わりに糞尿を収めても良いことになっている地域もあるらしい。
アルラサンド王国の王都では汚物を捨てることは禁止され、罰金刑が課せられる。
フロンシニアス王国の王都とは大違いだ! レイニーから聞いたトイレ事情第2弾は、汚物の処理場はあるが、そこまで持って行くのは面倒らしい…… その結果2階から歩道にポイ捨てである。
しかし、さすが我、国民! 一応は良心の呵責は持っている。ポイ捨てする前に通行人へ向け声を掛け、通りかかろうとする通行人は返事と返すという暗黙のルールがあるらしい。
――掛け声は当然……
捨てる人は、
「○○名前! いきまーーす!」
通行人は、
「来い! ○○名前!」
あえて言おう! オールドロボットアニメファンならば、非常にたまらない掛け声であると!
くだらない事を考えていたら、何時の間にかエリスとの待ち合わせ場所に着いたが、
エリスが上半身裸の厳ついモヒカンゴリマッチョ3人組に絡まれていた。
僕は咄嗟にエリスとモヒカンゴリマッチョ3人組の間に入った。
――ゴリマッチョの胸板、腹筋の圧が凄すぎてビビッてしまう……
ビビりながらも僕は、
「彼女は僕の連れだが何か用でもあるのか?」
「!?………………」
エリスは恐怖の為か無言になっていた。
モヒカンゴリマッチョA
「彼氏持ちかよ、早く言ってくれよ!」
モヒカンゴリマッチョB
「そうだぜ! 嬢ちゃん! 丁度いい兄ちゃんにも魅てもらおうぜ!」
モヒカンゴリマッチョC
「そうだな! 兄ちゃんと嬢ちゃんはそこに座って、俺たちの三位一体の『ストリーム・マッチョ・アタック』を魅て感想を聞かせてもらえたら助かる。それと助言もあったら何でも聞かせてくれ。頼んだぜ!」
「「………………ハイ」」
僕たちは言葉を失い、その場に座り、モヒカンゴリマッチョの三位一体、ストリーム・マッチョ・アタックを魅せられた! 周辺にいた人々も足を止め、魅入っていた……
ふと、レイニーの方を見ると真っ青な顔をして立ったまま泡をふいていた…… レイニーの事は、このまま放置しておこう。
モヒカンゴリマッチョの三位一体、ストリーム・マッチョ・アタックのパフォーマンスが終わり、観衆から称賛の声が高らかに上がっていた!
モヒカンゴリマッチョA
「兄ちゃんたち、ありがとうよ! こんなに好評だとは思わなかったぜ!」
モヒカンゴリマッチョB
「この感触なら今度の大会は俺たちの物だぜ!」
モヒカンゴリマッチョC
「今度の大会には、さらなる高みに到達した。ストリーム・マッチョ・アタックを魅せるからよ! 応援しに来てくれよ! アディオス!!」
そう言って、爽快にモヒカンゴリマッチョ3人組は去って行った……
――一見、エリスを助けたように見えるが、実際に僕は何もしていない…… (泣)
エリスに声を掛けようとしたが、怯えたような顔で青白くなって震えていた。
「エリス! 大丈夫かい? 顔色が悪いぞ、ちょっと休んだ方が良いんじゃないか?」
「――ええ、ちょっと休みたい…… 間近でゴリマッチョを見せられると気分が…… オェ」
それ以上、エリスは喋らなくなった。
「と、とりあえず、あそこの食堂で落ち着こう。歩けるかい?」
エリスは無言で頷き、僕はエリスの手を取り支えるように食堂に入り、店員さんに2人分の果汁水を注文し、椅子に座った。
エリスは少しは落ち着いたようだったが、まだ顔色は青白い……
頼んでいた果汁水を店員さんが運んでくれ、店員さんはエリスの様子に気付き声を掛けた。
「お客さん、大丈夫? 顔、白いわよ」
「なんとか大丈夫です。ありがとう」
エリスは小さな声で店員さんに答えた。
「それなら良いけど…… 無理しないでね」
そう言い残し店員さんは自分の持ち場に戻った。
「――エリス、だいじょ」
エリスは僕の言葉をかけ消して
「シュウ君! 細マッチョまでは許せるけど、ゴリマッチョは絶対にダメ! ダメ絶対!」
そう言い切ると
『ハァー ハァー』と息切れをしていた。
エリスの様子を見て、彼女はレイニーと同じく筋肉には厳しいことがわかった。
僕は漢の象徴であるゴリマッチョをそんなに嫌わなくてもと思っていると
「ゴリマッチョは絶対にダメ! ダメ絶対!」
エリスは同じことを2回言い放った。きっと大事な事なのだろう……
「ああ、わかったよ。気を付けるよ」
僕は何を『気を付ける』のか、わからないまま意味不明な返事をしてしまった。
エリスも僕につられたのか
「わかったなら良いわ。とにかく気を付けてね!」
よくわからない返答をした。エリスも動揺しているのだろう。
「ところで、エリス。あの3人組は何だったんだい?」
「あのね。シュウ君を待っていたら、急に『すまない。そこのお嬢さん! 今度、俺たちは大会に出るのだが、自分達では三位一体、ストリーム・マッチョ・アタックの評価が出来ないのだ! 頼む! 俺たちの三位一体、ストリーム・マッチョ・アタックを魅て、是非お嬢さんの率直な意見を聞きかせてくれ』って声を掛けられたの。私って、マッチョ好きに見えるのかしら……」
エリスはモヒカンゴリマッチョ3人組とのトラウマを思い出したのか、頭を抱え込んで塞ぎ込んでしまった……
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