第135話 第三王子は正義を知る!
オオー! なんて感動的なんだ!と、自画自賛する『シュウ』です。
ヒスト先生との話し合いの数日後、僕、エリス、マリー、バットが学院長に呼ばれた。ヒスト先生が学院長に話しを通してくれたみたいだ。
学院長室の前に着き、僕たちは大きく深呼吸をする。
『ス~ ハァ~』
「エリス、大丈夫かい?」
僕はエリスに声をかけた。
「ええ、大丈夫よ。ちょっと緊張しちゃって」
「エリスが緊張するなんて珍しいね?」
「相手は学院長だからね」
「そんなものなのかねぇ~」
「そういうものよ」
「二人とも遊んでないで中に入るわよ」
「「うん」」
マリーに怒られた……
『トン トン』
「二号生筆頭のマリーです。ただいま参りました」
「ああ、マリー君か。入りたまえ」
「ハイ、失礼します」
「「「失礼します」」」
学院長室に入ると、学院長がフロント ラット スプレッド、秘書の超兄貴二人は、学院長を挟んでバック ダブルバイセップス、ヒスト先生はアブドミナル アンド サイのポージングで僕たちを迎えてくれた。
――毎度の事ながら、学院長達の『お・も・て・な・し』には、あまりの素晴らしさに感心させられる…… もう感激の涙しか出てこない……
「四人ともそこに座りなさい」
学院長が僕たちにソファに座るように促した。よく見ると三人掛けのソファだった。
「「「ありがとうございます。では」」」
「僕の座る場所が……」
すると、学院長は
「シュウ殿には特別な椅子を準備させてもらった」
「特別な椅子ですか?」
辺りを見回してもどこにも椅子らしき物は無かった。 ――嫌な予感しかしない……
「うむ、目の前にちゃんと準備してある。よく心の眼で見るのだ。ほら、あるだろう空気椅子が!」
――!? 空気椅子だと?
「最近、シュウ殿の肉体に筋肉が足りない気がしてのぉ~ 老婆心ながらさせてもらいましたわ。ワッハハハハハ」
「……………………」
「どうかさせましたかな、シュウ殿?」
「――お気遣い……ありがとうございます……」
早速、僕は肉眼では見えぬ、心の眼のみで見える空気椅子に座った…… プルプル
「では、話しに入ろうかのぉ。ヒスト先生からある程度の話しは聞いたが、私とて教育者の端くれ、君たちの話しを聞いて、自分自身で真理を確かめたいのじゃ。それで良いかな?」
「ハイ。お願いします」
エリスは学院長に返事をした。エリスは、
「ここには学院長をはじめ、私とシュウ君を信じる仲間がいます。ここからはシュウ君とマリーしか知らない真実をお話しします……」
「「「………………………」」」
「遥か昔、ティーファンド王国という国がありました」
「ティーファンド王国?」
歴史好きのヒスト先生も聞いたことのない国名だったのだろうか、表情が歴史マニアの顔に変わった。
「ええ、ティーファンド王国です。当時の世界では魔法が当たり前のように使われた時代でした。そのティーファンド王国にはエリス・フォンテーヌという公爵令嬢がおりました。彼女はなぜか魔法が使えず、周りから無能、役立たず、貴族の面汚しと誹謗中傷を受けていたようです」
「エリス・フォンテーヌ!? 君と同じ名前じゃないか?」
さすが、ヒスト先生。気が付くのが早い!
「そう同じ名前です。私はその彼女の子孫にあたります。そして、彼女の生まれ変わりが私になります」
「「「――――――!?」」」
――エリスはバットにも話していなかった、エリス・フォンテーヌ様と転移たぬきのハルタン様の関係から話し始めた……
途中、『ティーファンド王国国王、大魔導師ロッシュウ・ルーン・アルパトス様』の生まれ変わりが僕だという話しになると学院長をはじめ、ヒスト先生、バット、そして、空気の存在でもある秘書の超兄貴の二人までもが僕を哀れみの目でガン見していた……
――お前ら失礼にも程があるぞ! これでも、僕は正真正銘ロッシュウ・ルーン・アルパトス様の生まれ変わりなんだぞ! なんか悲しいなぁ……
エリスはティーファンド王国の滅亡、魔女の悲劇と復讐。そして、後悔…… 魔境の森の魔女の村『ハルタン』の成り立ち、魔物達の報復。現在のハルタンの状況、魔道具について隠すことなくすべて話した…… ただ、エリスとマリーだけが知っている、僕の前々世と前世の記憶があることは話さなかった……
◇
『フゥ~』
学院長が大きなため息をついた……
「そこまで酷い有り様だったとは…… 人の業とは…… エリス嬢。良く話してくれた。感謝する」
「いえ、学院長の誠意に答えただけですから……」
「ありがとう。最後に君達の真実の言葉をハッキリと聞きたい。良いかな?」
「ハイ」
エリスはハッキリとした返事で学院長に還した。
「何回も君たちから聞いたが、これから、君たちは何を目指す! 私は君たちの命をかけた覚悟を知りたい!」
「私たちの覚悟……」
「そうだ! 君たちの覚悟だ。口先だけなら何でも言える。私が知りたいのは覚悟だ!」
「――私たちは過去に縛られません。前を向いて、ハルタンの人々、魔物さん達が自由で、すべての人と共存と融和の出来る世界を目指します!」
エリスの力強い覚悟の言葉だった……
「うん うん」
学院長は微笑みを浮かべながら満足したい顔をしていた。
「私で良ければ君たちに協力しよう」
「「「ありがとうございます! 学院長!!」」」
「最後に君たちに…… 特にシュウ殿に一言いたい。忘れるではないぞ」
「特に僕ですか?」
「そうだ! 魔法の力は強大だ。人を救う事も出来れば、人を不幸にもする」
「ハイ」
「力が正義じゃない! 正義が力だぁ!!」
――!? 昔のアニメ、タ○ガーマスクⅡ世のオープニングのセリフじゃネェーーか!!
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